リンパ系悪性腫瘍患者へのCOVID-19ワクチンの有効性に注意喚起

・モデルナ製またはファイザー製のワクチンを接種してから1年以内に抗CD20療法を受けた患者では、COVID-19の原因であるコロナウイルスに対する抗体ができていなかった。

・このような患者は、コロナウイルス感染に対する予防措置を継続すべきであると、研究著者らは述べている。

リンパ腫やその他のリンパ系がんの患者は、COVID-19に対するワクチン接種を受けていても、引き続きCOVID-19から身を守るための対策を講じるべきであると、ダナファーバーがん研究所の研究者らによる最新研究で報告された。この研究は、Blood Advances誌オンライン版に掲載されたもので、過去12カ月以内に抗CD20抗体療法を受けた患者において、ワクチン接種後にCOVID-19に対する感染防御抗体の産生が認められなかったことがわかった。

本研究の共同筆頭著者であるダナファーバーのJennifer Crombie医師は、「今回の結果は、COVID-19ワクチン接種を受けたリンパ系がん患者は、COVID-19に対する免疫があると考えるべきではないことを示唆しています」と述べている。「患者さんは、感染しないように警戒し続ける必要があります」。

この論文は、モデルナ製またはファイザー/BioNTech製のCOVID-19ワクチンの接種を予定していた、リンパ腫や慢性リンパ性白血病(CLL)などリンパ系悪性腫瘍の患者23人を対象に実施した研究の報告である。両ワクチンともメッセンジャーRNA(mRNA)を用いてコロナウイルスに対する免疫応答を引き起こし、COVID-19の重篤な症状から被接種者を守る。

この研究に参加した患者のうち17人(全体の74%)は、リンパ系悪性腫瘍に対する治療歴があった。そのうち15人は、B細胞がんの主要な治療法である、リツキシマブなどの抗CD20モノクローナル抗体療法を過去12カ月以内に受けていた。

参加者に対して、ワクチンの初回投与前、2回目投与時、および28日後に採血を行った。採取した血液により、COVID-19の原因であるコロナウイルスを標的とした抗体について分析した。この結果を、同じ間隔で採血した健常者の結果と比較した。

解析の結果、過去12カ月以内に抗CD20抗体療法を受けたことのある患者のなかで、2回目ワクチン接種後28日目までにCOVID-19コロナウイルスに対する抗体が産生されていた患者は一人もいなかった。

この結果は、リンパ系がん患者に対する注意を喚起するものであるが、多くの研究者にとっては驚くべきことではないとCrombie氏は述べている。抗CD20抗体の標的は、免疫系のB細胞であり、それはまさに、コロナウイルスやその他の感染性ウイルス等に対する抗体の産生に関与する細胞なのである。

今回の研究で、がんの治療を受けていない6人の患者(CLLの5人と辺縁帯リンパ腫の1人)では、ワクチン接種後28日目までに抗コロナウイルス抗体ができていた。しかし、重要なことに、これらの患者は、健常ボランティア参加者に比べて、ワクチン初回接種後の抗体数が有意に低かった。

また、抗CD20抗体以外の治療を受けていた患者の中には、ワクチン接種後に抗体応答が得られた人もいたこともわかった。その中には、2カ月前に化学療法1サイクルを終了したホジキンリンパ腫患者1人と、BTK阻害薬と呼ばれる薬剤で治療を受けたCLL患者3人が含まれていた。これらの結果から、ある種の治療を受けている患者ではCOVID-19に対する抗体ができる可能性が示唆されるが、今回の研究ではそのような患者の数が少なすぎるため、はっきりとした結論を出すことはできないとCrombie氏は述べている。

また、今回の研究では、このグループの患者の抗体産生のみに焦点を当てており、ワクチンが免疫応答の別の要素、すなわちT細胞を誘発するかどうかは調べていない、ともCrombie氏は述べる。この点については、リンパ系悪性腫瘍患者を追加した進行中の研究で分析する予定である。

細胞応答やその他の免疫応答に関する疑問が解決されるまでは、リンパ系悪性腫瘍の治療を受けた患者に対し、医師らはワクチンに何らかのCOVID-19予防効果が確認されることを期待してワクチンの接種を推奨し続ける、とCrombie氏は述べている。

翻訳担当者 青葉かお里

監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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