イブルチニブは治療困難な有毛細胞白血病の治療に有効

経口分子標的薬イブルチニブ(販売名:イムブルビカ)は、高リスクの有毛細胞白血病に対して有効な治療選択肢であることが、オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC-James)の研究者ら主導による新たな研究で示された。

有毛細胞白血病はB細胞性血液腫瘍の中でもまれな型であり、米国における年間診断者数は600~800人である。通常、本疾患に罹患した人々の大半は予後良好である一方、同疾患の変異型を有する一部の患者では、米国食品医薬品局(FDA)が承認する既存治療法に対する奏効が十分でない、または確立された治療法の副作用に耐えられないことがあると研究者らは指摘する。

「こうした一部の患者にとって、長期的ながん管理を達成できる治療法へのニーズは極めて深刻です」と、本臨床試験の試験責任医師であるKerry Rogers医師(OSUCCC-James血液内科医/研究者)は述べる。「われわれの研究で、イブルチニブは、再発または変異型の有毛細胞白血病の患者に対して安全かつ有効で忍容性も高い治療選択肢であることが示されました。この診断を受けた患者にとって非常に重要な発見です」。

今回の第2相臨床試験では、OSUCCC – Jamesが主導する多施設共同チームが高リスクの有毛細胞白血病患者44人を登録し、イブルチニブの有効性を検証した。44人中15人がオハイオ州コロンバスのOSUCCC – Jamesで治療を受けた。

試験参加者は全員、典型的な有毛細胞白血病に対する治療歴がある、または標準治療法である化学療法薬のクラドリビンおよびペントスタチンの有効性が低いとされる変異型有毛細胞白血病であるかのいずれかであった。

研究者らの知見は、6月24日発行の「Blood」誌に掲載された。

イブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬と呼ばれる薬剤に分類される経口治療薬である。BTK阻害薬は、体内の細胞過程に関与する特異的化学反応を阻害する。イブルチニブは、本研究においては試験用途であったが、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病および小リンパ性リンパ腫など、特定のがん治療薬としてFDAの承認を受けている。

「これら血液腫瘍の基本的な細胞生態は類似しているので、他の種類の血液腫瘍の治療に用いられている、このFDA承認薬が、従来の治療法が奏効しなかった少数の有毛細胞白血病患者の治療にも有効であるかを見きわめたいと考えました」とオハイオ州立大学医学部の助教であるRogers氏は語る。

「有毛細胞白血病は一般的に予後良好な疾患ですが、現在の治療法ではがん管理が不十分な患者さんが一部存在します」と同氏は続ける。「本薬剤は、もっともリスクが高い変異型有毛細胞白血病の患者にとって、有効で忍容性の高い新たな治療選択肢です。これは非常にエキサイティングな進歩であり、これらの患者の生存期間は数カ月から数年に、数年から数十年に延長する可能性があります」。

本研究は、米国国立がん研究所がん治療評価プログラム、および米国国立がん研究所/米国国立衛生研究所からの助成金を受けて、OSUCCC – James、NCI臨床試験センターKarmanos、メイヨ-クリニック、MD アンダーソンがんセンターにて実施された。本試験は2013年に開始され、現在、患者の登録は締め切られている。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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