研究ハイライト:急性骨髄性白血病、エクソソーム、肝細胞がん、C. difficile

急性骨髄性白血病(AML)、エクソソーム、肝細胞がん、Clostridioides difficile(クロストリディオイデス・ディフィシル、C. difficile)における新知見

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MDアンダーソンの専門家によって最近発表された基礎研究、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)、臨床がん研究の一端を紹介する。最新の研究成果として、急性骨髄性白血病(AML)に対する新たな多剤併用療法、AML寛解後の持続的な状態に対するより深い理解、エクソソームの普遍的バイオマーカーの発見、肝細胞がん(HCC)における腫瘍抑制遺伝子の同定、Clostridioides difficile(クロストリディオイデス・ディフィシル、C. difficile)感染症治療の新たな標的の特徴付けがある。

急性骨髄性白血病(AML)に対する多剤併用療法の使用

急性骨髄性白血病(AML)患者の大部分は初回治療に良好に反応するが、多くの患者はその後再発を経験する。再発すると予後は不良であるため、新たな治療法が求められている。Courtney DiNardo医師とHagop Kantarjian医師が主導した試験では、フルダラビン、シタラビン、顆粒球コロニー刺激因子およびイダルビシン(FLAG-IDA)をB-cell lymphoma-2(アポトーシス抑制タンパク質)阻害剤であるベネトクラクスと組み合わせた強化治療レジメンが、再発/難治性の急性骨髄性白血病患者および新たに診断された急性骨髄性白血病患者の両方で有効であることがわかった。試験群では、予想された治療可能な副作用として、化学療法誘発性血球減少症や好中球減少性感染がみられた。この多剤併用療法は深い寛解をもたらし、幹細胞移植の成功へと患者を橋渡しするのに役立った。詳細については、Journal of Clinical Oncology誌を参照。

急性骨髄性白血病(AML)寛解後クローン性造血の臨床転帰の調査

クローン性造血(CH)とは、通常はさまざまな種類の血液細胞に成長する幹細胞である造血幹細胞が、すべて同じ遺伝子変異を持ったときに生じる状態である。クローン性造血は、急性骨髄性白血病(AML)につながる可能性があり、患者が寛解した後も持続する可能性がある。Tomoyuki Tanaka医学博士、Kiyomi Morita医学博士、Koichi Takahashi医学博士が主導した試験では、164人のAMLを調査した結果、約半数の患者に寛解後クローン性造血が発生していたが、再発のリスク、非再発死亡率または心血管疾患のリスクにはほとんど影響がなかった。この結果は、急性骨髄性白血病寛解後のクローン性造血は治療に抵抗性であるものの、一般的には臨床転帰に悪影響を及ぼさないことを示唆する。詳細については、Blood誌を参照。

エクソソームの普遍的バイオマーカーの発見

エクソソームは、あらゆる細胞から放出されるウイルスサイズの膜結合型粒子で、細胞間コミュニケーションに重要な情報を伝えていると考えられている。エクソソームはがん細胞によって大量に産生され、DNA、RNAおよびタンパク質を含むため、がんのスクリーニング、診断、治療反応モニタリングに有用である可能性がある。Fernanda G. Kugeratski博士とRaghu Kalluri医学博士が主導した新たな試験で、エクソソームにはあらゆる細胞のエクソソームに共通する約1,200のタンパク質のコアプロテオーム(core proteome)が含まれることがわかった。また、シンテニン-1はすべてのエクソソームに最も多く含まれるタンパク質であり、エクソソームの有望な普遍的マーカーとなり得ることを発見した。このようなタンパク質マーカーがあれば、エクソソームを分離して研究し、その機能を明らかにすることや、エクソソームを臨床利用するための手法を開発することが容易になる。詳細については、Nature Cell Biology誌を参照。

肝細胞がん(HCC)治療のための免疫活性化腫瘍抑制因子

肝細胞がん(HCC)は、世界的にがんによる死亡の主要原因であり、この疾患を生物学的に完全に理解し、効果的な治療法を開発するためのさらなる研究が必要である。Shulin Li博士率いる研究チームは、WSX1が肝細胞がんにおいて「免疫」腫瘍抑制遺伝子として働き、異常な肝細胞や肝細胞がん細胞における腫瘍PD-L1発現を効果的に下方制御し、免疫監視を強化することを発見した。WSX1によるHCCにおけるPD-L1の抑制は、新たなタイプのAKTタンパク質を脱安定化することによって起こる。この結果は、がん免疫療法による肝細胞がん治療の新たな標的を明らかにした。詳細については、Nature Communications誌を参照。

Clostridioides difficile(クロストリディオイデス・ディフィシル、C. difficile)感染症治療の新たな標的の特徴付け

Clostridioides difficileC. difficile)は、米国における院内感染の主要原因の一つであり、より効果的な治療介入が必要とされている。最近発見されたCamA酵素は、C. difficileに特異的な酵素と考えられ、DNAメチル化を触媒し、胞子形成やバイオフィルム形成に不可欠であることから、有望な治療標的となっている。Jujun Zhou博士、John R. Horton博士、Xing Zhang博士、Xiaodong Cheng博士率いる研究チームは、詳細な酵素分析および構造解析を行い、CamAがDNAとどのように相互作用し、その役割を果たしているのかを解明した。DNAと結合したCamAの結晶構造は、タンパク質の活性を阻害する薬剤の開発に必要なロードマップを提供する。詳細については、Nature Communications誌を参照。

翻訳担当者 工藤章子

監修 北尾章人(腫瘍・血液内科/神戸大学大学院医学研究科)

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