ブリナツモマブと化学療法の併用でB細胞性急性リンパ芽球性白血病の生存率が向上
モノクローナル抗体であるブリナツモマブ(販売名:ブリンサイト)を併用した化学療法レジメンでの初回治療により、フィラデルフィア染色体陰性B細胞性ALL(Ph-negative B-ALL)として知られる高リスク急性リンパ芽球性白血病(ALL)と新たに診断された患者の生存率が向上し、微小残存病変(MRD)陰性率が高くなることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の試験で明らかになった。
試験結果は、バーチャル形式で開催された2020年米国血液学会年次総会で、白血病科の助教であるNicholas Short医師により発表された。試験は白血病科の教授であるElias Jabbour医師の主導によるものである。
「どの急性白血病でも完治させる最良のチャンスは、初回治療において最も効果的な治療を行うことである」とShort医師は語る。「試験でどの患者も完全寛解し、さらに患者の97%が微小残存病変陰性に至ったことがわれわれの大きな自信となっている」。
治療の選択肢を増やし、ALL患者の生活の質を向上させる
フィラデルフィア染色体陰性B細胞性ALL患者の標準治療は併用化学療法であるが、治療不成功率が高く合併症も発生する。現在のALLの治療法は寛解率が高く、最大約90%である。しかし、多くの患者が再発し、長期生存率も50%以下となっている。患者の寛解率と生存率を向上させることができる新しい治療法の選択肢を見つけることが重要である。
ブリナツモマブなどのモノクローナル抗体を用いた免疫療法は、体内の免疫系の変化を促し、腫瘍細胞が増殖して転移する能力を阻害する。ブリナツモマブには2つの要素があり、1つはT細胞上のCD3を標的とするものであり、もう1つは、B細胞性ALLのほとんどの症例で過剰発現するCD19を標的とするものである。再発または難治の場合でもブリナツモマブが全生存率の改善に有効であることがこれまでの臨床試験で示されており、また微小残存病変の治療にも効果があることが証明されている。
「生存率のデータは初期のものであるが、2年生存率は80%と有望である。患者の約3分の1が高リスクの特徴を伴うため、これは特に重要である」とJabbour医師は語る。「患者の化学療法の量と期間を減少できるという自信を持つことができ、この結果が、標準的な化学療法レジメンと比較して患者の長期生存と完治の増加につながることを期待している」。
患者の反応を評価し、新たな試験群を追加する
臨床試験には、フィラデルフィア染色体陰性B細胞性ALLと新たに診断された14歳から59歳までの患者38人が参加し、そのうち34人が本試験で評価を受けた。患者は、2サイクル以上の化学療法を受けておらず、パフォーマンスステータスが3以下、総ビリルビンが2mg/dl以下、クレアチニンが2mg/dl以下であることが必要であった。
試験参加者は白人が55%、ヒスパニック系が32%、黒人が5%、アジア系が3%、その他が5%であった。高リスクの特徴が少なくとも1つある患者は19人(56%)で、そのうちTP53変異があるのは10人(17%)、CRLF2陽性が6人(19%)、予後不良の核型が12人(32%)であった。
患者は、多分割シクロホスファミド、硫酸ビンクリスチン、塩酸ドキソルビシン、デキサメタゾン(hyper-CVAD)化学療法を2サイクルと、高用量メトトレキサートとシタラビンを2サイクル交互に投与された後、標準用量のブリナツモマブを4サイクル投与された。維持期は、メルカプトプリンを日に1回、ビンクリスチンを月に1回、メトトレキサート週に1回、プレドニゾンのパルスを月に1回(POMP)のサイクルを12カ月、それに加えてブリナツモマブの3サイクルから成る。
試験に参加した患者全員が少なくとも1つの有害事象を発現したが、それらはhyper-CVADレジメンにおいて予想されているものだった。患者4人がサイトカイン放出症候群を発症したが、コルチコステロイドとブリナツモマブの中断で消退した。
患者の31%にブリナツモマブに関連した神経学的事象が認められ、その中にはグレード2の痙攣が1人、グレード1の振戦が2人、グレード3の運動失調が1人、グレード2の脳症と失語症が1人含まれている。その他のすべての神経学的事象は容易に管理可能であり可逆的であったため、計画した治療の変更はなかった。
患者の13%が再発したが、ベースライン時に高リスクの特徴が認められなかった患者や2年以上経過した患者に再発は認められなかった。患者12人が同種造血幹細胞移植を受け、17人が寛解を維持している。
試験の次のステージでは、臨床試験に参加する次の40人の患者のレジメンにイノツズマブオゾガマイシンを組み入れる。イノツズマブオゾガマイシンは抗CD22抗体薬であり、Bリンパ芽球に多く発現するCD22に結合し、毒素をALL細胞に直接送り込む。これらの試験結果はより大規模な試験で確認する必要があるが、今回のデータは、ブリナツモマブがフィラデルフィア染色体陰性B細胞性ALL患者の治療反応を改善できることを示唆している。
「われわれの目標は、ブリナツモマブと追加のイノツズマブオゾガマイシンを併用してhyper-CVADを行い、さらに良い結果が得られるかどうかを確認することにある」とShort医師は語る。「これにより化学療法関連の毒性が減少し、微小残存病変を最小限に抑え、造血幹細胞移植への依存をさらに低下させ、患者の長期治療成績を向上させることができると信じている」とShort医師は語った。
この試験は米国国立がん研究所(P30 CA016672)、Amgen社およびPfizer社の支援によるものである。全共著者の一覧と開示はこちら。
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