白血病/リンパ腫にCD19 CAR-NK細胞療法が73%の奏効

MDアンダーソンで開発された細胞療法は、再発・難治性血液がんに対する第1/2a相臨床試験において、大きな毒性を示さなかった。

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの第1/2a相臨床試験の結果で、CD19を標的とする臍帯血由来キメラ抗原受容体(CAR)ナチュラルキラー(NK)細胞療法は、再発または難治性の非ホジキンリンパ腫(NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)患者の大部分に対し、重大な毒性は認められずに臨床効果が得られた。

試験の結果は本日New England Journal of Medicine誌に掲載された。試験に参加した11人の患者のうち、8人(73%)が治療に反応し、そのうちの7人は完全寛解を達成した。つまり、この7人は13.8カ月の追跡期間中央値時点で、原疾患の証拠が認められていない。寛解後療法は治療に反応した患者の5人に行われた。サイトカイン放出症候群または神経障害が発現した患者はいなかった。

CD19 CAR-NK細胞療法への反応は、投与後1カ月以内に明らかになり、投与1年後でもこれらの細胞が存続していることが確認された。

「この臨床試験の結果は希望を持たせる結果であり、必要な患者には潜在的な治療選択肢として同種異系臍帯血由来CAR-NK細胞を検証するさらなる臨床研究に着手するであろう」と、本試験の共同著者で、幹細胞移植および細胞療法の教授であるKaty Rezvani医学博士は述べた。

Rezvani博士は、“養子細胞治療(ACT)プラットフォーム”、“慢性リンパ性白血病ムーンショット”および“B細胞リンパ腫ムーンショット”の支援を受けてMDアンダーソンのCAR-NKプラットフォームの開発を主導した。なお、上述の支援はすべてMDアンダーソンの“ムーンショット計画”の一部で、これは科学的発見を患者の生命を救う有意義な臨床的進歩へと迅速に発展させるための共同事業である。

CAR-NK細胞は同種異系である。つまり、細胞は患者自身ではなく、血縁関係のない健康なドナーから採取される。したがって、CAR-NK細胞は事前に製造し、緊急時に使用できるように保管しておける可能性がある。一方で、現在市販されているCAR-T細胞は患者自身の遺伝子組み換えT細胞を使用しなければならず、製造過程で数週間を要してしまう。

MDアンダーソンでは、NK細胞は提供された臍帯血から分離され、がんの特異的標的を認識するために望ましいCARを発現させるために遺伝子組み換えを行う。CAR-NK細胞は、細胞の増殖と生存を強化するように設計されている免疫シグナル伝達分子である、IL-15で「装甲」されている。本試験で使用されたCD19 CAR-NK細胞はB細胞腫瘍を標的とするように設計された。

本試験では、11人の患者が臍帯血由来CD19 CAR-NK細胞を3つの用量レベルのいずれかで単回投与を受けた。5人の患者は慢性リンパ性白血病(CLL)で、6人の患者はNHLであった。全ての患者が前治療を受けており、最低3ライン、最大11ラインであった。最初に治療を受けた9人の患者は個々のヒト白血球抗原(HLA)タイプに応じて部分的に適合したCD19 CAR-NK細胞で治療を受けたが、最後の2人の患者にはHLA適合なしで治療を受けることがプロトコールで認められた。

参加者が経験した副作用は、主に細胞注入前の前処置化学療法に関連したものであり、1~2週間で解消されたと、Rezvani博士は述べた。副作用の治療のために集中治療室への入院が必要となる患者はいなかった。

「この治療の性質上、実際に外来で治療を行うことができた」と、Rezvani博士は述べ、「この治療をより広く使用できるように、武田薬品工業と協力し、大規模多施設臨床試験で治療の結果を構築することが楽しみだ」と、述べた。

MDアンダーソンの“CAR-NK細胞治療プラットフォーム”は2019年に武田薬品工業にライセンス供与された。ライセンス契約および研究契約の一環として、武田薬品工業は、CD19 CAR-NK細胞治療(TAK-007)およびB細胞成熟抗原(BCMA)標的CAR-NK細胞を含む4つのCAR-NKプログラムの独占的開発権および商業権を取得した。

ACTプラットフォーム、リンパ腫および骨髄腫部門およびMDアンダーソン治療発見部門の継続的な支援により、武田薬品工業およびMD アンダーソンは、2021年に極めて重要な臨床試験であるCD19 CAR-T細胞治療TAK007を開始するために協同している。MDアンダーソンは、この研究に対して利益相反の管理および監視計画を実施する。

MDアンダーソンのムーンショット計画に加え、この研究は国立衛生研究所(R01CA211044-01, P01CA148600-03, P50CA100632-156 and CA016672)により支援されている。

MDアンダーソンの共同著者は以下の通り:Enli Liu, M.D., David Marin, M.D., Pinaki Banerjee, Ph.D., Rafet Basar, M.D., Lucila Nassif Kerbauy, M.D., Bethany Overman, Mecit Kaplan, Vandana Nandivada, Indresh Kaur, Ph.D., Ana Nunez Cortes, M.D., May Daher, M.D., Chitra Hosing, M.D., Partow Kebriaei, M.D., Rohtesh Mehta, M.D., Yago Nieto, M.D., Ph.D., Richard Champlin, M.D., and Elizabeth Shpall, M.D., all of Stem Cell Transplantation & Cellular Therapy; Homer Macapinlac, M.D., of Nuclear Medicine; Philip Thompson, William Wierda, M.D., Ph.D., and Michael Keating, M.D., all of Leukemia; Peter Thall, Ph.D., of Biostatistics; Kai Cao, M.D., of Laboratory Medicine; Evan Cohen, Ph.D., of Hematopathology; and Sattva Neelapu, M.D., and Michael Wang, M.D., both of Lymphoma and Myeloma. 共同研究者の全リストとその開示情報は、論文内に記載されている。

翻訳担当者 沼田理

監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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