CC-486維持療法が急性骨髄性白血病患者の生存期間を延長

大規模な臨床試験によると、臨床試験薬CC-486は、血液がん急性骨髄性白血病(AML)患者の生存期間を延長する効果があることが示唆された。この試験薬はアザシチジン(販売名:ビダーザ、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社)と関連がある。

アザシチジンは皮下注射または静脈注入により医療機関で投与されるのに対して、CC-486は自宅で摂取できる経口錠剤である。アザシチジンは、数種の血液がん患者の治療に、単剤または他の薬剤と併用して使用されている。

新しい研究では、積極的な化学療法を受けた後に寛解した(白血病再発の徴候がない)AML患者の維持療法としてCC-486が評価された。

多くの成人AML患者は、初回治療後に寛解する。しかしほとんどの場合、初回治療後に追加の化学療法または地固め療法が行われたとしても、再発することが多い。初回治療後に再発するAMLは治療が難しく、多くの患者が数ヶ月以内に死に至る。

CC-486は、初回治療後の寛解期間と生存期間を延長する、今までになかった維持療法であると、オーストラリアのメルボルンにあるアルフレッド病院の試験の主任研究者Andrew Wei博士は述べている。この結果は2019年12月10日にフロリダ州オーランドで開催された米国血液学会(ASH)の年次総会で発表された。

「この画期的な臨床試験の肯定的な結果より、CC-486維持療法が新しい標準治療になることを願っている」とWei博士は記者会見で述べた。

全生存期間の延長は「重要かつ画期的だ」と、ペンシルベニア大学病院の血液がん専門医のSelina Lugar医師は述べた。Lugar医師は研究には関与していなかったが、「研究は、比較的耐容性の高い薬剤がAML維持療法になることを示した」と加えた。

しかし、Luger医師は、薬剤の最適な使用方法、副作用の管理、寛解状態の患者への投与期間について更なる情報が必要であると忠告し、「どんな患者層に最も効果があるのかを調べる必要があるだろう」と続けた。

効果的な維持療法の探求

AML患者の多くは初回治療後に寛解に至るが、一部の白血病細胞が残存し、最終的に増殖して再発を引き起こす可能性があると考えられている。維持療法の目標は、これらの残存する白血病細胞を撲滅することである。

維持療法は急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの他の種類の血液がんに効果的であるため、研究者らはAMLに対して効果的な維持療法を探してきた。

いくつかの研究から、AMLの再発を遅らせる維持療法がでてきているが、現在のところ全生存期間の改善が期待できる療法はまだない。

QUAZAR AML-001として知られる国際臨床試験に、55歳以上のAML患者約500人が登録された。この試験は、CC-486の製造元であるセルジーン社(現在 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の傘下)が資金提供した。全ての患者は、初回の化学療法により寛解した後4か月以内に登録された。大部分の患者(80%)は、何らかの地固め化学療法を受けた。全ての患者は、白血病細胞ゲノム特性に基づき、AML再発の中または高リスクグループに分類された。

登録時に、全ての患者が造血幹細胞移植を受けることができなかった。これは再発リスクが高い患者に推奨される標準治療であるが、一部の患者は困難な処置を受ける健康状態ではなかったか、ドナーを見つけることができかった可能性がある、と Luger医師は説明した。

患者は、CC-486またはプラセボのいずれかに無作為に割り当てられた。再発、または容認できない副作用が観察されるまで治療が行われた。患者は、造血幹細胞移植が適用可能と認められれば、治療を中止することもできたが、この研究は移植を予定しない患者を対象としていたので、治療の中止の可能性は患者が移植ドナーと予期せぬタイミングで一致した場合にのみ起こることくらいでしょう、と Luger医師は述べた。

全生存率の改善

試験の主要評価項目である全生存期間中央値は、プラセボ群よりもCC-486群の方が10ヶ月長かった(25カ月対15カ月)。  

また、CC-486は、AMLを再発せずに生存している期間(無再発生存期間)を約5カ月(10カ月対5カ月)延長した。現在、40人以上の患者が治療を継続している。

再発リスク、地固め化学療法サイクル数、完全寛解または不完全な完全寛解(CRi)に関わらず、生存率の改善が確認されたことは、「特筆すべき発見」であるとWei博士は述べた。CRi 患者は、一部の血球数が低く、通常は完全寛解の患者よりも予後が不良である。

だが、医師は効果を期待できる特定のAML患者層の有無を知りたがっているとLugar医師は述べ、より多くの研究が行われればデータも蓄積され、明らかになっていくだろうと考えている。

CC-486群で最も多くみられた副作用は、吐き気、嘔吐、下痢であった。一部の患者については、他の薬を併用することによって、これらの副作用が軽減される可能性があるとWei博士は指摘した。

CC-486群の患者の方に、白血球数減少(好中球減少症)や感染症などの重篤な副作用がみられた。研究者らによると、副作用のために治療を中止した患者はほとんどいなかったとのことだが、治療を中止したほとんどの患者には消化器系の副作用が確認された。治療に関連する死亡はなかった。

さらに、自己申告によるQOLの変化は、両群の患者間で類似していた。

アザシチジン代替療法としてのCC-486の評価

CC-486とアザシチジンは同じ化学物質に由来しているが、同等の治療法ではない、とLuger医師は強調した。各薬物が白血病細胞に異なる影響を与える可能性があると述べた。

薬物によって、体内でどのように吸収、分布、排除など処理されるか(薬物動態)が異なる。

AML維持療法としてのアザシチジンの小規模な研究で、全生存期間の改善が示されなかった理由の一部を、薬物動態の違いによって説明できるかもしれない、とWei博士は述べた。また、CC-486よりもアザシチジンの方が治療期間が短いということも関係があるかもしれないと付け加えた。患者にとってアザシチジン注入は経口薬より不便だからかもしれない、と説明した。

Luger医師は、アザシチジンは標準的な初回化学療法を受けることができない成人AMLの治療に使用され、再発するまで長期間治療を続けることが多いことに留意し「アザシチジンの静脈注入で寛解を達成する患者は経口薬に移行できるのかという疑問もあると思う」と述べた。

さらに、現在進行中のいくつかの臨床試験では、分子標的療法とアザシチジンの併用を評価しており、CC-486と分子標的薬の併用試験も行うことができるだろう、とWei博士は述べた。

この臨床試験の結果から、CC-486は「期待される、AMLの新しい併用療法の要となる薬となる可能性を秘めているのではないか」と続けた。

翻訳担当者 為石万里子

監修 佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)

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