再発/難治性のFLT3陽性白血病(AML)にギルテリチニブ
第3相ランダム化試験の結果
再発または難治性のFLT3変異陽性、急性骨髄性白血病(AML)患者において、経口の強力な選択的FLT3阻害剤であるギルテリチニブ[gilteritinib]による治療は、救援化学療法よりも奏効率が高く、生存期間も延長するという結果が得られた。主な毒性は骨髄抑制であった。軽度の肝傷害の徴候がみられ、今後の研究で注意深く観察する必要がある。本試験の結果は、ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンター(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)のAlexander E. Perl教授らによって、2019年10月31日のThe New England Journal of Medicine誌で発表された。
再発または難治性の急性骨髄性白血病(AML)患者は、標準的な化学療法では予後不良である。FLT3活性化変異は、AML患者の約30%でみられ、主に遺伝子内縦列重複変異(ITD)またはチロシンキナーゼドメイン変異(TKD)である。AML患者において、FLT3 ITD変異は、初発時と再発時でともに生存予後不良因子とされている。
開発中またはAMLの治療薬として承認されているいくつかのFLT3チロシンキナーゼ阻害剤は、キナーゼ選択性、効能、および臨床的活性が異なる。
ギルテリチニブは、FLT3変異サブタイプ(ITDおよびTKD)に対する活性とc-Kitに対する弱い活性を併せ持つ、高度選択的な新規経口FLT3阻害剤である。ギルテリチニブは、FLT3阻害剤の耐性に関与するチロシンキナーゼAXLも阻害する。
第1/2相試験では、ギルテリチニブの単独投与により、FLT3のリン酸化が持続的に阻害された。1日あたり少なくとも80mgの用量で、再発または難治性のFLT3変異陽性AML患者の41%が複合完全寛解(完全寛解+血小板または血球の回復が不完全な完全寛解)に至った。その後の研究では、1日あたり120mgの開始用量が推奨された。
この第3相試験では、再発または難治性のFLT3変異陽性AML患者を、ギルテリチニブまたは救援化学療法(*治療抵抗性または再発再燃時の治療。サルベージ化学療法)を受ける群に2:1の割合で無作為に割り当てた。2つの主要評価項目は、全生存期間および完全または部分的な血液学的回復を伴う完全寛解を示した患者の割合であった。副次評価項目には、無イベント生存期間と完全寛解を示した患者の割合が含まれた。
371人の適格患者のうち、247人がギルテリチニブ群に、124人が救援化学療法群にランダムに割り当てられた。
ギルテリチニブ群の全生存期間の中央値は、化学療法群よりも有意に延長し、9.3カ月対5.6カ月であった(ハザード比[HR] 0.64; p<0.001)。無イベント生存期間の中央値は、ギルテリチニブ群で2.8カ月、化学療法群で0.7カ月であった(HR 0.79)。完全または部分的な血液学的回復を伴う完全寛解を示した患者の割合は、ギルテリチニブ群で34.0%、化学療法群で15.3%であった(リスク差 18.6パーセントポイント)。完全寛解率は、それぞれ21.1%と10.5%であった(リスク差 10.6パーセントポイント)。
治療期間について補正した解析では、グレード3以上の有害事象および重篤な有害事象は、化学療法群よりもギルテリチニブ群で発生する頻度が低かった。ギルテリチニブ群でとくに頻度が高かったグレード3以上の有害事象は、発熱性好中球減少症(45.9%)、貧血(40.7%)、血小板減少症(22.8%)であった。
ギルテリチニブの中止につながる薬物関連の有害事象は、27人の患者(11.0%)で発生した。とくに頻度が高かった有害事象は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ値上昇(1.6%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇(1.2%)、および肺炎(1.2%)であった。
著者らは、再発または難治性のFLT3変異陽性AML患者ににおいて、ギルテリチニブの投与により、救援化学療法よりも生存期間が有意に延長し、寛解患者の割合が高くなると結論付けた。
本試験は、Astellas Pharma社より資金提供を受けた。
参考文献:Perl AE, Martinelli G, Cortes JE, et al. Gilteritinib or Chemotherapy for Relapsed or Refractory FLT3-Mutated AML. N Engl J Med 2019; 381:1728-1740.
DOI: 10.1056/NEJMoa1902688
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