FDAが微小残存病変を有する前駆B細胞ALLにブリナツモマブを適応拡大
米国食品医薬品局(FDA)は、寛解したがなおも微小残存病変(MRD)を有する前駆B細胞急性リンパ性白血病(ALL)成人患者および小児患者の治療を対象としてblinatumomab[ブリナツモマブ](商品名:Blincyto)を迅速承認した。MRDは、顕微鏡で観察可能な水準を下回る数の白血病細胞が残存する状態を指す。初回治療後に寛解を達成した前駆B細胞ALL患者では、MRDの存在は再発危険度の上昇を意味する。
「これは、残存病変(MRD)陽性ALL患者を対象として初めてFDAが承認した治療薬です」と語ったのはFDAのOncology Center of Excellence室長およびFDA医薬品評価研究センター血液学・腫瘍製品室室長代理を務めるRichard Pazdur医師である。「MRDを有する患者は再発の可能性が高いため、ごく少量の残存白血病細胞も除去する治療選択肢をもつことは、この白血病の寛解状態をより長期間維持するために役立つ可能性があります。ブリナツモマブ投与によってMRDを減らしていくことの重要性が理解されていくことを期待しています。MRDを有する患者に対してブリナツモマブがどのように寄与するかを評価する目的で、試験は現在も進行中です」と述べた。
前駆B細胞ALLは急速に進行する血液のがんであり、骨髄内に未熟な白血球(未熟なBリンパ球)が過剰産生される疾患である。国立がん研究所の推計によると、今年1年で米国では約5,960人がALLと診断され、約1,470人が本疾患により死亡するとされている。
ブリナツモマブは白血病細胞上のCD19タンパク質および免疫系細胞上のCD3タンパク質に付着することより作用を発現する。免疫細胞は、白血病細胞付近に誘導されることにより白血病細胞を十分に攻撃できるようになる。2014年12月、FDAは、フィラデルフィア染色体(Ph)陰性で再発性または難治性陽性の前駆B細胞ALLの治療を対象として、迅速承認制度のもとでBlincytoを初めて承認した。2017年7月に当該疾患を適応として本承認されたが、その際に適応が拡大され、Ph陽性ALL患者も対象とされた。
MRD陽性ALLにおけるブリナツモマブの有効性は、初回または2回目の完全寛解状態にあり、骨髄細胞1,000個のうち1個以上に残存病変MRD)が検出された86人を対象とした単群臨床試験で示された。有効性の根拠となったのは、患者が生存し寛解状態にあった期間(血液学的無再発生存期間)に加え、 ブリナツモマブによる治療を1サイクル行った後に10,000個のうち少なくとも1個の白血病細胞が検出可能な方法で測定した場合のMRD陰性の達成度であった。合計70人がMRD陰性であった。その半数超の患者が22.3カ月以上生存し寛解状態にあった。
残存病変(MRD)陽性前駆B細胞ALLの治療において、ブリナツモマブの副作用は他の薬剤と同様で、頻度の高い副作用は、感染症(細菌性、病原は不明)、発熱、頭痛、インフュージョンリアクション、血球数の低下(好中球減少症、貧血)、発熱性好中球減少症(好中球減少および発熱)ならびに血小板数の低値(血小板減少症)などである。
ブリナツモマブには枠組み警告が設けられており、一部の臨床試験参加者において初回投与開始時に血圧低下および呼吸困難(サイトカイン放出症候群)に関する問題が生じており、短期の思考障害(脳障害)やその他神経系副作用も生じていることを患者および医療従事者に警告している。ブリナツモマブ投与に伴う重大な危険性には感染症、運転能力および機械操作能力への影響、膵臓の炎症(膵炎)、ならびに調製ミスおよび投与ミスなどがあり、調製および投与に関する指示に厳密に従うべきである。小児患者では、ベンジルアルコール保存剤により重篤な有害反応が生じる危険性があるため、体重が22 kg未満の患者には保存剤無添加の生理食塩水で調製した薬剤を用いるべきである。
今回のブリナツモマブの新たな適応は迅速承認制度で承認された。この制度では、FDAは、治療がなく必要とされ、ある薬剤が患者に対する臨床的有用性が見込まれる特定の作用を有することが示されている深刻な状況に対して薬剤の承認が可能である。ブリナツモマブ投与によるMRD不検出の達成によってALL患者の生存または無病生存が改善することを確認するためには、さらなる無作為対照試験が求められる。
FDAは優先審査に関する本申請を承認し、本薬剤はオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定も受けている。希少疾病用医薬品指定とは、希少疾患の治療を目的とした医薬品の研究開発を支援し奨励するための優遇措置が得られる制度である。
FDAはAmgen社に対し、Blincytoを承認した。
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