多くの高齢血液腫瘍患者で認知機能低下の傾向
白血病や多発性骨髄腫などの血液関連がんの高齢患者の多くは、認知機能低下の徴候を示す傾向があり、その低下は生存期間に影響を与える可能性があると、ダナファーバーがん研究所およびブリガム&ウィメンズ病院(BWH)の研究者による新たな試験が示している。
本日、JAMA Oncology誌電子版で発表されたこの知見は、特定の型の認知障害の検査が高齢血液がん患者に有用であり、そのような障害があることが判明した患者には、患者個々のニーズに合わせた、腫瘍専門医の説明および治療指導が有益であることを示唆すると、著者らは語る。
「人口の高齢化に伴い、がん患者の認知障害がますます多くなる傾向があります。 というのも、がんは加齢に大いに関わりがある疾患だからです。記憶や思考の軽度な変化は日々の活動に影響を与えないかもしれませんが、ストレスがかかっている時には、それらの変化が表面化し、患者の自己ケア能力に影響を与える可能性があります。私たちは、高齢血液がん患者における特定の種類の認知障害の発生頻度と、認知障害が患者の生存期間に影響を与えるかどうかを知りたいと考えました」と、本試験の筆頭著者である、ダナファーバーおよびBWHのTammy Hshieh医師(公衆衛生学修士)は語る。
この研究では、血液やリンパ系のがんである白血病、リンパ腫、または多発性骨髄腫の治療のために、ダナファーバーがん研究所で受診した75歳以上の患者360人を検査した。患者の身体的虚弱を評価し、作業記憶および遂行機能における認知障害の標準スクリーニング検査を行った。作業記憶とは、自分が今いる状況を理解し、言語を理解するという即時記憶に関わる短期記憶の一部である。 遂行機能には、注意を払う、計画を立てる、指示を覚える、複数の仕事をうまく処理する能力がある。
この検査から、患者の35%が遂行機能不全の可能性があり、17%が作業記憶障害の可能性があることがわかった。 これらの領域のいずれかに障害を呈した患者は、他の患者よりも身体的に虚弱であるか、「脆弱」(虚弱になりやすい)である可能性が高い。
研究者らが、認知低下が患者の生存期間に影響を与えるかどうかを調べたところ、結果は認知低下が起きた領域によって異なった。作業記憶障害のある患者の生存期間中央値は10.9カ月であったのに対し、同領域に障害のない患者では12.9カ月であったことから、18% の生存期間短縮であった。がんの集中治療を受けている患者では、作業記憶障害がある患者および遂行機能不全である患者は、障害のない患者と比べて生存期間中央値が短かった。
軽度の認知障害は医師、患者自身、または近親者から見て必ずしも明白でない場合があるとHshiehは指摘する。そのような障害がある人々は、身体的に良好であるように見え、社会的品位やたしなみを保っているためにそれほど問題なく日常生活をこなすことが可能なこともある。しかし、化学療法などのストレスを受けたり、がんや検査などのせいで体調がすぐれなかったりする場合、患者の認知障害はより明らかになることがある。認知機能低下、特に作業記憶の機能低下と生存期間の短縮との関連性は、高齢患者のそのような認知低下を検査し、それに応じて治療計画を調整する必要性があることを裏付ける。
「作業記憶障害がある患者は、投薬スケジュールを覚えたり、複数の指示に順番通りに従ったりするのが困難かもしれません。そのような患者は、脱水状態になる危険性や、治療の副作用が出た際に何をすべきか分からなくなる危険性があります」と、Hshieh氏は述べる。
「そのような患者のニーズを認識し、予測するカウンセリングは大きな役割を担っています。患者が問題について主治医に電話で尋ねる時期、診察を受けるべき時期について患者を教育することが重要です。臨床医にとっては、障害がある患者や介護者に時間をかけて治療選択肢を説明して、患者が自分の価値や優先順位に沿った選択が確実にできるようにすることも重要です」と、同氏は続ける。
本試験の統括著者は、ダナファーバーがん研究所のGregory Abel医師(公衆衛生学修士)である。 共著者は同研究所のWooram Jung(理学修士)、Richard Stone医師、Robert Soiffer医師、 BWHのJiaying Chen(公衆衛生学修士)、 ダナファーバーがん研究所、BWH、退役軍人局ボストン・ヘルスケア・システムのJane Driver医師(公衆衛生学修士)、 退役軍人局ボストン・ヘルスケア・システムのLauraGrande医学博士である。
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