分子標的薬SL-401への腫瘍細胞の耐性をアザシチジンが無効化する可能性

ダナファーバーがん研究所の研究者は、ある種の血液腫瘍細胞が分子標的治療法による細胞死を免れる仕組みを発見し、腫瘍細胞をだましてその攻撃を受けやすくする分子標的薬を開発した。
アトランタで開催された第59回米国血液学会(ASH)年次総会・展示会で研究者は、分子標的薬SL-401に対する腫瘍細胞の耐性を、薬剤アザシチジン(5-アザシチジン)により元に戻すことができるという実験室研究結果を発表した。ヒト急性骨髄性白血病(AML)および芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)細胞で実施したこの研究をきっかけに、AMLまたは骨髄異形成症候群(MDS)患者でSL-401とアザシチジンとを併用する第1相臨床試験が着手された。

SL-401は、インターロイキン3(IL-3)と呼ばれる細胞タンパク質および短縮ジフテリア毒素(ジフテリアを発症する細菌により分泌されるタンパク質)からなる「複合体」治療である。SL-401は腫瘍細胞のIL-3タンパク質受容体に付着して、ジフテリア毒素に感染させて腫瘍細胞を殺傷する。
「SL-401がCD123タンパク質 (IL-3受容体)をもつ腫瘍細胞に対し有効であり得ることはわかっていますが、なぜ特定の細胞がSL-401に反応する、または反応しないか明らかでありませんでした」と、試験の統括著者であり、ダナファーバーのBPDCNセンター長であるAndrew Lane医学博士は述べた。「われわれは、なぜ患者または細胞が薬剤暴露後、薬剤に対して時に耐性をもつようになるかわかりませんでした」。
一連の実験室試験でLane博士のチームは、SL-401に対する腫瘍細胞の感受性がジフタミドの合成経路(細胞がアミノ酸の一種ジフタミドを合成する一連のステップ)に直接関係することを発見した。この経路にはジフテリア毒素の標的を生み出すという不測の作用がある。ジフタミドを合成する能力を失った細胞は、もはや毒素の餌食とはならない。

Lane博士のチームは、DNAメチル化として知られているプロセスにより、DPH1と呼ばれる遺伝子の発現が停止する場合、上記経路が遮断されることを明らかにした。 研究者がメチル化経路を元に戻す薬剤アザシチジンをこのような細胞に投与すると、DPH1は再活性化し、細胞がSL-401に対して再び感受性になった。

「それは薬剤耐性の興味ある機作で、腫瘍でみられることはあまりありません」と、Lane博士は述べた。

AMLまたはMDS患者でSL-401とアザシチジンとを併用する第1相臨床試験が、ダナファーバー、MDアンダーソンがんセンターおよびシティ・オブ・ホープで夏の間に開始された。

「われわれが実験室から2年未満で患者にもたらすことができたことは注目に値します」とLane博士は述べた。「それは頻繁に起こることではありません」。
試験の筆頭著者はダナファーバーのJason Stephanskyである。共著者はダナファーバーのKatsuhiro Togami医学博士およびJoan Montero博士、Eli and Edythe L. Broad Institute of MIT and HarvardのMahmoud Ghandi博士および Cory Johannessen博士、Stemline Therapeutics社(ニューヨーク州ニューヨーク)のRoss Lindsay博士およびChristopher Brooks博士、ならびにブリガム&ウィメンズ病院のJon C. Aster医学博士である。

翻訳担当者 木下秀文

監修 北尾章人(腫瘍・血液内科/神戸大学大学院医学研究科)

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