急性骨髄性白血病(AML)に対する分子標的薬併用は高い奏効率を示す

【米国血液学会(ASH)2017】

再発/難治性の急性骨髄性白血病(AML)に対する分子標的薬の国際共同非盲検第Ib相試験の初期の評価によると 、最大50%の患者において完全寛解が示されたと、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが述べた。

患者は60歳以上で、venetoclax[ベネトクラックス](商品名:Venclexta)とcobimetinib[コビメチニブ]もしくはidasanutlin[イダサヌツリン]との併用による治療を受けた。本臨床試験において、過去に血液疾患の治療歴があり、細胞傷害性療法に不適格な患者の経過観察を行った。

併用療法が最小限の副作用で安全に実施できることを証明した進行中の用量漸増試験の予備的結果は12月8日~12日にアトランタで開催された米国血液学会(ASH)年次総会および展示会で11日に発表された。本試験は、白血病科のMarina Konopleva医学博士およびMichael Andreeff医学博士の両教授、さらに同科の准教授Naval Daver医師が主導した。

「本試験は、急性骨髄性白血病(AML)患者においてベネトクラックスと他経口薬との新しい併用療法を評価する最初の臨床試験です。再発/難治性AML患者の効果的な治療選択肢は限られているため、重要な試験です」と、Konopleva氏は述べた。

がん細胞を治療抵抗性にするBCL-2(B-cell lymphoma protein)を阻害するベネトクラックスは、以前に慢性リンパ性白血病(CLL)の治療薬としてFDA承認された。イダサヌツリンはがん抑制遺伝子p53に作用するMDM2と呼ばれるタンパク質を標的とする薬剤である。一方コビメチニブはがん細胞内でMEKとして知られるタンパク質を標的とし、BRAF変異陽性の進行メラノーマ(悪性黒色腫)の治療に対してFDAに承認されている薬剤である 。

Andreeff氏とKonopleva氏は本臨床試験につながる前臨床試験も主導し、結果が12月11日付のCancer Cell誌電子版に掲載された。前臨床研究において、in vivo活性を初めて証明し、また、BCL-2阻害剤が、p53の調節に関わるMDM2、およびBCL-2(双方とも細胞死に関連)に作用する新しい分子機構を示した。

前臨床試験データは、ベネトクラックス+コビメチニブ、もしくはベネトクラックス+イダサヌツリンが相乗的である可能性も示した。MEKおよびMDM2阻害は、BCL-2ファミリーのMCL-1タンパク質をダウンレギュレーションさせ、急性骨髄性白血病においてBCL-2阻害に対する主な抵抗性機構を解除すると示されている。

「p53が活性化すると、MCL-1分解を促進してBCL-2阻害に対する抵抗性を解除し、細胞応答を変化させて細胞死に対する反応に影響を与えることをわれわれは示しました。これらの知見は、AMLに対する併用療法についての本臨床試験の発展の基盤となり、私のグループ内の15年にわたる個々の研究をまとめたものです」と、Andreeff氏は述べた。

Daver医師によれば、高齢者の急性骨髄性白血病(AML)再発症例において、各併用薬剤の最大耐用量を決定するために、本臨床試験で用量漸増法を使用しているという。高齢患者の急性骨髄性白血病再発時の治療は開発が待たれる領域の1つである。

「ベネトクラックスとイダサヌツリンの併用により、再発したAML患者で最高50%という最良効果が見られ、これは前臨床試験データと一致するものでした。しかし、この結果は、より大きな患者集団での確認が必要となるでしょう」と同医師は述べた。

MDアンダーソンの前臨床試験参加者は次のとおりである:
Ronquing Peng, Ph.D., Vivian Ruvolo, Hong Mu, M.D., Ph.D. and Konopleva, all of Leukemia. Other organizations included AbbVie, Inc., North Chicago, Ill.; Roche Pharmaceutical Research & Early Development, Basel, Switzerland; Dana-Farber Cancer Institute and Harvard Medical School, Boston.

本臨床試験の他参加施設は次のとおりである:
the University of Colorado, Denver; Princess Margaret Cancer Centre, Toronto; Hȏpital Saint-Louis, Paris; University of Alberta, Edmonton, Canada; Paoli-Calmette Cancer Center, Marseille, France; University of Bologna, Italy; University of Southern California, Los Angeles; Weill Cornell Medical College, New York; Dana-Farber Cancer Institute, Boston; Bordeaux Haute-Leveque University Hospital, Pessac, France; Genentech, Inc., South San Francisco, Calif.; and Roche Pharmaceutical Research & Early Development, New York.

非臨床研究の試験は米国国立衛生研究所の資金提供を受けた(CA55164およびCA016672)。第Ib相臨床試験はGenentech/Roche社から資金提供を受けた。

翻訳担当者 坂下 美保子

監修 佐々木 裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

白血病に関連する記事

高リスク慢性リンパ性白血病に3剤併用AVO療法は有望の画像

高リスク慢性リンパ性白血病に3剤併用AVO療法は有望

ダナファーバーがん研究所の研究者らは、特にTP53異常を持つ高リスク慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対する治療における有望な進歩を発表した。これは、高リスクCLLにおける期間限定の3...
米国血液学会ASH2024:3剤併用療法は複数の白血病で高い奏効率を示す他の画像

米国血液学会ASH2024:3剤併用療法は複数の白血病で高い奏効率を示す他

3件の臨床試験で測定可能残存病変の陰性化および全奏効率に関する良好な結果が得られた抄録:216、219、1011
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導した3件...
米FDAが、KMT2A転座を有する再発/難治性の急性白血病にレブメニブを承認の画像

米FDAが、KMT2A転座を有する再発/難治性の急性白血病にレブメニブを承認

有効性は、KMT2A転座を有する再発または難治性(R/R)急性白血病の成人および小児患者104人(生後30日以上)を対象とした非盲検多施設共同試験(SNDX-5613-0700、NCT0406...
米FDAが新たに診断された慢性骨髄性白血病(CML)にアシミニブを迅速承認の画像

米FDAが新たに診断された慢性骨髄性白血病(CML)にアシミニブを迅速承認

2024年10月29日、米国食品医薬品局(FDA)は、慢性期(CP)のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML)と新たに診断された成人患者を対象に、アシミニブ(販売名...