FDAが特定の予後不良の急性骨髄性白血病に初めてVyxeosを承認

米国食品医薬品局(FDA)は本日、2種類の成人急性骨髄性白血病(AML)の治療にVyxeos(商品名)を承認した。対象となるのは新たに診断された治療関連AMLt-AML)または骨髄異形成に関連した変化を有するAMLAML-MRC)である。Vyxeosは化学療法薬であるダウノルビシンとシタラビンの固定用量配合剤である。

「これは特定の高リスクAML患者を対象とする治療薬の初めての承認となります」と、FDA医薬品評価研究センター(CDER)の血液・腫瘍製品室長代理で、同局のOncology Center of Excellence室長でもあるRichard Pazdur医師は述べた。「Vyxeosはよく使用される2種類の化学療法薬を配合して単一の製剤としたものであり、一部の患者においては2種類の化学療法を別々に受けるよりも生存期間を延長する可能性があります」。

AMLは骨髄において形成され急速に進行するがんであり、血流中の白血球細胞数の増加を引き起こす。米国国立衛生研究所の米国国立がん研究所(NCI)によると、2017年には約21,380人がAMLと診断され、約10,590人が同疾患により死亡すると推定されている。治療関連AMLT-AML)は、がんの治療を受けた全患者の約810%において、治療終了後平均5年以内に、化学療法または放射線治療の合併症として発現する。骨髄異形成に関連した変化を有するAMLAML-MRC)は、特定の血液疾患の既往があり、がん細胞内に重要な変異があるという特徴を持つ。t-AML患者またはAML-MRC患者の平均余命は非常に短い。

新たに診断されたt-AML患者またはAML-MRC患者309人を、Vyxeos投与群またはダウノルビシンとシタラビンを別々に投与する群に無作為に割付けて、Vyxeosの安全性および有効性を検討した。本試験の評価項目は、試験開始日からの生存期間(全生存期間)であった。Vyxeos投与群の患者は、ダウノルビシンとシタラビンを別々に投与する群の患者に対し、全生存期間が長かった(全生存期間中央値9.56カ月に対し5.95カ月)。

Vyxeosに多くみられる副作用としては、出血性イベント(出血)、白血球数低値を伴う発熱(発熱性好中球減少症)、発疹、組織腫脹(浮腫)、悪心、粘膜の炎症(粘膜炎)、下痢、便秘、筋骨格痛、疲労、腹痛、息切れ(呼吸困難)、頭痛、咳嗽、食欲減退、心拍リズムの異常(不整脈)、肺感染(肺炎)、血液感染(菌血症)、悪寒、睡眠障害および嘔吐が挙げられる。

ダウノルビシン、シタラビンまたは製剤のいずれかの成分に対する重篤な過敏症歴のある患者に対して、Vyxeosを使用してはならない。Vyxeosを投与する患者の過敏症反応および心機能の低下をモニタリングすること。Vyxeosは、重篤または致命的な出血性イベントとの関連性が認められている。ダウノルビシンは点滴静注ラインから皮膚および皮下組織中に薬物が漏出した場合(血管外漏出)、重度の組織損傷(壊死)を引き起こす。胎児あるいは新生児に害を及ぼす恐れがあるため、妊娠中の女性または授乳中の女性にVyxeosを投与してはならない。

Vyxeosの処方情報の枠組み警告欄には、Vyxeosを、他のダウノルビシンまたはシタラビン含有製品と交換しないよう記載される。

FDAVyxeosの承認申請に対して、優先審査および画期的治療薬指定を付与した。Vyxeosは、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定も受けている。希少疾病用医薬品指定とは、希少疾患の治療を目的とした医薬品の研究開発を支援し奨励するための優遇措置が得られる制度である。

FDAJazz Pharmaceuticals社に対しVyxeosの製造販売を承認した。

翻訳担当者 川北みゆき

監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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