輸血を提供できないことが血液がん患者のホスピス利用を阻む

ホスピスにおける輸血提供は現在の医療費償還制度では通常適用されず、これが可能となれば、根治不能の血液がん患者に対する終末期ケアとしてホスピスを紹介できると医師らが考えていることが、新たな研究で明らかとなった。この研究結果は、白血病、リンパ腫、その他の血液腫瘍患者のホスピス利用が、固形がん患者と比べて少ない理由を解明する一助となる。

ダナ・ファーバーがん研究所の研究員らがCancer誌で報告した研究結果によると、血液腫瘍専門医らの多くは、血液がん患者にとってホスピスケアが重要であることに強く賛同する一方、本研究に参加した医師のおよそ半数が、在宅ホスピスは患者のニーズに十分に応えていないと感じていた。多くの血液がん患者は、症状をコントロールする上で赤血球または血小板の輸血を必要としているが、輸血の提供に対応している緩和ケア外来はほとんどない。

本研究の第一著者であるOreofe Odejide医師、公衆衛生学修士は、ダナファーバーがん研究所の人口科学部門のメンバーで、悪性リンパ腫の専門医である。Odejide医師は「メディケア(高齢者を対象とした医療保険制度)ではホスピスケアに対する1日当たりの償還額が通常一律に固定されているが、血液や血小板の輸血にかかる費用はこの範囲内で賄うことができない。また、外来で輸血が可能であってもホスピスケアはほとんど在宅で行われるため、この場合輸血治療は難しくなる」と述べた。

質の高い終末期ケアとは、患者の快適度や生活の質に焦点を当て、ホスピスを適切なタイミングで利用することとされている。ホスピスを利用する患者では、病院や集中治療室への入院率が低く、晩年では侵襲的治療を受ける人は少ない。過去の研究結果からは、血液がん患者のホスピス利用率はすべてのがん患者中もっとも低く、ホスピスの利用時期は死亡する3日以内と、固形がん患者よりも遅い場合が多い。

Odejide氏とともに、統括著者として本研究に携わったダナファーバーのGregory A. Abel医師、公衆衛生学修士らは、ホスピス利用における格差を明らかにする取り組みの一環として、血液腫瘍専門医らの調査を実施した。

回答した349人の医師中、68.1%は血液がん患者にとってホスピスケアが有用であることに強く同意した。血液がん以外に固形がんの患者をより多く診ている医師ほど、ホスピスの価値についてより多く強く同意する傾向にあった。しかし、46%の医師は、在宅ホスピスは患者のニーズに対して不十分であると回答した。回答した医師の半数以上は、赤血球もしくは血小板の輸血が可能であれば、もっと多くの患者をホスピスに紹介すると回答した。また、26.8%の医師は、ホスピス開始後も患者が定期的に来院することが出来れば、もっと多くの患者をホスピスに紹介することに同意もしくは強く同意するとした。

著者たちは、「血液腫瘍医がホスピスの価値を認めているにも関わらず紹介率が相対的に低いのは、現在のホスピスモデルは血液がん患者の実際のニーズに合致していないためである」ことを示した。また「固形がん患者と比較した場合、ホスピスの重要な焦点である痛みが血液がん患者には少ない、という事実が、ホスピスサービスは関係がないという見方を助長している」とも述べた。

今回の調査結果に基づき、著者らは、輸血など血液がん患者特有のニーズに対応したホスピスサービスがさらに受けられるようになれば、ホスピスへの患者の紹介は増えると考えられ、これによりホスピスの医療費政策の変更する必要があるだろうと提言した。また、輸血によりホスピスの費用は増えるが、同時に「ホスピスの利用が増えると、終末期での入院や有効性のない集中的な治療が減り、医療費が削減されると考えられる」と述べた。

Abel氏はダナファーバーがん研究所の白血病センターおよび人口科学部門に所属している。
本研究の実施にあたって、米国国立緩和ケアリサーチセンターおよび米国国立がん研究所から助成を受けた(R25CA092203)。

翻訳担当者 ステップアップ!チーム

監修 小杉和博(緩和ケア内科/川崎市井田病院)

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