白血病(AML)とMDSに対するデシタビンの臨床反応と変異の消失

デシタビン療法に対する臨床反応を決定する分子的要因

高リスクの細胞遺伝学的異常やTP53変異、またはその両方を有する急性骨髄性白血病(AML)および骨髄異形成症候群(MDS)患者に対してdecitabine[デシタビン]を投与する単一施設試験を行ったところ、良好な臨床反応と不完全だが確実な変異 の消失が認められた。反応は持続的ではなかったが、全生存(OS)率は、中リスクの細胞遺伝学的プロフィールを有しデシタビン療法を受けたAML患者と同程度だった。この報告はThe New England Journal of Medicine誌に掲載された。

この試験の背景には、AML患者とMDS患者のデシタビンに対する臨床反応の分子レベルの決定因子が解明されていないということがある。そこで著者らは、成人患者84人について、体細胞変異を特定し、その変異とデシタビンに対する臨床反応との関連性を調べた。

デシタビンは、月1回のサイクルで、1日あたり20 mg/m2(体表面積)を10日間連続投与した。

試験責任医師らは、67人について拡張エクソーム配列決定または遺伝子パネル配列決定を行い、54人について変異の消失パターンを評価するために複数の時点で連続的に配列決定を行った。

さらに、異なるプロトコルでデシタビンを投与した32人を拡大コホートとした。

その結果、116人のうち、53人(46%)に骨髄芽球 の消失(芽球5%未満)が認められた。奏効率は、高リスクの細胞遺伝学的プロファイルを有する患者の方が中リスクまたは低リスク患者よりも高く(67% vs. 34%、p<0.001)、TP53変異を有する患者の方がTP53変異無しの患者よりも高かった(100% vs. 41%、p<0.001)。

これまで行われてきた試験では、高リスクの細胞遺伝学的プロファイルとTP53変異を有する患者が従来の化学療法を受けても転帰が不良だという結果が一貫して示されてきた。しかしこの試験では、 どちらのリスク因子に関しても、全生存率が中リスクの細胞遺伝学的プロファイルをもつ患者よりも低くなることはなかった。TP53変異をもつAMLおよびMDS患者は標準的な細胞障害性化学療法後の奏効率が非常に低いが、TP53変異をもつ患者全員がデシタビンの10日間連続投与療法に対して反応を示した。

著者らは、デシタビン療法は、TP53変異があり標準的な細胞障害性化学療法による導入療法に対して抵抗性を示す患者に臨床的寛解をもたらす重要な治療法だと考えられると結論した。このような治療法なら、一部の患者を同種幹細胞移植に橋渡しすることも可能かもしれない。

この試験は、米国国立がん研究所のthe Specialized Program of Research Excellence in AMLおよびthe Genomics of AML Program Projectから助成金を受けた。患者3人はノバルティス社が支援する試験 において治療を受けた。

参考文献

Welch JS, Petti AA, Miller CA, et al. TP53 and Decitabine in Acute Myeloid Leukemia and Myelodysplastic Syndromes. N Engl J Med 2016; 375:2023-2036.
(日本語アブストラクト)

翻訳担当者 粟木 瑞穂

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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