急性リンパ芽急性白血病ダウン症患児も他の患児と同様に治療可能

2016年12月5日、第58回アメリカ血液学会で発表された調査結果によると、化学療法により毒性リスクが上昇するにもかかわらず、急性リンパ芽球性白血病(ALL)のダウン症患児の再発率および治療関連死亡率は、ダナファーバーがん研究所ALLコンソーシアムプロトコルで治療された他の患児と比較して高くはないことがわかった。

「ダウン症患児は、抗がん剤の減量や修正をすることなく、ダウン症ではない患児と同様の効果を認めました」と抄録の統括著者であり、ダナファーバー・ボストン小児がん・血液疾患センターの血液腫瘍科センター診療部長Lewis B. Silverman医師は述べた。 「ダウン症患児のALLは、他の患児のものとは生物学的に異なる特徴を持つ疾患ですが、彼らはリスクグループ別に計算された抗がん剤の全量投与に耐えることができ、順調に経過しました」。

ダウン症患児はALLを発症するリスクが高いが、このような患者に対する最適な治療法は確立されていない。 Silverman医師は、これまでの研究でダウン症患児は治療に伴う合併症のリスクが高いことは明らかであると指摘する。再発率や治療関連死亡率が高く、そのため長期治癒率が低下することを報告するものもある。 ダナファーバープロトコルでは、ダウン症患児に対しても治療法を変更することはないが、副作用を最小限に抑えるために用量調整を行う別のプロトコルもあるとSilverman医師は続けた。

「この分野では、ダウン症のない患児と対比して、ダウン症患児の予後がどのようであるかが議論されてきました」とSilverman医師は語った。 「私たちが用いる特定の治療法では、他施設が報告しているような問題に突き当たることはありません」。

研究者らは、米国、カナダ、プエルトリコの11機関で2000年から2011年の間にALLと診断され、ダナファーバーコンソーシアムプロトコルで治療を受けた小児および青年1286人を対象に研究した。これらの患者のうち38人(3%)がダウン症を有していた。以下のような所見が認められた。

・治療開始後最初の1カ月で完全寛解に至った割合に差はなかった(ダウン症患児群100%対非ダウン症患児群 95.2%)。

・ダウン症患者には治療関連の死亡はなかった。

・観察期間の中央値は6.2年であり、5年間の無事象生存率(90.7%対83.7%)、無病生存率(90.7%対87.4%)、全生存率(91.8 %対91.4%)について、統計学的に有意な差は認められなかった。

・ダウン症の患者は、治療に関連する粘膜炎(口内痛)(52%対12%)、血栓症または出血(18.4%対8.2%)、痙攣(15.3%対4.7%)、感染症(55.3%対41.3%)などをより起こしやすい。

他の研究で報告されているように、ダウン症患者では他の患者よりもTALL(ダウン症患者群0%対非ダウン症患者群11.7%)および高二倍体の染色体異常(8.8%対 25.1%)の発生が少ないようである。 TALLは ALLの高リスク型と考えられているものであり、高二倍体はより良好な予後と関連しているとSilverman医師は述べた。

「考慮するべき毒性は、感染症と粘膜炎です」とSilverman医師は述べた。 「私たちは、これらの合併症を予防するための支持療法と共に、ダウン症のALL患児も他のALL患児と同じように治療できると推奨しています」。

カナダ、オンタリオ州ハミルトンのマックマスター小児病院のUma H. Athale医師は、抄録の筆頭著者である。

翻訳担当者 白鳥理枝

監修 野﨑健司(血液腫瘍科/国立がん研究センター中央病院)

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