臍帯血移植、適合ドナーがいない白血病患者の転帰改善

「代替の」ドナーソースと成人非血縁ドナーからの従来の造血幹細胞移植とを比較する研究

本日、New England Journal of Medicine誌で発表された研究によると、臍帯血移植は、従来のドナー検索では適合ドナーがいない白血病患者にとって、代替幹細胞ソース以上のメリットがある可能性があることが示された。フレッドハッチンソンがん研究センターの研究者によって実施された本研究により、移植後の再発リスクが高い患者において、臍帯血移植を受けた患者は、白血病、および、それに関連する骨髄疾患、骨髄異形成症候群に対して転帰がより良好のようであることが判明した。

これらの患者は、幹細胞移植予定患者のおよそ3分の1を占めるが、彼らは「微小残存病変 」が陽性である。これは、移植前に行う化学療法でがんを完全な寛解状態にすることができず、ごく少量のがん細胞が残存する状態のことである。移植時に血液中に検出可能な量のがん細胞がある患者は、3年後も生存している割合がわずか3分の1である。これに対して、そうした残存病変がない患者の場合は4分の3近くが生存している。

「微小残存病変を有したまま移植を行う患者は 良くない結果になります」と、フレッドハッチンソンがん研究センターの移植研究員でNEJM誌掲載論文の筆頭著者であるFilippo Milano医師は語った。しかし、今回の研究では、臍帯血移植を受けた患者は、非血縁成人ドナーから幹細胞の移植を受けた患者と比較して「再発率が低く、転帰が良好でした」とMilano氏は語った。

血液中に検出可能な量のがん細胞を有する患者は、臍帯血を幹細胞ソースとする移植を選択することで従来の移植方法を上回るメリットが得られる可能性があるとMilano氏は語った。微小残存病変がない残りの3分の2の患者の場合は、臍帯血移植と従来の移植では転帰はほぼ同等であった。

本研究は、臍帯血または非血縁成人ドナーから幹細胞移植を受けた患者に関する結果ついて述べている。筆者らは、研究センターの臍帯血プログラムが発足した2006年から2014年までに幹細胞移植を受けた患者582人の転帰をレビューした。これらの患者のうち、140人が臍帯血移植を受けた。

フレッドハッチンソンがん研究センターは、臨床ケアパートナーSeattle Cancer Care Alliance(SCCA:シアトルがんケア同盟)の創設組織の1つである。同研究センターの医師らは臍帯血移植研究の最先端をいく。 Colleen Delaney医師は、2006年にフレッドハッチンソンの臍帯血プログラムを開始し、また本研究の上級著者でもある。彼女は、臍帯血移植は一般集団に対して成人ドナー移植を上回る大きなメリットが一つあることが知られていると話す。すなわち「誰にでも臍帯血ドナーがいる」ことだ。

臍帯の中の幹細胞は成人の幹細胞よりも未熟であるため、患者のヒト白血球型抗原(HLA)に厳格に「一致」している必要はない。HLA遺伝子は個人に固有の遺伝的背景の一部であり、その遺伝的背景によってドナーの幹細胞を拒絶する可能性が決まる。医師は通常、患者とそのドナーの間でHLA遺伝子 型が必要な10個中すべてで一致することを求めるが、血縁または非血縁ドナーでそのような完璧な一致が見つからない場合、10個のうち8個か9個の一致で移植を実施することが多い。そのような「不完全一致」ドナーからの移植は、まったく移植をしないよりは良いかもしれないが、Milano氏とDelaney氏の研究結果が示すように、臍帯血移植は一部の患者にとって最良の選択肢である可能性がある。

「この研究は、臍帯血を代替ドナーと呼ぶべきではないという主張を裏付けるものです。なぜなら患者の転帰は従来のドナーと同等だからです。本論文は、高リスク白血病にかかり、移植後の再発リスクが高い患者にとって、臍帯血ドナーによる移植は最良の選択肢である可能性があることを示しています」とDelaney氏は語った。

翻訳担当者 有田香名美

監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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