FDAが造血幹細胞移植後の肝中心静脈閉塞症にdefibrotideを承認
速報
米国食品医薬品局(FDA)は本日、造血幹細胞移植(HSCT)(血液または骨髄からの幹細胞の移植)後に、腎臓または肺の障害を伴う肝中心静脈閉塞症(VOD)を発症した成人と小児患者の治療薬として、defibrotide sodium[デフィブロタイド・ナトリウム](商品名:Defitelio)を承認した。
本薬剤は、まれで、かつ生命を脅かす肝疾患である重症肝中心静脈閉塞症の治療に対し、FDAが初めて承認した治療薬である。
造血幹細胞移植は、ある種の血液がんあるいは骨髄がんの治療のために一部の患者に行われる処置である。造血幹細胞移植の直前に、患者は化学療法を受ける。肝中心静脈閉塞症は化学療法と造血幹細胞移植を受けた患者に発現することがある。肝中心静脈閉塞症は肝臓の静脈が一部閉塞する疾患で、腫脹と肝臓内の血流量減少の原因となり、肝障害に至る可能性がある。最も重症の肝中心静脈閉塞症では、患者は腎不全や肺不全を発症する可能性もある。造血幹細胞移植後に重症肝中心静脈閉塞症を発症する患者は2%未満だが、重症肝中心静脈閉塞症が発症した患者の80%は死に至る。
「defibrotide sodiumの承認は、化学療法と造血幹細胞移植を受けた患者にみられる、まれだが多くの場合致命的となるこの合併症を治療するという、移植コミュニティの重要な要求を満たす」とFDA医薬品評価研究センターの血液学・腫瘍製品室長であるRichard Pazdur医師は述べた。
Defibrotide sodiumの有効性は、3つの臨床試験(2つの前向き臨床試験と1つの拡大アクセス試験)で治療した528人の患者で調査された。3つの臨床試験に登録された患者は、造血幹細胞移植後に肝臓または腎臓の障害を伴う肝中心静脈閉塞症と診断された。臨床試験では、造血幹細胞移植後100日間生存した患者の割合(全生存率)を評価した。3つの臨床試験では、defibrotide sodiumで治療した患者の38~45%が造血幹細胞移植後100日間生存した。重症肝中心静脈閉塞症で支持療法のみ、またはdefibrotide sodium以外の治療介入を受けた患者の造血幹細胞移植後100日間の全生存率の期待値は、公表された報告と患者レベル・データの分析に基づけば21~31%となる。
Defibrotide sodiumにより最もよくみられる副作用としては、異常低血圧(低血圧症)、下痢、嘔吐、悪心、および鼻血(鼻出血)がある。Defibrotide sodiumにより重篤となる可能性があると同定された副作用としては、出血とアレルギー反応がある。Defibrotide sodiumは出血性合併症の患者、あるいは抗凝固剤、または血栓形成能を減少させるその他の薬剤を服用している患者には使用すべきではない。
FDAはdefibrotide sodiumを優先審査対象に指定した。これは、重篤または生命を脅かす疾患のある患者に利益をもたらす可能性を踏まえて、ある種の医薬品の開発、審査を容易かつ迅速に行う制度である。Defibrotide sodiumは、希少疾病用医薬品にも指定された。これは、税控除やユーザーフィー(訳者注:新薬審査に必要であるとして当の製薬企業に拠出が求められる財源)免除、市場優先権等、まれな疾患の治療を目的とした医薬品の開発を支援、奨励するための優遇措置が得られる制度である。
Defibrotide sodiumは、カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くJazz Pharmaceuticals社が販売している。
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