ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤acalabrutinibは慢性リンパ性白血病治療において安全かつ有効

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新規薬剤acalabrutinib(ACP-196)は、慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、忍容性が良好であり、長期にわたり高い寛解率をもたらすという臨床試験結果がNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

CLLは異型リンパ球の産生を特徴とする疾患である。リンパ球は分化した免疫細胞であり、主にB細胞およびT細胞の2種類で存在する。B細胞とT細胞は骨髄で産生され、それぞれが特有の機能によって感染から身を守る役割を果たす。CLLの症例の大半は正常よりもはるかに寿命が長い成熟B細胞を有する。B細胞は血液、骨髄、リンパ節および脾臓に蓄積するため、それらの部位で過剰となり、血液および免疫細胞の形成と機能が抑制される。

さらに、腫瘍性のリンパ球自体は正常に機能しないため、身体の感染に対する抵抗力がいっそう低下する。この疾患は徐々に悪化する傾向がある。

acalabrutinibは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。BTKは、CLL細胞表面から細胞核内遺伝子へ増殖シグナルを伝達して、がん細胞の生存と増殖を可能にするタンパク質の鎖の一部であるが、本剤はこのBTKに恒久的に結合することにより作用する。BTK阻害剤はこの増殖シグナルの流れを遮断し、CLL細胞を死滅させる。CLL治療薬として最初に承認されたBTK阻害剤ibrutinib[イブルチニブ](商品名:Imbruvica)とは異なり、acalabrutinibはより選択的にBTK伝達経路を阻害し、既知の副作用をいくらか回避する可能性があることを今回の試験結果は示唆する。

第1相、第2相と連続して行われた臨床試験に参加したCLL患者について、異なる投与量ごとにacalabrutinibを評価し、治療開始から平均14.3カ月間追跡した。研究者らの全体報告によると、治療の寛解率は95%であった。本剤をヒトに初めて使用した今回の臨床試験に参加した患者61人のうち、治療を終了できたのは87%であった。リヒター症候群(CLLが急速増殖型のリンパ腫に変化する珍しい病態)に移行した患者はおらず、がんが進行したのは1人のみであった。

acalabrutinibは、CLL治療において有望視されており、革新的な治療薬である。ここ数年間で、新規医薬品数と治療選択肢が増えたことはCLL患者の利益になっており、CLL治療全体に対する希望を与えている。

参考文献:
Reference: Byrd J, Harrington B, O’Brien S, et al. Acalabrutinib (ACP-196) in Relapsed Chronic Lymphocytic Leukemia. New England Journal of Medicine. December 7, 2015DOI: 10.1056/NEJMoa1509981.


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翻訳担当者 岐部幸子

監修 北尾章人(血液・腫瘍内科/神戸大学大学院医学研究科)

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