幹細胞移植前の急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群患者への骨髄破壊的前処置

キャンサーコンサルタンツ

造血幹細胞移植(SCT)は、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)患者にとって治癒が見込める標準的な治療である。従来、高用量の骨髄破壊的前処置だけが用いられたのは骨髄の悪性細胞を根絶するのに必要と考えられていたためである。近年、副作用を減らすとともに、副作用を起こしやすい高齢のMDS、AML患者に対処するために、造血幹細胞移植医は骨髄非破壊的前処置を行うことが多くなってきた。

最近の研究では、骨髄非破壊的前処置よりも強力な治療の方が患者に有益であることが示されている。それらの報告ではAML、MDS患者に前処置レジメンとして骨髄破壊的前処置もしくは骨髄非破壊的前処置を実施し、18カ月後の生存率、再発率、移植関連死亡率、移植片対宿主病(GVHD)発症率、QOLを比較している。研究者らは試験に患者365人の登録を予定していたが、骨髄破壊的前処置が明らかに有益であることが独立データ安全評価委員会で認められたため、その半数の患者を登録した段階で試験は早期終了となった。

予想通り、骨髄非破壊的前処置は骨髄破壊的前処置よりも移植後100日以内の急性GVHD発症率(31.6%対44.7%)、移植関連死亡率(4.4%対15.8%)が低かった。しかし、全体で見ると、移植から18カ月後 の生存率は骨髄非破壊的前処置を受けた患者でわずか67.7%であったのに対して、骨髄破壊的前処置を受けた患者では77.4%であった。再発率は骨髄非破壊的前処置を受けた患者で48.3%であったのに対して、骨髄破壊的前処置を受けた患者では13.5%であった。

本研究の著者らは、骨髄破壊的前処置は依然として、MDS、AML患者が造血幹細胞移植を受ける前の治療選択肢であると結論づけた。骨髄非破壊的前処置の有効性を改善し、骨髄破壊的前処置の副作用を減少させるための研究努力が続けられている。患者の年齢、状態などさまざまな要因が治療法の選択に影響を及ぼすため、造血幹細胞移植を検討している患者は、主治医と両移植治療法の便益と危険性を慎重に話し合う必要がある。

参考文献:
Scott B, Pasquini M, Logan B, et al. “Results of a phase III randomized, multi-center study of allogeneic stem cell transplantation after high versus reduced intensity conditioning in patients with myelodysplastic syndrome (MDS) or acute myeloid leukemia (AML): Blood and marrow transplant clinical trials network (BMT CTN) 0901”. American Society of Hematology. ASH 2015; Abstract LBA-8.


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翻訳担当者 松木宏樹

監修 佐々木裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

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