MidostaurinがFLT3遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病患者の生存を改善

キャンサーコンサルタンツ

分子標的薬ミドスタウリン[midostaurin]が、Fms様チロシンキナーゼ3(FMS-like tyrosine kinase 3:FLT3)遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)患者の生存を改善することが示された。この結果は、フロリダ州オーランドで開催された第57回米国血液学会(ASH:the American Society of Hematology)年次総会ASH 2015のプレナリーセッションで発表された。

急性骨髄性白血病 (AML) は血液細胞を起源とするがんの一種である。AMLは白血病の中でもかなり強治療を要することが多いタイプの血液がんである。

研究者らは近年、AMLという疾患において、白血病細胞がもつ遺伝子変異の種類によって予後が異なるということを明らかにしてきた。例えば、AML患者の約30~35%で起こるFLT3遺伝子変異は予後不良と関連している。

ミドスタウリンは、FLT3遺伝子変異を特異的に標的にする薬剤である。FLT3遺伝子変異で起こる白血病細胞の生存や増殖に関連したメカニズムを阻止することで抗腫瘍効果を発揮する。

研究者らは先ごろ、ミドスタウリンの評価を目的として、FLT3遺伝子変異を有するAML患者を対象にした第3相臨床試験を実施した。対象は18~60歳の患者717人だった。患者は標準療法(ダウノルビシンとシタラビン投与の化学療法)+プラセボ(不活性な代替薬)、標準療法+ミドスタウリンのいずれかの投与を受けた。

追跡調査期間の中央値は57カ月だった。

・生存期間中央値は、標準療法+ミドスタウリンを投与した患者で74.7カ月、標準療法+プラセボ投与の患者で25.6カ月だった。
・5年後の生存率は、標準療法+ミドスタウリンを投与した患者で50.9%、標準療法+プラセボを受けた患者で43.9%だった。

ミドスタウリンは、約30年に渡ってAML治療に使用されてきた標準的な化学療法を上回る生存利益を示した初の薬剤である。

AML患者のさらなる予後の改善を願って、FLT3遺伝子変異を特異的ターゲットとする第2世代薬剤についての臨床試験が進められている。

参考文献:
Stone R, Mandrekar S, Sanford B, et al. The Multi-Kinase Inhibitor Midostaurin (M) Prolongs Survival Compared with Placebo (P) in Combination with Daunorubicin (D)/Cytarabine (C) Induction (ind), High-Dose C Consolidation (consol), and As Maintenance (maint) Therapy in Newly Diagnosed Acute Myeloid Leukemia (AML) Patients (pts) Age 18-60 with FLT3 Mutations (muts): An International Prospective Randomized (rand) P-Controlled Double-Blind Trial (CALGB 10603/RATIFY [Alliance]. Proceedings from the 2015 annual meeting of the American Society of Hematology. Abstract #6.


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翻訳担当者 廣瀬千代加

監修 佐々木裕哉(血液内科、血液病理/久留米大学病院)

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