リスクの高い一部の急性骨髄性白血病(AML)患者の生存を改善する初の分子標的薬Midostaurin
ダナファーバー癌研究所
オーランドで開催された第57回米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会のプレナリーセッションにおいて、ダナファーバー癌研究所のRichard Stone医学博士が、Alliance for Clinical Trials in Oncology groupを代表して、標準化学療法へのミドスタウリン[Midostaurin]の追加が、標的治療としては初めて、遺伝子的観点から定義されたリスクの高い急性骨髄性白血病(AML)患者の一部で生存期間を改善したことを発表した。
このAML患者集団は、がん細胞にFLT-3遺伝子変異を有する18~60歳(若年成人(young adults)とされる)の患者群であった。この遺伝子変異は悪性の細胞増殖を引き起こすため、患者の予後は不良であり再発の可能性が高くなる。化学療法による治療は寛解達成を目標としており、寛解となった患者は幹細胞移植を受ける可能性がある。
臨床試験では,717人の患者が1年間の維持療法を含む、標準化学療法+ミドスタウリン(マルチキナ-ゼ阻害剤)または標準化学療法+プラセボに無作為に割付けられた。追跡期間の中央値は57カ月であり、ミドスタウリン群ではプラセボ群と比較して死亡のリスクが23%低く、5年生存率はミドスタウリン群で50.9%、プラセボ群で43.9%であった。
「標準化学療法にミドスタウリンを追加した患者では、プラセボを追加した患者より生存率が高く、生存期間が長いことがわかり、嬉しく思います」と、CALGB 10603/RATIFY試験結果を発表したダナファーバー癌研究所、Adult Acute Leukemia Program のディレクターであるRichard M. Stone医学博士は述べた。
2015年には約20,830人が急性骨髄性白血病(AML)と新規に診断され、10,460人が死亡すると予測されている。小児AML患者は高い成功率で治療可能である。しかし、多くの症例は成人であり、治療が困難である。患者の30%にみられるFLT-3変異を有する場合は特に治療が困難である。
「本試験はAML患者、その中でも特に、標的治療薬であるミドスタウリンを標準化学療法へ追加することで恩恵を得られる可能性が示されたFLT-3変異を有するAML患者に個別化医療の理論を適用する第一歩となります」とStone氏は述べた。
FLT-3遺伝子変異をもたないがん患者は、ミドスタウリンなどのFLT-3阻害剤による治療対象として適さないことが以前の研究から示唆された。しかしStone氏は、当該患者およびさらに高齢のAML患者でもミドスタウリンを試す価値があるだろうと述べた。60歳より高齢の患者は、本試験の化学療法により負担がかかり過ぎるため、試験には含まれなかった。
本試験により、化学療法+ミドスタウリン投与群においてさらなる毒性はみられないことが明らかになった。「プラセボ群と比較して、ミドスタウリン群で副作用は増加しませんでした。これは、化学療法の副作用により、ミドスタウリンに起因する可能性のあるなんらかの副作用が隠れてしまったからかもしれません」とStone氏は説明した。
本研究は米国国立がん研究所(NCI)のCancer Therapy Evaluation ProgramおよびNovartis社から資金提供を受けた。
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