ベムラフェニブは、他の治療後に増悪したヘアリー細胞白血病(有毛細胞白血病)に有効である可能性

キャンサーコンサルタンツ

薬剤ベムラフェニブ(ゼルボラフ)は、他の治療後に増悪したヘアリー細胞白血病(HCL)の治療において有効である可能性がある。これらの知見は、New England Journal of Medicine誌で発表された。

HCLは、免疫細胞腫瘍化した白血病の中でも希少なタイプである。HCLでは、骨髄がリンパ球(白血球の一種)を過剰に生成する。本疾患は、顕微鏡で観察すると白血病細胞に「毛がはえている」ように見えることから、ヘアリー細胞白血病(有毛細胞白血病)と呼ばれる。増殖が遅いことが多い白血病で、通常は化学療法で治療される。

BRAFと呼ばれる遺伝子における変異は、HCLをはじめとする数種の悪性腫瘍の増殖に関与している。BRAF変異を標的とした薬剤(BRAF阻害剤)は、HCLの増殖を阻止または抑制することが可能である。

研究者らはこのほど、経口BRAF阻害剤ベムラフェニブの安全性および有効性を評価する試験を実施した。特に、プリンアナログ製剤(がん細胞の分裂や増殖を阻止する)の治療後に再発したか、プリンアナログ製剤で治療が奏効しなかったHCL患者に対して本剤の試験を行った。

本試験は、2つの臨床試験で構成された。1つはイタリア(患者28人)、もう1つは米国(患者26人)で行われた。両試験ではベムラフェニブ960 mgを1日2回投与した。イタリアの患者は18週間、米国の患者は16週間投与を受けた。

イタリアの試験では、投与開始から8週間後、患者の96%でベムラフェニブの奏効(部分奏効あるいは完全奏効)を認めた。米国の試験では、12週間後に患者の100%で奏効を認めた。完全奏効率(白血病細胞が検出されなくなる割合)はイタリアの患者で35%、米国の患者で42%であった。

23カ月時点の追跡調査によれば、イタリアの試験で完全奏効を示した患者の無再発生存期間中央値は19カ月、部分奏効患者の無再発生存期間中央値は6カ月であった。米国の試験では、完全奏効患者の無治療生存期間中央値が25カ月、部分奏効患者の無治療生存期間中央値は18カ月であった。

治療完了から1年後、米国の試験に参加した患者の73%が無増悪で生存していた。患者の全生存率は1年経過時で91%であった。副作用に関して、両試験とも重度のものは認められなかった。患者の中には、関節痛および関節炎によりベムラフェニブの投与量を減量した人もいた。一部の患者(50人中7人)では皮下に腫瘍が発現したが、簡単な処置で除去された。

本試験の良好な生存転帰に基づき、研究者らは、過去の治療後に再発したか、治療が奏効しなかったHCL患者に対してベムラフェニブが有効な治療選択肢になるとみられると結論づけた。さらに、副作用は対処可能な範囲のものであるとみられる。

参考文献:
Tiacci E, Park JH, De Carolis L, et al. Targeting Mutant BRAF in Relapsed or Refractory Hairy-Cell Leukemia. New England Journal of Medicine [early online publication]. September 9, 2015.


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翻訳担当者 太田奈津美

監修 佐々木 裕哉 (血液内科・血液病理/久留米大学病院)

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