ブリナツモマブはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に有効である可能性

キャンサーコンサルタンツ

フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)急性リンパ性白血病(ALL)の成人患者の治療に、免疫療法薬ブリナツモマブ[blinatumomab](商品名Blincyto)が有効であるようだと、バイオ企業のアムジェン社が発表した。同社は最近のプレスリリースにて第2相臨床試験の結果を発表した。

急性リンパ性白血病は、急速に増殖する白血球のがんである。成人の再発性・難治性ALLは予後不良であり、寛解に達する患者はわずか35~40%、全生存期間の中央値は4~6カ月である。再発性ALLには現在、幹細胞移植と化学療法が標準治療である。40%ものALL成人患者にフィラデルフィア染色体陽性といわれる染色体異常がみられる。

ブリナツモマブは、がん細胞に発現するCD19と、ほとんどすべてのT細胞に発現しているCD3の両方に結合できる革新的な治療薬でCD19/CD3-bispecific T cell engaging (BiTE)と呼ばれる。ブリナツモマブを投与すると、CD19を発現しているB細胞系腫瘍に結合し、それと同時に、通常のT細胞がもっているCD3にも結合することでT細胞を「動員」し、「溶解」という機序で腫瘍細胞を破壊する。

第2相臨床試験では、再発性・難治性のPh+ALL患者の治療におけるブリナツモマブの有効性と安全性を評価している。本研究ではブリナツモマブを数サイクル投与し、患者の治療完遂後30日の時点で安全性の追跡調査を実施した。研究者らは治療が奏効した期間を測定するため、3カ月ごと最長18カ月にわたり、患者の追跡調査を継続した。

多くの患者の病状が寛解に向かっており、ブリナツモマブの有効性を示す結果が得られている。さらに、想定外の副作用はみられなかった。

「これらの好成績は励みになるものであり、再発性・難治性のフィラデルフィア染色体陽性前駆B細胞性ALL患者の有望な治療選択肢として、ブリナツモマブを支持するものである」とアムジェン社の研究開発副部長のSean E. Harper氏(MD)はいう。ブリナツモマブがALL患者の予後において引き続き好成績を生む見込みがあると、同氏は付け加えた。

<*原文に間違いがあったため一部改訂>

参考文献:
Amgen Announces Positive BLINCYTO® (blinatumomab) Phase 2 Study Results In Patients With Relapsed/Refractory Philadelphia Chromosome-Positive B-Cell Precursor Acute Lymphoblastic Leukemia [press release]. Amgen website. Available at: https://www.amgen.com/media/media_pr_detail.jsp?year=2015&releaseID=2068505. Accessed July 20, 2015.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 宮本満里

監修 野崎健司(血液内科/住友病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

白血病に関連する記事

再発/難治性の若年性骨髄単球性白血病にトラメチニブが有望の画像

再発/難治性の若年性骨髄単球性白血病にトラメチニブが有望

MEK阻害薬トラメチニブ(販売名:​​メキニスト)は、第2相臨床試験に登録された再発または難治性の若年性骨髄単球性白血病(JMML)の小児患者に有効な治療薬であり、10人中7人が中央値...
白血病(B-ALL)に新規CAR-T細胞療法obe-celが有望:ASCOの画像

白血病(B-ALL)に新規CAR-T細胞療法obe-celが有望:ASCO

MDアンダーソンがんセンター特集:臨床試験の結果で新たな治療法が一部の患者にとって幹細胞移植や長期治療の必要性を減らす可能性を示唆アブストラクト:6504、 6507テ...
白血病(AML)の併用療法でベネトクラクス投与期間を短縮しても効果は同等:ASCOの画像

白血病(AML)の併用療法でベネトクラクス投与期間を短縮しても効果は同等:ASCO

MDアンダーソンがんセンター特集:臨床試験の結果、新たな治療法が一部の患者にとって幹細胞移植や長期治療の必要性を減らす可能性を示唆アブストラクト:6504、 6507テ...
【ASCO2024年次総会】アシミニブは新規診断白血病(CML)の治療選択肢として有望の画像

【ASCO2024年次総会】アシミニブは新規診断白血病(CML)の治療選択肢として有望

ASCOの見解(引用)「アシミニブ(販売名:セムブリックス)は、現在の標準治療である分子標的治療薬と比較して優れた有効性を示し、有害事象、投薬の中断および中止が少なく、安全性プ...