白血病の細胞療法奏効の鍵を突き止める
ダナファーバーがん研究所の研究者らは、同種造血幹細胞移植後に再発した急性骨髄性白血病(AML)患者に対する標準療法である、ドナーリンパ球輸注(DLI)が患者を寛解に導くかどうかを決定する因子を同定した。研究チームは、DLI産物に存在する重要な細胞のタイプと患者が有する腫瘍微小環境の特徴の両方が関与していることを突き止めた。
この研究結果はScience Immunology誌に掲載された。
筆頭著者であるKatie Maurer医学博士は、次のように述べた。「幹細胞移植後の急性骨髄性白血病(AML)再発は大きな課題です。有効な治療法はほとんど存在せず、再発後の患者の転帰は不良です」。
急性骨髄性白血病(AML)患者にとって、幹細胞移植は治癒の可能性を秘めている。幹細胞移植の目的は、患者の造血幹細胞(血液や免疫細胞の供給を若返らせる細胞)を、がんでないドナーの幹細胞に入れ替えることである。さらにドナーの細胞には、移植後に患者に残る白血病細胞を攻撃できる活性免疫細胞も含まれている。この攻撃は移植片対白血病効果と呼ばれている。
しかし、急性骨髄性白血病(AML)患者の約3人に1人は、同種幹細胞移植後に再発する。ドナーリンパ球輸注は、急性骨髄性白血病(AML)の再発を食い止めたり治療に役立つ後続治療であり、幹細胞移植をするドナーからリンパ球と呼ばれる白血球を急性骨髄性白血病(AML)患者へ注入する治療法である。
ドナーリンパ球輸注(DLI)の成功は、急性骨髄性白血病(AML)患者の約15〜20%に過ぎない。さらに、DLIに含まれる細胞がどのように白血病を寛解へと導くかということが正確には分かっていないため、研究者が治療法を改善することは困難である。
Maurer氏とダナファーバーの幹細胞移植・細胞治療部門の主任研究者であるCatherine Wu医師は、ドナーリンパ球輸注(DLI)の成功にいかなる要因が寄与しているのかをさらに知りたいと考えた。そのため、幹細胞移植とDLIによる治療を受けた再発白血病患者25人の骨髄から採取した細胞を調査した。これらサンプルには、DLIが奏効した患者および奏効しなかった患者が含まれていた。
研究チームは、各患者から採取した多数の細胞を詳細にプロファイリングするため、シングルセルシーケンス技術を採用した。これにより研究チームは、骨髄中の様々な種類の細胞だけでなく、それらの細胞がどのように相互作用し、患者の免疫反応を促進しているかについても理解することができた。
その結果、ドナーリンパ球輸注療法に奏効した患者は、奏効しなかった患者と比較して骨髄中の細胞集団が著しく異なっていることが判明した。本発見は、固形がんの一部で見られる、免疫療法に反応する「ホット・チューマー(Hot Tumor)」と反応しない「コールド・チューマー(Cold Tumor)」のパラダイム同様、反応する急性骨髄性白血病(AML)と反応しない急性骨髄性白血病(AML)が存在する可能性を示唆している 。
研究チームは、ドナーリンパ球輸注に反応した患者に移植片対白血病効果を媒介すると思われる単一の免疫細胞タイプも同定した。その細胞タイプとは、ZNF683/Hobitと呼ばれる転写因子を高レベルで発現するCD8+細胞傷害性Tリンパ球であり、他の免疫細胞と協調して拡大し、白血病細胞を攻撃するようである。奏効しなかった患者では、これらのT細胞はZNF683/Hobitの発現レベルが低く、その活性を阻害するマーカーのレベルが高かった。
さらに研究チームは、このタイプの細胞がドナーリンパ球輸注(DLI)産物に由来することを発見した。すなわち、この細胞はドナーの移植片に存在しており、DLIにより再注入されるのである。
「本研究の目標は、患者が免疫応答する方法を特定することです。このようなメカニズムを明らかにすることで、さらに多くの患者にとってより有効でより改良された治療法の開発に役立つことを期待しています。本プロジェクトでは、抗白血病活性を持つ活性化T細胞の特定のサブセットを同定しました。この発見は、急性骨髄性白血病(AML)の治療において、より有効性の高いT細胞療法を生み出す道を開くものです」と、Maurer氏は述べた。
本研究は、米国国立衛生研究所、米国国立がん研究所、コロンビア大学、米国血液学会、Lubin Family財団、Berlin Institute of Health at Charité、Deutsche Krebshilfe、Else Kröner-Fresenius-Stiftung、テキサス州がん予防研究所(CPRIT)、Be the Match財団、Lavine Family財団、白血病リンパ腫協会から資金提供を受けた。
- 監訳 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
- 記事担当者 平 千鶴
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- 原文掲載日 2025/01/24
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