高リスク急性骨髄性白血病(AML)治療に関する新知見3演題
ダナファーバーがん研究所の研究者らは、急性骨髄性白血病(AML)患者の治療改善に役立つ新たな知見をもたらす3つの研究を主導している。研究チームは、2024年12月7日から10日までサンディエゴで開催される第66回米国血液学会(ASH)年次総会および展示会で研究結果を発表する予定である。ASHは年間で世界最大かつ最も包括的な血液学のイベントである。
CPX-351の臨床試験データの遺伝子再解析により、AML-MR変異を持つ患者の生存率向上が明らかに
骨髄異形成症候群(MDS)や慢性骨髄単球性白血病(CMML)の診断後、または、別のがんの治療後に急性骨髄性白血病(AML)を発症した患者、およびMDSに関連する染色体変化を有する患者は、転帰が非常に悪く、多く場合、生存期間は1年未満である。ランダム化第3相試験において、CPX-351で治療した患者では標準治療の7+3化学療法(シタラビンおよびダウノルビシンの併用療法)と比較して生存率が向上したため、FDAはこの患者集団を対象としてCPX-351を承認した。最近、AML診断ガイドラインでは、AMLの臨床グループと生物学的グループをより正確に分類できるように、分子遺伝学的特徴が臨床的特徴の代わりに使用されるようになった。
ダナファーバーの研究者は、これらの最新の遺伝子分類を使用してCPX-351から最もベネフィットを得る患者を特定するため、この重要な第3相CPX-351対7+3試験の事後遺伝子再解析を実施した。患者184人から採取した診断サンプルを配列決定し、TP53変異、AML-MR変異(MDSに関連する変異)、生殖細胞系列DDX41変異、またはde novo(その他すべて)変異の4つのグループに分類した。AML-MRグループの患者のみが、7+3よりもCPX-351で生存期間が長くなった。TP53変異、DDX41変異、およびde novo変異のグループにおいては、CPX-351で治療した患者は疾患関連転帰の改善がないまま骨髄抑制が長引いたため、これらの患者におけるCPX-351の臨床的有用性に疑問が生じた。最後に、以前の研究でベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)+メチル化阻害薬(HMA)併用に対するAML-MR変異の感受性が高まったことが示されているため、今後の研究ではこの患者サブグループに対する最適な治療法をより深く理解することに重点を置く必要がある。
研究タイトル:重要な第3相AML試験においてAML-MR変異が7+3に対するCPX-351の優位性に関連
口頭発表抄録番号:60
セッション:617。急性骨髄性白血病:市販の治療法:どのように始めるか?市販の治療法による先行レジメン、2024年12月7日(土):午前10時45分
発表者および筆頭著者:Shai Shimony医師
高リスクMDS/AML患者に対する移植後の全経口維持療法の早期有効性が第1相試験で示される
高リスクの骨髄異形成症候群(MDS)/急性骨髄性白血病(AML)患者では、特に移植時に測定可能な残存病変(MRD)が存在している場合、同種移植を受けても再発率がより高くなる。ダナファーバーがん研究所の研究者らは、研究者主導の第1相臨床試験(NCT03613532)を主導し、MDS/AML患者を対象に、骨髄非破壊的前処置化学療法レジメンにベネトクラクスを追加し、移植後に減量したベネトクラクス/経口decitabine[デシタビン]-cedazuridine[セダズリジン]併用による維持療法を追加することの安全性、実現可能性、忍容性を評価している。
患者30人が試験に登録され、そのうち60%にはベネトクラクスの投与歴があり、63%にはTP53に変異があった。患者3人は維持療法の前に再発し、1人は旅行のために試験を中止した。上記の維持療法(42日ごとに最大8サイクル)を受けた患者30人中26人では、治療により発現したグレード3~4の非血液毒性は見られなかったが、予想された短期のグレード3~4の血液毒性(好中球減少症、血小板減少症)が観察された。発熱(n=1)と敗血症(n=1)を合併した好中球減少症のエピソードが2回あったが、それ以外の副作用は管理可能であった。移植片対宿主病(GVHD)発症率は低く、6カ月のグレードIIIの急性GVHD発症率は4%、1年の中等度から重度の慢性GVHD発症率は16%であった。中央値22カ月の追跡調査後、1年全生存率は81%、1年無増悪生存率は73%、再発の累積発生率は27%であった。維持療法中にドナーキメリズムの達成が観察された。研究者らは、この高リスク集団における安全性、実現可能性、および予備的な結果に希望を見出している。
研究タイトル:RIC同種移植を受けている高リスクMDS/AMLに対するベネトクラクス+FluBu2併用後のベネトクラクスとデシタビン/セダズリジン併用による経口維持療法の実現可能性、安全性、有効性
口頭発表抄録番号: 1045
セッション:723。同種移植:長期フォローアップと疾患再発:疾患再発を予防および治療するための新しい治療法、2024年12月9日(月)午後4:30
発表者および筆頭著者:Jacqueline S. Garcia医師
研究者らがRATIFY試験の10年間の追跡調査データを報告
C10603/RATIFYは、遺伝的に特定された特定の患者群、つまりFLT3に変異がある患者群に対する強化化学療法に標的薬剤を追加することのベネフィットを示した最初のAML試験であった。FLT3変異AMLの未治療成人患者に対する化学療法にマルチキナーゼ阻害剤midostaurin[ミドスタウリン](販売名:Rydapt[リダプト])を追加した結果、プラセボと比較して無イベント生存期間(EFS)および全生存期間(OS)が優れていたため、この薬剤の併用療法での承認につながった。現在、ダナファーバーがん研究所の研究者らは、10年間の追跡データを使用してC10603のEFSおよびOSデータを報告し、ミドスタウリンのベネフィットの持続性を判断し、後期再発または毒性の性質を評価している。
試験には患者717人が登録された(ミドスタウリン群360人、プラセボ群357人、年齢の中央値47.8歳、範囲18~61歳)。10年間の追跡データによると、EFSの中央値はミドスタウリン群で8.2カ月、プラセボ群で3.0カ月であった。治験実施計画書で指定された60日間に完全寛解(CR)を達成した患者420人のうち、253人にイベントが発生した(69人が死亡、184人が再発)。これらのイベントは各群でほぼ同等であった。主要評価項目であるOSは、ミドスタウリン群がプラセボ群よりもわずかに優れていた。10年OSの推定値は43.7%対38.6%であった。したがって、化学療法に追加した場合のミドスタウリンとプラセボのランダム化によるEFSのベネフィットは経時的に維持されたが、OSのベネフィットは減少した。これは、両方の治療群の患者に起こる自然な老化プロセスが原因と考えられる。
研究タイトル:CALGB 10603/Ratifyの10年間の追跡調査:18歳から60歳の新規診断FLT3変異急性骨髄性白血病患者におけるミドスタウリンとプラセボ+強化化学療法の比較
口頭発表抄録番号:218
セッション:617。急性骨髄性白血病:市販治療薬:AMLにおける分子標的薬の影響、2024年12月7日(土)午後2時15分
発表者および筆頭著者:Richard M. Stone医師
これらの研究結果は、ダナファーバー関連の研究者らが主導してASHで発表された100件以上の研究のうちの一部である。
第66回米国血液学会(ASH)年次総会および展示会におけるダナファーバーの発表の全リストについては、ここをクリックすること。
- 監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
- 記事担当者 仲里芳子
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- 原文掲載日 2024/12/05
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