OncoLog 2014年9月号◆抗体併用化学療法は急性リンパ性白血病(ALL)に対して有望な治療方法である

MDアンダーソン OncoLog 2014年9月号(Volume 59 / Number 9)

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抗体併用化学療法は急性リンパ性白血病に対して有望な治療方法である

開発中の薬剤である、イノツズマブ[inotuzumab]とオファツムマブ[ofatumumab]は、細胞傷害性抗がん剤との併用により、成人の急性リンパ性白血病(ALL)患者の治療において有望であることが示された。

テキサス大学 MD アンダーソンがんセンターで進行中の臨床試験のうち2つが2014年ASCO (米国臨床腫瘍学会)年次総会で白血病部門のElias Jabbour医師らによって報告された。

小児の ALL 患者と比較して成人ALL の患者においては、病勢が強い、化学療法に対する忍容性が低い、治療成績がよくないといった傾向がある。新たな治療の道を切り開く上で、これらの試験は重要であるとJabbour医師は述べた。「小児ALLの治療では、すばらしい成績が収められている一方で、成人患者に対する治療成績は、残念ながら遅れをとっています」と、Jabbour医師は述べた。小児ALL患者の治癒率が90%であるのに対して、成人での治癒率は40%である。

CD20やCD22などALL細胞の表面抗原を標的としたモノクローナル抗体が、ALL治療の柱となっている。CD20 はALLの20%以上において発現が確認されるが、そういった患者に対しては 抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブと細胞傷害性抗がん剤の併用が用いられる。しかしながら、腫瘍細胞において細胞のCD20発現量が低い患者、あるいは割合としては低いがCD20発現が全く認められない患者では、リツキシマブは効果を示さない。

第2世代のモノクローナル抗体であるイノツズマブやオファツムマブなどにより、抗体と化学療法の併用利用が、これまで効果が不確かで抗体併用療法適応のボーダーラインと考えられていたALL患者にも広がる可能性がある。

イノツズマブ

初期段階の試験において、CD22阻害剤イノツズマブ・オゾガマイシン[inotuzumab ozogamicin]が単剤でALLに対し効果を示したことから、研究者らは細胞傷害性抗がん剤の使用量を減らせるチャンスととらえたのだ。「当初は、この薬剤を高齢患者の治療に用いることを考えていました。というのも、高齢患者では化学療法にあまり耐えられないことが多いからです」と、Jabbour医師は述べた。「ある試験では、60歳以上で未治療のALL患者に対して、標準用量に対して半量の抗がん剤とイノツズマブの併用療法が用いられました。その治療効果たるや、すばらしいものでした」。

それらの結果が、白血病部門教授兼部門長であるHagop Kantarjian医師が主導する現在の試験へとつながっている。この試験では、60歳以上で未治療のALL患者、あるいは年齢に関わらず再発または難治性ALL患者に対して、イノツズマブと低用量の細胞傷害性抗がん剤との併用療法を行った。この試験では、用量を減らしたシクロホスファミド、デキサメタゾン、メトトレキサートおよびシタラビンからなる化学療法レジメンを患者に8サイクル行い、最初の4サイクルの間はリツキシマブとイノツズマブも併用する。その後患者に、POMP療法による維持療法を4年間おこなう。POMP療法とは、メルカプトプリン、メトトレキサート、ビンクリスチンおよびプレドニゾンにより成る治療法である。

この試験の中間解析の時点で、新たに診断されたALL患者の全奏効率は 95%であり、再発/難治性ALL患者の全奏効率は75%であった。「重大な有害事象は認められず、1年生存率はおよそ80%でした」と、Jabbour医師は述べた。

オファツムマブ

抗CD20分子であるオファツムマブは、リツキシマブが結合する部位とは異なるCD20の部位に結合するもので、すでに慢性リンパ性白血病の治療薬として承認されている。Jabbour医師は、ALL患者に対するフロントライン治療としてのhyper-CVAD療法とオファツムマブ併用療法の第2相臨床試験の試験責任医師である。Hyper-CVAD療法とはシクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよび、デキサメタゾンの投与とメトトレキサートおよびシタラビンの投与を交互に行う治療法である。

この試験では、新たに診断された CD20陽性型ALLの患者、あるいは化学療法を1サイクル受けたCD20型陽性ALLの患者に、オファツムマブとともにhyper-CVADレジメンを4サイクル、次にオファツムマブ無しでhyper-CVAD療法を4サイクル行う。その後、POMP療法による維持療法を30カ月患者に行う。維持療法は、6カ月目と18カ月目にメトトレキサート+ペガスパルガーゼ、7カ月目と19カ月目にhyper-CVAD+オファツムマブによる強化療法のため中断される。

最初にこの試験に登録された25人の患者のうち、24人の患者が6月の時点で完全寛解であった。Jabbour医師は、治療に関連する安全性の懸念はなかったと述べた。「言うまでもなく、14カ月の追跡調査では短い」と、彼は述べた。「しかし、今日からあと一年この結果が持続すれば、それはALL患者の治療の大きな進展となるだろう」。

未来は明るい

ALL治療に向けての研究としてイノツズマブやオファツムマブに加えて、オビヌツズマブ[obinutuzumab]、ブリナツモマブ[blinatumomab]、SGN-CD19Aおよびエプラツズマブ[epratuzumab]など他のモノクローナル抗体についても、MDアンダーソンや他の施設において臨床試験が実施されている。

このような薬剤と細胞傷害性抗がん剤を組み合わせることで、小児および成人ALL患者の治癒率は一様に改善するだろうとJabbour医師は強気だ。彼は、次のように述べた。「今利用できる抗体についての研究を押し進めていけば、ALL患者の未来は明るいのです」。

For more information, contact Dr. Elias Jabbour at 713-792-4764.

2014年ASCO年次総会で発表されたこれらの研究の要旨はhttp://meetinglibrary.asco.org/abstractsでAbstract No. 7019 (inotuzumab) または7065 (ofatumumab)を検索して下さい。
進行中のALL治療のための化学療法+モノクローナル抗体を用いた臨床試験についての詳細はwww.clinicaltrials.orgでstudy No. 2010-0991 (inotuzumab) または 2010-0708 (ofatumumab)を選択して下さい。

— Bryan Tutt

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翻訳担当者 田村克代

監修 佐々木裕哉(血液内科、血液病理/久留米大学病院)

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