再発/難治性の若年性骨髄単球性白血病にトラメチニブが有望

MEK阻害薬トラメチニブ(販売名:​​メキニスト)は、第2相臨床試験に登録された再発または難治性の若年性骨髄単球性白血病(JMML)の小児患者に有効な治療薬であり、10人中7人が中央値で2年後に生存していたことが、米国がん学会(AACR)の機関誌Cancer Discovery誌に発表された。

若年性骨髄単球性白血病は極めてまれで悪性度の高い造血器腫瘍であり、通常乳幼児で診断される。現行の標準治療は、化学療法による前治療の有無を問わず造血幹細胞移植(HSCT)であるが、移植後の再発が多いと統括著者のMignon Loh医師は言う。同医師はシアトル小児病院Ben Towne小児がん研究センター長で小児血液学、腫瘍学、骨髄移植および細胞療法部門の責任者である。

2回目の移植を受けなければ、患者の約90%が2年以内に死亡するとLoh医師は述べた。

「私たちはこれらの幼い子どもたちに造血幹細胞移植を受けさせていますが、これは現在利用できる最も強力ながん治療の一つです」と、本試験の筆頭著者であるElliot Stieglitz医師は述べた。同医師はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のベニオフ小児病院で小児腫瘍学のWilliam Fries II 寄付講座教授を務める。

「造血幹細胞移植がうまくいかなかった場合、唯一の選択肢は、まったく同じ治療をもう一度試みることです」と同医師は付け加えた。「残念ながら、2回目の移植で長期に奏効する患者は30%に止まります」。

若年性骨髄単球性白血病細胞の増殖はRAS/MAPK細胞シグナル伝達経路に依存していることが示されたため、Loh医師およびStieglitz医師らは、この経路内のタンパク質であるMEKを阻害することが造血幹細胞移植の効果的な代替療法になる可能性があるという仮説を立てた。先行試験では、トラメチニブを含むMEK阻害薬が若年性骨髄単球性白血病マウスモデルで抗腫瘍活性を示すことが証明された。この先行試験は共著者のKevin Shannon医師(UCSF Pediatric Molecular OncologyのRoma and Marvin Auerback Distinguished Professor)が主導した。

これらの知見に基づき、研究者らはChildren's Oncology Groupコンソーシアムを通じて第2相臨床試験を実施し、若年性骨髄単球性白血病の小児10人を対象にトラメチニブの安全性と有効性を評価した。登録患者の年齢中央値は23.6カ月で、全員がRAS/MAPK経路に変異を有する若年性骨髄単球性白血病であった。試験開始時、3人はすでに造血幹細胞移植後で再発しており、7人は化学療法に抵抗性の若年性骨髄単球性白血病で造血幹細胞移植を受けていなかった。

10人中5人はトラメチニブに客観的奏効を示し、2人が完全奏効、3人が部分奏効であった。さらに2人は病勢安定、残りの3人は病勢進行であった。

追跡調査期間中央値が24カ月の時点で、病勢安定または客観的奏効のいずれかを得た7人の患者全員が生存しており、以前は一次治療の造血幹細胞移植を受けることができなかった4人が、トラメチニブ投与後に造血幹細胞移植を受けることができた。

いずれの患者でも用量制限毒性または心機能障害は認められなかった。グレード4の血小板減少症が1件、高血圧、好中球減少症、貧血および敗血症を含むグレード3の有害事象が7件認められた。

治療前後の患者サンプルの分子解析から、トラメチニブはRAS/MAPKシグナル伝達を抑制することに加えて、炎症シグナル伝達も抑制することが示され、これは治療を受けた患者で多くの若年性骨髄単球性白血病関連の症状が急速に解消された理由を説明し得る予想外の発見であるとStieglitz 医師は述べた。

「私たちの試験は、子どもさんに造血幹細胞移植を繰り返してほしくない親御さんに選択肢を提供し、一部の患者さんでは造血幹細胞移植を完全に回避するのに役立ちました」とStieglitz医師は述べた。「この結果は、トラメチニブが一部の患者さんにとって造血幹細胞移植に代わるより毒性の低い選択肢となる可能性を示唆しています」。

「すべての患者さんで造血幹細胞移植が不要になるわけではありませんが、この試験結果は、若年性骨髄単球性白血病患者さんとご家族にとって、以前私たちが考えていたよりもはるかに多くの希望があることを示しています。これは若年性骨髄単球性白血病の幼い子供を持つ家族にとって本当に重要なメッセージです」とLoh医師は付け加えた。

これらの知見に基づき、研究者らは若年性骨髄単球性白血病の一次治療としてトラメチニブを評価する臨床試験を開始した。

再発または難治性の若年性骨髄単球性白血病を対象とした本試験の限界は、症例数が少ないこと、単群デザインであること、および造血幹細胞移植を受けたことのある患者と受けていない患者を合わせて登録したことであった。

本試験は、米国国立がん研究所、St.Baldrick's Foundation、Alex's Lemonade Stand Foundation Center of Excellence、および白血病リンパ腫協会からの資金援助を受けて実施された。Loh医師とStyglitz医師は利益相反がないことを表明している。

  • 監訳 佐々木裕哉(血液内科/筑波大学血液内科)
  • 記事担当者 坂下美保子
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  • 原文掲載日 2024/06/13

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