【米国血液学会(ASH)】進行した急性骨髄性白血病に新規メニン阻害薬が有望
MDアンダーソンがんセンター
特定の遺伝子変異を有する白血病に有望な効果が、MDアンダーソン主導の2つの臨床試験で示される
テキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の2つの臨床試験で、特定の遺伝子変化を有する再発または難治性の急性白血病の治療において、メニンを標的とした新規療法が早期に良好な結果を示すことが示された。この試験の結果は本日、2023年米国血液学会(ASH)年次総会で口頭発表された。MDアンダーソンによるASH年次総会の内容に関する詳細は、MDAnderson.org/ASHを参照のこと。
メニン阻害薬単剤療法により再発/難治性急性白血病患者の大半の疾患負担を軽減 (アブストラクト 57)
Elias Jabbour医師(白血病学教授)が主導した第I相試験のデータによると、メニン阻害薬JNJ-75276617は、KMT2AまたはNPM1の遺伝子変異を有し、臨床転帰不良との関連が認められる、再発または難治性の急性白血病患者において、早期の臨床効果を示した。
1カ月間の治療後に評価可能であった患者66人において、そのうち71%でJNJ-75276617単剤療法により骨髄疾患負荷が減少し、またその中の33人は骨髄芽球が50%以上減少した。初回の寛解までの期間の中央値は2カ月未満であった。両遺伝子変異を有する患者群における寛解率は同様であった。
「再発/難治性の白血病で、KMT2AまたはNPM1の変異を有する患者は、現在受けられる治療法で良好な結果が得られないことが多いため、より効果的な選択肢を開発する必要があります。非臨床試験で観察されたものを模した、この単剤療法によって得られる白血病への治療効果は勇気づけられるものです」とJabbour氏は述べた。
この多施設共同試験では、足場タンパク質メニンとメチル基転移酵素KMT2Aの相互作用を強力かつ選択的に阻害するJNJ-75276617の安全性と有効性について、段階的アプローチで評価した。この試験には、NPM1およびKTM2A遺伝子変異を有する急性白血病患者86人が組み入れられた。
患者は28日サイクルの経口投与を受けた。評価可能な患者の56%がKMT2Aの変異がある急性白血病であり、評価可能な患者の43%はNPM1変異を有していた。試験参加者の年齢の中央値は63歳、前治療歴の中央値は2回であった。
患者に最も多くみられた副作用は分化症候群であったが、段階的な用量漸増投与により克服された。第II相の推奨用量を選定することを目的として、この試験は進行中である。
この試験のスポンサーはJanssen Pharmaceuticals社である。共同著者の全一覧と開示情報はこちらを参照。
進行した急性白血病に対する経口併用療法で有望な結果(アブストラクト 58)
白血病学助教Ghayas Issa医師が主導した第I/II相SAVE試験は、メニン阻害薬レブメニブと、ベネトクラックス(Venclexta)および低メチル化剤ASTX727を併用投与したものである。この試験では、KMT2AまたはNUP98再配列またはNPM1変異を有する、再発または難治性の進行した急性骨髄性白血病(AML)の成人および小児患者において、有望な寛解が得られた。
評価可能な患者9人の寛解率は100%であった。患者3人は完全寛解、1人は部分的な血液学的回復を伴う完全寛解を達成し、3人は完全寛解であったが、血小板数の回復が不完全であった。また、患者1人は部分寛解であり、1人は白血病が形態学的に認識されない状態となった。6人の患者で測定可能な残存病変が検出できなかった。
「このような進行した白血病や急性白血病は、治療が非常に困難であることが多く、現在承認された標的治療薬がない。この初期の結果から、進行した白血病にとってこの治療法が非常に有効であることが示されていると私達は考えています。メニン阻害薬を用いた経口薬の完全な併用療法は今回が初めてですが、この結果は非常に期待が持てるものです。さらなる試験で持続されれば、この患者集団の標準治療に変化をもたらすことができ、患者のQOLが改善する大きな可能性があります」とIssa氏は述べる。
レブメニブは、メニンとKMT2Aの相互作用を選択的に阻害する、強力な経口薬である。現在までに、12歳以上の患者9人が試験に登録されている。そのうち5人がKMT2A再配列、3人がNUP98再配列、1人がNPM1変異を有していた。患者は平均3ラインの前治療を受けていた。
副作用は管理可能であり、これまでの研究と一致していた。この試験は進行中であり、第II相の推奨用量を設定し、併用療法の送達を最適化してから、第II相試験のコホートに患者を登録する計画である。
この医師主導型試験はSyndax社とAstex社の支援を受けて実施された。共同研究著者の全一覧および開示情報はこちらを参照。
- 監訳 佐々木裕哉(血液内科/筑波大学血液内科)
- 翻訳担当者 瀧井希純
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- 原文掲載日 2023/12/09
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