イブルチニブは17p欠失の慢性リンパ性白血病(CLL)患者に有効

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スイスのルガーノ市にて2013年6月19~22日に開催された第12回国際悪性リンパ腫学会で発表された試験結果によると、標的治療薬イブルチニブにより、17番染色体短腕欠失のある慢性リンパ性白血病の未治療患者および再発・難治性患者いずれでも迅速で持続性のある疾患制御が得られることがわかった。

慢性リンパ性白血病(CLL)は、成人白血病の最も頻繁に認められる型である。米国がん協会によれば、本年には推定約15,000人がCLLと診断される見込みである。米国では現在、約95,000人がCLLを持って生存している。

CLLは、異型リンパ球の産生を特徴としている。リンパ球は、B細胞およびT細胞といったふたつの形態で存在する特異的免疫細胞である。これらの細胞は骨髄にて産生され、身体が感染症と闘うのを補助するためそれぞれ特別な機能を果たしている。CLLの症例の大多数は、標準よりはるかに長く生存する傾向がある成熟Bリンパ球によるものである。Bリンパ球は血液、骨髄、リンパ節および脾臓に堆積するため、これらの部位で密集し、血液と免疫細胞の形成や機能を抑制する。さらに、癌性リンパ球はそれ自体が正常に機能せず、身体が感染症と闘う能力をさらに低下させることになる。

CLLに対する効果的な治療はあるが、患者の一部には治療が困難であり、転帰が不良となる傾向がみられる。高齢患者の多くは、現在の強力な標準治療に耐えられない。また、17番染色体短腕欠失(17p欠失)のある患者では化学療法の転帰が不良となる。

イブルチニブは、CLLの発現および進行に重要な役割を果たすB細胞受容体シグナル伝達経路の一部分であるブルトン型チロシンキナーゼの選択的阻害剤である。言い換えると、標的治療薬は疾患進行を仲介する伝達経路を攻撃するものである。

研究者らは、17p欠失CLL患者29人を含む単剤第2相試験を実施した。そのうち15人が未治療患者であり、14人が再発・難治性患者であった。患者はイブルチニブ420mg/日の投与を疾患進行まで受け、奏効率は6カ月後時点およびその後も6カ月ごとに評価された。追跡期間中央値9カ月後の結果で有望な奏効率が示された。

6カ月時点で、評価可能な患者25人のうち88%にリンパ節性の奏効(中央値70%のリンパ節腫大の縮小)、48%に国際ワークショップCLL(IWCLL)基準による部分寬解および40%にリンパ球増加症を伴う部分寬解が認められた。1人の患者には疾患進行(形質転化と思われる)が認められた。リンパ節性の奏効は再発・難治性患者の93%、未治療患者の82%に認められた。

無増悪生存率の推定値は、12カ月時点で90%であった。すべての患者は巨脾の縮小を示し、治療開始時と比べて脾臓体積は中央値446mL(46%)減少した。研究者らは、6カ月時点で23人の患者を対象とした骨髄生検およびFISH法による測定を再び実施した。骨髄生検では、CD79aに対する免疫組織学によって評価されたように、(治療開始時と比べて)中央値76%の腫瘍負荷の減少が明らかになった。蛍光遺伝子プローブ法は、17p欠失腫瘍細胞の割合を測定するのに用いられ、6カ月時点で、18人の患者のうち15人に中央値55%の低下が認められ、1人に何ら変化が認められず、3人に増加が認められた。

治療は認容可能であった。患者の14%にグレード3またはそれ以上の非血液毒性が認められた。試験期間中に2人が死亡したが、治療によるものであるとは考えられない。

研究者らは、イブルチニブ単剤が17p欠失CLLの未治療患者および再発・難治性患者に有効であり、迅速で耐久性のある疾患制御が得られると結論づけた。この高リスク群に対する治療戦略としてイブルチニブ単剤を評価するため、研究は引き続き実施される。

参考文献:
Wiestner A, Farooqui M, Valdez J, et al. Single agent ibrutinib (PCI-32765) is highly effective in chronic lymphocytic leukemia patients with 17p deletion. Hematological Oncology: Special Issue: 12th International Conference on Malignant Lymphoma, Palazzo dei Congressi, Lugano, Switzerland, June 19–22, 2013. 31 (SI): 96-150. Abstract 008.


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翻訳担当者 寺本瑞樹

監修 林 正樹 (血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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