2012/11/13号◆特別リポート「チェルノブイリ原発事故から20年が経過、白血病リスクの手掛かりが得られる」

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NCI Cancer Bulletin2012年11月13日号(Volume 9 / Number 22)

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

チェルノブイリ原発事故から20年が経過、白血病リスクの手掛かりが得られる

長期間にわたる低線量の電離放射線への曝露により、後年に慢性リンパ性白血病(CLL)や他の種類の白血病を発症するリスクが上昇する可能性があることを示唆する新たな研究が報告された。本結果は、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故後の除染作業中に被曝したウクライナの作業員の研究から得られた。

災害から20年が経過し、除染にあたった作業員は、CLLおよびその他の種類の白血病のリスクが増大していたことが、先週のEnvironmental Health Perspectives誌電子版に掲載された。本研究は症例対照研究であり、11万人を超えるチェルノブイリ除染作業員の健康状態を追跡した別の大規模研究で報告された情報を使用した。

「先の研究により、放射線被曝がある種の白血病のリスク増大に関連することが示されていました」と、筆頭著者であるカルフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Lydia Zablotska氏は述べる。「しかし、これらの研究にはCLLとの関連を報告したものはありませんでした。ですから、この結果は興味深いものでした」。

この新しい検討において、Zablotska氏の研究チームは、チェルノブイリ原子力発電所の事故以降に除染にあたった作業員で白血病と診断された症例117例のうち19例(16%)は、事故による放射線被曝が原因であるとした。リスクの大きさは、CLLとその他の白血病とで同等であった。

米国において、CLLは他の白血病よりも発症率が高く、昨年は約15,000人がCLLと診断された。この病気は比較的良性であるが、化学療法が必要となる患者もあり、致命的となる場合もある。

CLLの原因の手掛かりが得られたことに加え、この新しい知見により、研究者は低線量の放射線に長期間曝露された際の影響を理解できるようになった。「米国における放射線曝露は、過去20年間で増加しています。主にCTスキャンによる被曝です」と、Zablotska氏は述べる。「この被曝により長期間で何が起こるか、知りたいのです」。

放射線はDNA損傷を起こすことがあり、それがいずれ癌につながりうる。原爆被災者の研究により、中高線量の放射線への短期被曝が癌と関連していることが実証されてきた。しかし、除染作業員が浴びた程度の低線量の放射線に長期間にわたって曝露した場合の健康への影響についてはあまり知られていない。

2008年に、この研究チームはチェルノブイリ除染作業員における放射線被曝とCLLの関連性をはじめて報告した。結果が予想外のものであったため、より大規模で長期間の追跡に取り組んだ研究が今回の報告である。

「研究者らにとって、この結果は興味深いものでした。CLLがどのように発症するのかの研究に広げることができたのですから」と、NCI 癌疫学・遺伝学部門のチェルノブイリ研究室長であり、本研究の統括著者であるDr. Kiyohiko Mabuchi(馬淵清彦)氏は述べる。

馬淵氏は、放射線被曝した作業員に関する他の研究ではCLLリスクの増大は認められず、この不一致を解明するにはさらに研究が必要であるとし、そして、この関連の根底にある生物学的機序を特定することが重要であると述べた。

本研究は、「電離放射線被曝の悪影響としてCLLを発症する可能性があるという結論を裏づける、今までで最も重要な証拠のひとつ」をもたらしたと、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の疫学者Dr. David Richardson氏は話す。同氏は放射線の健康影響を研究しているが、本研究には参加していない。

「チェルノブイリの事故によって放射線に被曝した除染作業員や、他の集団のどちらにも、健康影響の監視を継続することが重要でしょう」と、馬淵氏は語った。

—Edward R. Winstead

本研究はNCIの所内研究プログラムの助成を受けた。

【上段写真キャプション訳】  チェルノブイリ原子力発電所で除染にあたった作業員の研究により、電離放射線と慢性リンパ性白血病の関連が明らかになった。(写真はブルナシヤン連邦医学物理センターDr. Victor Kryuchkov氏の厚意による)

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石岡優子 訳
東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院) 監修 
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