2012/09/04号◆FDA情報「FDAが稀な小児脳腫瘍に対する初の薬剤を承認」「重度の好中球減少症に対する新規治療薬を承認」「FDAが稀なタイプの白血病に対する治療薬を承認」
NCI Cancer Bulletin2012年9月4日号(Volume 9 / Number 17)
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◇◆◇ FDA情報 ◇◆◇
FDAが稀な小児脳腫瘍に対する初の薬剤を承認
先週、米国食品医薬品局(FDA)は、Afinitor Disperz(アフィニトール分散錠)-エベロリムス(アフィニトール)の小児用量製剤-を、上衣下巨細胞性星細胞腫とよばれる稀な脳腫瘍の治療薬として承認した。Afinitor Disperzは、小児腫瘍治療のために開発された剤形、用量の製剤として初の承認を受けた。
Afinitor Disperzは少量の水で簡単に溶けるため、錠剤のまま飲み込めない患児への投与が容易になる。また、エベロリムスの成人用製剤よりも用量が少なくてすむ。
Afinitor Disperzは、結節性硬化症を有し、上衣下巨細胞性星細胞腫の診断を受けたが手術不適応である1歳以上の小児への使用が推奨されている。この新たな剤形が承認されるまで、エベロリムスの推奨は3歳以上の小児に限られていた。
結節性硬化症は、脳やその他の重要な臓器における腫瘍増殖を惹起する稀な遺伝性疾患である。上衣下巨細胞性星細胞腫は緩徐に増殖する腫瘍で、脳脊髄液の流れを遮断することにより致命的な合併症を引き起こすことがある。一般的に小児および若年成人の結節性硬化症患者の6~9%に発症する。
エベロリムスは制御不能となったmTORキナーゼと呼ばれるタンパク質―結節性硬化症患者に発症する上衣下巨細胞性星細胞腫の発生および増殖において重要な役割を果たす―の活性を阻害する。
エベロリムスは結節性硬化症患者における上衣下巨細胞性星細胞腫の治療薬として2010年に迅速承認された。エベロリムスおよびAfinitor Disperzは結節性硬化症患者の上衣下巨細胞性星細胞腫治療薬として依然迅速承認下にある。エベロリムスの製造元であるノバルティス社は、2010年に結節性硬化症患者の上衣下巨細胞性星細胞腫治療薬として迅速承認を得るのに用いた小児および成人患者28人対象の単独試験について、安全性および有効性データを更新した。
最近行われた試験では、エベロリムスあるいはプラセボを毎日摂取する群のいずれかに無作為に割り当てられた小児および成人患者117人のうち、エベロリムス群の35%に腫瘍縮小が認められたのに対し、プラセボ群ではゼロであった。上衣下巨細胞性星細胞腫患者に最も多くみられた副作用は口内炎および呼吸器感染症であった。
小児および成人の上衣下巨細胞性星細胞腫患者における、エベロリムスとAfnitor Disperzの長期的安全性および有効性を評価する研究は今後も続けられる。Afinitor Disperzは稀な疾患や病態の治療に用いられるためオーファンドラッグとして分類されている。Afinitor Disperzは優先審査の対象となり、FDAは6カ月以内に審査を完了した。
重度の好中球減少症に対する新規治療薬を承認
FDAは、感染防御を担う白血球(好中球)が減少する状態である重度の好中球減少症の期間を短縮する薬剤として、tbo-フィルグラスチム(tbo-filgrastim)を承認した。化学療法を受ける癌患者の一部は重度の好中球減少症を発症する場合がある。
Tbo-フィルグラスチムは血液あるいは骨髄の悪性腫瘍を除く癌患者のうち、骨髄中の好中球産生を大幅に低下させる化学療法剤の投与を受けている成人に対して使用される。この好中球減少症により感染と発熱(発熱性好中球減少症)が起こることがある。
Tbo-フィルグラスチム注射は骨髄を刺激し好中球産生を促進するため、化学療法の24時間後に投与される。
ある無作為化臨床試験において、重度の好中球減少症から回復するまでの期間がプラセボ群では3.8日であったのに対し、tbo-フィルグラスチム治療群では1.1日であった。この試験はドキソルビシン(アドリアマイシン)およびドセタキセル(タキソテール)治療中の進行乳癌患者348人を対象としたものであった。
本薬剤の安全性を評価する3つの臨床試験において、最も多くみられた副作用は骨痛であった。
FDAが稀なタイプの白血病に対する治療薬を承認
先月、FDAはフィラデルフィア染色体陰性急性リンパ芽球性白血病(ALL)とよばれる稀な疾患の成人患者に対する治療薬として硫酸ビンクリスチンリポソーム(Marqibo)を承認した。
硫酸ビンクリスチンリポソームは、白血病が少なくとも2度再発したか、2種類以上の治療を行った後も進行した患者に対して、使用が承認されている。本薬剤には、細胞膜に類似した物質から成る薬剤の運び屋であるリポソームに封入された状態で、一般的な抗癌剤であるビンクリスチンが含まれている。本薬剤は医療従事者により週1回注射投与される。
本薬剤の有効性は、標準的治療にもかかわらず白血病が2回以上再発し、以前の治療に対し少なくとも1回は90日間以上奏効を示した成人患者を対象とした臨床試験において評価された。65人の登録患者のうち10人(15.4%)は完全寛解あるいは血球数の不完全回復を伴う完全寛解を示した。これら10人において、寛解期間の中央値は28日であった。寛解後から最初の事象(再発、死亡、あるいは次の治療)が起こるまでの期間の中央値は56日であった。
本薬剤の安全性は、白血病が2回以上再発した患者83人を対象とした2つの単一投与群試験において評価された。発熱を伴う白血球数減少、低血圧、呼吸促迫、および心停止などの重篤な有害事象は患者の76%に認められた。最も多くみられた副作用としては、便秘、悪心、低血球数、発熱、神経障害、倦怠感、下痢、食欲低下、および不眠などがあった。
本薬剤は静脈投与する必要があり、脊髄液中への投与など他の投与法では死に至る可能性がある、という警告が処方情報に盛り込まれる予定である。また警告には硫酸ビンクリスチンリポソームと硫酸ビンクリスチンの推奨投与量が異なることも記載される。過剰投与を避けるため、医療従事者は投与前に薬剤名と用量を確認しなければならない。
本薬剤は迅速承認プログラムの下で承認された。このプログラムによりFDAは、患者が臨床的恩恵を得る可能性を合理的に示している臨床データに基づき薬剤を承認できる。製造元はその薬剤がもたらす恩恵および安全性を裏付けるべく、臨床試験をさらに行う必要がある。また、硫酸ビンクリスチンリポソームは稀な疾患に対し用いられるため、オーファンドラッグ指定を受けた。
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河原恭子 訳
廣田 裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック) 監修
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