ポナチニブは慢性骨髄性白血病(CML)に対して優れた治療効果を示す

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2012年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(イリノイ州シカゴ市)において発表された中間解析結果によると、試験中の分子標的薬剤ポナチニブは治療抵抗性の慢性骨髄性白血病(CML)に対し、極めて有効であり、しかも効果の発現がはやく、作用の持続も長いとみられることがわかった。

米国では毎年、およそ5000人がCMLと診断されている。CMLのほとんどの症例で特徴的なのはフィラデルフィア染色体と呼ばれる染色体異常である。この染色体では9番染色体と22番染色体の間で遺伝物質が交換されている。この交換によりBCRとABLの二つの染色体が融合する。これら二つの遺伝子の組み合わせが単一のBCR-ABL 遺伝子になることにより、細胞の異常増殖に関与するたんぱく質が産生される。

ポナチニブは経口で有効な複数標的チロシンキナーゼ阻害剤であり、主にBCR-ABL阻害剤として作用する。ポナチニブは、抵抗性が高く、治療困難であるT315I変異を克服する目的で創薬された。オープンラベルで行われたPACE試験には、タシグナ(ニロチニブ)またはスプリセル(ダサチニブ)による治療を受けたが耐性が現れた、またはT315I変異のあるCML患者またはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病患者が登録された。

患者数は合計444人で、その内訳は慢性期CML(CP-CML)患者271人、移行期CML患者(AP-CML)79人、および急性期ALL(BP-ALL)患者94人であった。患者にはポナチニブ45mgが1日1回投与された。登録はすでに完了したが、経過観察を継続している。慢性期患者の主要エンドポイントは分子的細胞遺伝学的寛解であり、慢性期患者の54%がエンドポイントに達し、その内訳はT315I変異陽性患者の70%、およびタシグナまたはスプリセルに抵抗性であったり忍容性のない患者の49%であった。研究者らは、細胞遺伝学的寛解の大部分は細胞遺伝学的完全寛解であることを指摘しており、高い分子遺伝学的大寛解率が認められた。

移行期患者の主要エンドポイントは血液学的寛解であり、58%の患者で達成できた。その内訳は、抵抗性であったり、忍容性のない患者では60%、T315I陽性患者でも50%であった。同様に急性転化期CML患者でも各々34%、35%、および33%がエンドポイントに達した。

治療効果は経時的に改善し、3カ月後では38%の患者が分子的遺伝細胞学的寛解に達し、6カ月後では49%、さらに9カ月後では53%の患者が寛解を得た。この傾向は試験を行なったすべてのコホートでみられた。また、同じ時間間隔で各々13%、24%、および38%の患者が分子遺伝学的大寛解に達した。

治療を中断した理由で最も多かったのは病状の悪化(12%)、次いで有害事象(10%)の発生であった。また、薬剤関連有害事象で多かったのは血小板減少、発疹、および皮膚乾燥であった。

研究者らは、ポナチニブはすでに重い治療を受けた患者や、抵抗性であるT315I変異のある患者においてかなりの効果があると結論付けている。効果は早期に現れ、持続的である。初期段階のデータであるが、ポナチニブによる三次治療により、タシグナやスプリセルによる二次治療で得られる寛解率に匹敵するかそれ以上の効果が得られるかもしれない。

参考文献:
Cortes JE, Kim DW, Pinilla-Ibarz J, et al. PACE: A pivotal phase II trial of ponatinib in patients with CML and Ph+ALL resistant or intolerant to dasatinib or nilotinib, or with the T315I mutation. Presented at the 2012 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, June 1-5, 2012, Chicago, IL. Abstract 6503.


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翻訳担当者 小縣正幸

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)

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