白血病治療では肥満と過体重は予後不良に関連する
ダナファーバーがん研究所
米国では肥満の急増に伴い、体重がいかに健康上の予後に影響を与えるかについて研究者は注視している。青年および若年成人(AYA世代)の急性リンパ性白血病(ALL)の予後不良が肥満度(BMI)高値と関連する可能性があることが、Blood Advances誌で公表された新たな研究からわかった。ダナファーバーがん研究所の研究者らが主導した本研究は、体重が治療毒性および予後に与える影響に光を当てるもので、さまざまなALL化学療法の反応に体重が及ぼす影響についてさらに研究を進める必要がある。
米国においては、肥満は公衆衛生上の脅威となっており、2020年の時点で人口の約40%が肥満であると思われる。本研究結果から、BMI高値によって定義される肥満が、AYA世代のALL治療レジメンに対する反応に有害な影響を及ぼす可能性が示唆されている。
本研究の筆頭著者であり、ダナファーバーの上級フェローであるShai Shimony医学博士は、次のように説明した。「ALL治療を受けた小児患者の生存率に肥満が影響を及ぼすことは、約15年前から知られていましたが、最近では成人患者でも同様の影響があることが判明しました。しかし、私たちはこの相関関係がなぜ存在するのか、年齢によってどのように左右されるのかを理解するため、より詳細なデータを求めていました」。
治験分担医師らは、2008年〜2021年までダナファーバー・コンソーシアムの小児レジメンでALL治療を受けていた15〜50歳のAYA世代の388人(平均年齢24歳)のデータを収集した。研究者らは、本コホートにおけるBMI、年齢、毒性、治療予後との関係を検討し、あらゆる相関関係や傾向を明らかにすることを目的とした。
本研究に組み入れられたAYA世代のうち、53.3%はBMI適正値であったが、46.6%は過体重または肥満であると分類された。注目すべきは、BMIが過体重または肥満である患者は、BMI適正値の患者と比較して非再発死亡率が高く(11.7%対2.8%)、無イベント生存率が低く(4年時点で63%対77%)、全生存率が不良(64%対83%)ということであった。本研究では、BMI適正値であるAYA世代の年少患者(15~29歳)およびAYA世代の年長患者(30~50歳)の全生存率が同等であったこと(83%対85%)が注目すべき重要な点である。ALLにおいて年齢は、予後不良の要因と考えられることが多いため、今回の結果は極めて重要である。
興味深いことに、研究者らは、本コホート全体において予後不良を促す主因子が、疾患の再発よりもむしろ非再発死亡率であることを見出した。毒性に関しては、肝酵素高値および血糖高値が、過体重や肥満と考えられる患者により頻繁に認められた(60.7%対42.2%、36.4%対24.4%)。
生存率の多変量モデルにおいては、BMI高値が生存率不良と関連し、トリグリセリド(血液中の脂肪)高値が生存率改善と関連し、年齢と生存率は関連しなかった。トリグリセリド高値は、レジメンに組み入れられた主要化学療法薬の1つ(アスパラギナーゼ)を活性化させるため、治療有効性のバイオマーカーとして手ごろな臨床試験に利用可能であると示唆される。しかし、これを有害所見とみなすべきではないと研究者らは指摘する。
「本研究は、小児集中レジメンによるALL治療を受けているAYA世代を対象に、BMI高値と治療関連毒性、非再発死亡率、全生存率不良の上昇との関連に焦点を当てました」と、Shimony氏は記録している。本試験の上席著者であるDaniel DeAngelo医学博士およびMarlise Luskin医学博士も、BMI適正値の18~50歳の患者を対象にしたダナファーバーがん研究所(DFCI)レジメンの有効性を強調している。
本研究が後ろ向き研究であること、測定可能な残存疾患の予後に関するデータがないこと、ほとんどが白人患者であったことを認識することは重要である。さらに、治験責任医師らは、BMIだけでなく、腹囲やウエスト/ヒップ比などの別の肥満指標も前向きに収集し、全年齢層患者を含めた複数治療関連、新規治療法を組み込んだ新たなレジメン関連の予後と相関させるべきであると強調した。
「今後、肥満度測定が、個別の患者に最適な治療法を決定するための重要な変数と認識されることを願っています」と、Shimony氏は強調した。
- 監訳 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
- 翻訳担当者 平 千鶴
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- 原文掲載日 2/23/07/11
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