慢性リンパ性白血病にピルトブルチニブが新たな治療選択肢となるか
オハイオ州立大学総合がんセンター
分子標的薬療法によって成人白血病の最も多くみられる病型は治癒の見込みのない病から慢性的な病へと変わり、研究者らはこの治療法を洗練し、改良し続けている。New England Journal of Medicine誌に発表された新しいデータでは、第一世代および第二世代の薬剤が効かなくなった患者に別の治療選択肢が提供されている。
慢性リンパ性白血病(CLL)は最も多くみられる成人白血病である。化学免疫療法が一部のCLL患者にとって依然として重要な選択肢であるが、過去10年間で、世界の標準治療は共有結合型のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬やBCL2阻害薬などの標的療法に徐々に移行してきた。これらの治療法はCLL細胞の生存と全身への拡散に不可欠なタンパクを阻害する。
治療の過程で、CLLや小リンパ球性リンパ腫(SLL)の患者の一部はBTK阻害薬治療に対する耐性を獲得し、予後不良となる。したがって、これらの患者には新たな治療選択肢が必要である。
第一世代および第二世代の共有結合型阻害薬であるイブルチニブ(販売名:イムブルビカ)、アカラブルチニブ(販売名:カルケンス)およびザヌブルチニブ(販売名:ブルキンサ)に耐性となったCLLおよびSLL患者を対象に、高選択的かつ可逆的なBTK阻害薬であるピルトブルチニブ(Pirtobrutinib:Jaypirca、Eli Lilly and Company社)がBTK阻害を再確立するかどうかを、オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC – James)の共同研究において検討した。
CLLおよびSLL患者247人を対象とした本試験において、他のBTK阻害薬による集中的な治療歴がある患者集団でピルトブルチニブが安全かつ有効であることが示された。また、BTK阻害薬の治療歴があるすべての患者の12カ月無増悪生存率は86%、18カ月全生存率は81%であった。
「ピルトブルチニブは現在、マントル細胞リンパ腫の治療薬として承認されていますが、BTK阻害薬やBCL2阻害薬に耐性を示すようになった患者では、標準治療の選択肢はあるとしてもごくわずかであり、この薬が新たな治療選択肢となる可能性があります」と、本試験の共同筆頭著者であるOSUCCC-Jamesの血液内科医で、OSUCCC-James白血病研究プログラムの共同リーダーであり、白血病研究のD. Warren Brown ProfessorであるJennifer Woyach医師は述べた。
「われわれの研究はまた、第一世代および第二世代の共有結合型BTK阻害薬を用いた治療の後でも、継続してBTKを標的とすることが有効であると示しています」とオハイオ州立大学医学部の血液学教授でもあるWoyach氏は述べた。「CLLやSLL患者の多くはBTK阻害薬による長期の治療を受けることになりますが、ピルトブルチニブの長期安全性はまだ明らかにされていません」
試験参加者の年齢は36~88歳であり、患者が過去に受けた治療の回数は1~11回であった。BTK阻害薬療法に加え、患者は抗CD20抗体療法、化学療法、BCL2阻害薬、PI3K阻害薬、CAR-T細胞療法や同種造血幹細胞移植も受けていた。
本試験は、Eli Lilly and Company社のオンコロジー部門であるLoxo@Lillyから資金面の支援を受けている。
OSUCCC - JamesにおけるCLL研究および患者のがんケアについて詳しくはこちら。
- 監訳 吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
- 翻訳担当者 坂下美保子
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- 原文掲載日 2023/07/06
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