比較的若年層の閉経後女性ではホルモン補充療法で死亡率が低下
キャンサーコンサルタンツ
2009年11月
若年層に属する閉経後女性において、ホルモン補充療法(HRT)の施行により死亡率が28%減少する可能性があることが、スタンフォード大学、マクマスター大学、カリフォルニア工科大学、コーネル大学の研究者らにより報告された。本試験の詳細はAmerican Journal of Medicine誌の2009年11月号に掲載された[1]。
2002年以前には、更年期症状の治療や骨粗鬆症と将来的な骨折の予防を目的に、エストロゲンとプロゲスチンを使用したHRTが頻繁に施行されていた。HRTで心疾患が予防されたかどうかについては相反するエビデンスがあった。HRTと乳癌・子宮癌の関連性は良く知られているところだが、これらの癌は通常初期段階で見つかり、生存率には影響しない。通常、子宮のある女性に対しては、子宮癌が起こるのを予防するためにエストロゲンとプロゲスチンが併用投与され、子宮摘出した女性にはエストロゲンが単独投与されていた。
2002年、女性の健康イニシアチブ(Women’s Health Initiative)に参加した研究者らによると、HRTによる心疾患の予防効果は認められなかったが、いずれにしても全生存率には影響しなかったと報告された。これら結果は、2002年7月17日発行の米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association)に発表された。この試験結果が発表されて以来、更年期症状の治療に対するHRTの施行が著しく減少し、さらにおそらくそのため乳癌の発生が減少した。当該試験のフォローアップでは、HRTを受けた50歳~59歳の女性における死亡率が対照群よりも減少する傾向が示された(危険率0.70,p for trend = 0.06)[2]。
今回の試験には、60歳未満の女性に対し、少なくとも6カ月間のHRTの施行を含む、1966年から2008年までに施行したHRTのランダム化試験19件が含まれていた。本分析での女性総数は16,000人、平均年齢は55歳、追跡期間は83,000患者年であった。死亡率の相対リスクは、対照群と比較してHRTを受けた女性で0.73であった。観察試験8件からのデータを含めると、死亡率の相対リスクは0.72であった。この著者らは、HRTの施行が比較的若年層に属する閉経後女性において死亡率を減少させると結論づけた。「この知見については、ホルモン治療が持つ潜在的有害性を考慮して解釈する必要がある」と、著者らは注意を促している。
コメント:この試験結果は議論が避けられず、また女性にとって、HRTが更年期症状の治療に適しているのか否かさらに混乱を招くことが必至である。
参考文献:
[1] Salpeter SR, Cheng JI, Thabane L, et al. Bayesian meta-analysis of hormone therapy and mortality in younger posmenopausal women. American Journal of Medicine. 2009;122:1016-1022.
[2] Rossouw JE, Prentice RL, Manson JE, et al. Postmenopausal hormone therapy and risk of cardiovascular disease by age and years since menopause. Journal of the American Medical Association. 2007;297:1465-1477.
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