米国産科婦人科学会、子宮頸癌検診の新規ガイドラインを発表

キャンサーコンサルタンツ
2009年12月

米国産科婦人科学会(ACOG)は、子宮頸癌検診の新規ガイドラインを発表した。改訂された指針の詳細については、Obstetrics and Gynecology誌2009年12月号に掲載されている。

米国では、パップテスト(子宮頸部の細胞診)を毎年実施することにより、進行した子宮頸癌の発生率が劇的に減少し、何千という生命が救われてきた。しかしながら、すべての女性が毎年パップスメアを受ける必要はない、とするエビデンスが増えている。

これまでのACOGは、最初の性交から3年以内または21歳までのいずれか早いほうの時期に子宮頸癌検診を開始するよう勧めていた。30歳未満の女性に対しては、毎年パップテストを受けるよう勧めていた。30歳以上の女性に対しては、既往歴によって検診の頻度を減らす(2年~3年に1回)選択が委ねられていた。

このガイドラインの改訂は、検診の時期を延期し頻度を減らしたとしても、これまでと同程度に子宮頸癌を予防でき、かつ不要で有害となる可能性があるいくつかの医療介入が回避されることを示唆したエビデンスに基づいて行われた。多くの10代女性の場合、子宮頸部に異常細胞が発生しても、最終的には自然に消失している。そのような異常細胞の治療は不要の可能性があり、早産のリスクを高めると考えられる。

改訂されたガイドラインは以下の通りである。

* 子宮頸癌検診は21歳で開始すべきである。
* 30歳未満のほとんどの女性は、2年に1回検診を受けるべきである。
* 連続して3回受けたパップテストの結果が正常であった30歳以上の女性は、3年に1回の検診でよい。
* 特定のリスク因子を持つ女性は、より頻回に検診を受ける必要があるかもしれない。そのリスク因子とは、HIV陽性、免疫抑制、子宮内でのDES暴露あるいは子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)2、CIN3、子宮頸癌の治療歴などである。

(※サイト注:DES: diethylstilbestrolジエチルスチルベストロール は、合成女性ホルモン様物質の一種で、切迫早産の治療薬として1940年代頃から使用されたが、DESを服用した母から生まれた子供(娘)に膣癌、子宮頸癌や子宮機能不全、卵管や卵巣などの異常などが多発したため、現在は使用が禁止されている。NCI用語[DES])

* 癌以外の理由で子宮の全摘出(子宮頸部および子宮の切除)を受けた女性で、高悪性度のCINの既往歴がない場合は子宮頸癌検診の受診を停止することが可能である。

子宮頸癌検診における年齢の上限は変更されていない。ACOGは、連続して3回以上受けたパップテストの結果が正常で、過去10年間に異常が検出されなかった場合、65歳か70歳で子宮頸癌検診の受診を停止してもよいと述べている。子宮頸癌のリスクが高い女性は、前述の年齢より上でも引き続き検診を受ける必要があるかもしれない。

ヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン接種を受けた女性も接種を受けていない女性と同じ検診のガイドラインに従う必要がある。

コメント:ガイドラインの改訂により、不要なパップスメア件数の減少が期待されるであろう。

参考文献:
ACOG news release. First Cervical Cancer Screening Delayed Until Age 21. Less Frequent Pap Tests Recommended. Available at: http://www.acog.org/from_home/publications/press_releases/nr11-20-09.cfm Accessed November 20, 2009.


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翻訳担当者 関谷 真美

監修 北村 裕太(農学/医学部生)

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