MDA研究ハイライト:米国婦人科腫瘍学会2022(SGO)年次総会特集

低侵襲手術を受けた子宮頸がん患者の低い生存率の報告の続報

Pedro Ramirez医師が主導したLACC試験(Laparoscopic Approach to Cervical Cancer)の初期結果から、低侵襲手術は開腹手術に比べて再発率が4倍高いことが明らかになったことに基づき、開腹広汎子宮全摘術が早期子宮頸がん患者に対する現在の外科的標準治療となっている。

最新の分析では、追跡期間中央値4.5年で、開腹手術を受けた患者では無病生存率が96%であるのに対し、低侵襲手術を受けた患者では85%であることが示された。また、低侵襲手術では再発率は4倍のまま、全生存期間(OS)は3分の1であった。

また、探索的分析では、2cm以上の腫瘍に対して低侵襲手術では4倍以上、円錐切除生検の既往がない患者では6倍以上の再発率であったことが報告されている。さらに、がんが再発した患者においては、低侵襲手術後の遠隔転移率は24%であったのに対し、開腹手術では0%であった。

この研究結果は、開腹広汎子宮全摘術を早期子宮頸がん患者の標準治療とみなすべきであるという知見をさらに裏付けるものである。

PPP2R1Aの変異が卵巣がんでの例外的な生存と相関する可能性

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、一部の患者には劇的で持続的な病勢回復をもたらすが、再発卵巣がんにおける奏効率は低いままである。卵巣明細胞がん(OCCC)の患者では有効性が高いことを示唆するデータも出てきているが、効果が得られる患者はごく少数である。

Amir Jazaeri医師が主導する進行中の臨床試験からの後ろ向きおよび前向きの予備データを用いて、研究チームは、抗CTLA-4および抗PD1/L1 ICIによる治療を受けたプラチナ抵抗性の再発卵巣明細胞がん患者28人を対象に、長期生存に関連するバイオマーカーを調査した。患者において最も多くみられた変異遺伝子は、ARID1A(72%)、PIK3CA(57%)、PPP2R1A(25%)であった。

PPP2R1Aホットスポット変異を有する患者は、その変異がない患者に比べ、有意に長い全生存期間(OS)を達成した。PPP2R1Aホットスポット不活性化変異を有する患者7人では全生存期間中央値に達しなかったが、PPP2R1Aホットスポット不活性化変異のない卵巣明細胞がん患者21人では全生存期間中央値6.4カ月を達成した。数人の患者が、最初の進行後に長期の安定した病勢を達成し、より長い生存期間に達したことは注目に値する。さらに、PPP2R1A変異は、より重篤なグレード3以上の免疫関連有害事象と関連していた。

これまでの研究で、ARID1Aの変異は卵巣明細胞がんの症例の50%以上に認められ、魅力的な治療標的となる可能性が示されているが、本研究の予備データから、PPP2R1A変異が、免疫チェックポイント阻害薬による長期生存に関するより良いバイオマーカーとなる可能性が示唆された。因果関係を確認するために研究者らは現在研究を進めている。

翻訳担当者 福原真吾

監修 喜多川亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)、久保谷託也(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

子宮がんに関連する記事

リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まるの画像

リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まる

私たちの資金援助により、オックスフォード大学の研究者らは、リンチ症候群の人々のがんを予防するワクチンの研究を始めている。

リンチ症候群は、家族で遺伝するまれな遺伝的疾患で、大腸がん、子宮...
一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益の画像

一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益

ESMO 2024で報告された研究により、現在の標準治療に免疫療法を追加することで臨床的に意味のある利益が得られる早期の子宮体がん(子宮内膜がん)(1)および子宮頸がん(2)の新たな患...
子宮内膜がんに対する免疫療法薬(イミフィンジ、キイトルーダ、Jemperli)の選択肢が増えるの画像

子宮内膜がんに対する免疫療法薬(イミフィンジ、キイトルーダ、Jemperli)の選択肢が増える

食品医薬品局(FDA)は、進行子宮内膜がん患者に対する3つの免疫療法薬を新たに承認した。承認されたのは免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤である。

6月14日に発表された1つ...
子宮頸がん検診のHPV検査は、現行ガイドライン推奨よりも長間隔で安全の画像

子宮頸がん検診のHPV検査は、現行ガイドライン推奨よりも長間隔で安全

HPV検診で陰性の場合、推奨されている5年後ではなく、8年後の検査でも、標準的な細胞診検診と同程度であることが判明した。ヒトパピローマウイルス(HPV)検診の陰性判定から8年後...