アベマシクリブ+レトロゾール併用療法がER陽性子宮体がんに有効

最近の臨床試験の結果から、エストロゲン受容体(ER)陽性の再発あるいは難治性子宮体がん患者の75%で、がん細胞を内外から標的とする併用療法により、腫瘍が縮小または安定化したことが明らかになった。ダナファーバーがん研究所の臨床試験責任者が、3月19日から開催される婦人科腫瘍学会(SGO)年次総会で、この結果を発表する。

第2相試験では、エストロゲンによって腫瘍が増殖するER陽性の再発子宮体がん患者30人を対象に、標的薬であるアベマシクリブ(販売名:ベージニオ)とアロマターゼ阻害薬であるレトロゾールの併用療法を評価した。患者は過去に中央値で3ラインの治療を受けており、そのうち約半数はホルモン療法を受けていた。

中央値12.5カ月の追跡調査で、患者の75%は腫瘍が縮小あるいは安定化した。また、患者の約30%では、腫瘍が30%以上縮小した。その効果は持続的で、病気が悪化し始めるまでの期間の中央値は9.1カ月だった。

2剤併用のレジメンはほとんどの患者で良好な忍容性が得られ、毒性による副作用で試験から離脱したのは2人だけだった。一部の患者はこの治療の効果が持続し、1年以上試験を継続した。2人は2年以上続けている。

「このレジメンの有効性を子宮体がんに対する他の内分泌療法と比較すると、レトロゾールとアベマシクリブの組み合わせは極めて有望であることがわかります」「私たちの知見は、このレジメンが、腫瘍がエストロゲン受容体を発現している再発子宮体がん患者に対する非常に有効な代替内分泌療法となることを示唆しています」と本試験の筆頭著者であり、SGOでこの結果を発表する予定の、ダナファーバーのPanagiotis Konstantinopoulos医学博士は述べた。

子宮内膜に発生する子宮体がんは、世界で6番目に多いがんであり、毎年40万人以上の女性が診断されている。その大部分はER陽性である。

内分泌療法は、化学療法や免疫療法後にがんが増殖し始めた患者や、がんの進行が遅く比較的症状が穏やかな患者に対して、腫瘍細胞に到達するエストロゲンの量を減らそうとするもので、選択肢の一つとなっている。このような治療法の効果はかなり低く、持続期間が短い傾向があるため、研究者はその効果を高める方法を探っている。

レトロゾールは、脂肪組織に存在する酵素が特定のホルモンをエストロゲンに変換するのを阻害することにより、エストロゲンレベル全体を低下させる。アベマシクリブは、細胞増殖に重要な役割を果たすCDK4およびCDK6タンパクを阻害する。これらの薬剤を併用することで、ER陽性の子宮体がん細胞に対して、増殖の仕組みの鍵となる歯車を取り除くと同時に、エストロゲンの利用可能性を低下させるという2方面からの攻撃が可能となる。

患者の腫瘍組織を分析した結果、腫瘍のグレード(顕微鏡で見た細胞の異常の程度)、ホルモン療法による治療歴、腫瘍細胞上のプロゲステロン受容体の有無にかかわらず、このレジメンに対する反応が認められた。KRAS、CTNNB1、CDK2NA遺伝子に変異を有する腫瘍細胞を持つすべての患者に治療効果が認められたが、TP53遺伝子に変異を有する腫瘍細胞を持つ患者では、治療効果が認められにくかった。

「今回の知見に基づき、レトロゾールとアベマシクリブの併用療法は、再発ER陽性子宮体がん患者を対象に、さらに評価する価値があると考えます」とKonstantinopoulos 博士は述べた。

翻訳担当者 白鳥 理枝

監修 尾崎 由記範(乳腺内科/がん研究会有明病院 乳腺センター )

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