免疫療法薬ペムブロリズマブは再発、持続性、または転移性子宮頸がん患者の生存を改善

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2021プレスリリース

標準一次治療に免疫療法を追加することにより再発性、持続性または転移性子宮頸がん患者の生存期間が8カ月延長された[1]。このKEYNOTE-826試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会2021で発表された。

子宮頸がんは世界的な問題であり、2020年には60万人以上の新規患者が発生し、約34万人が死亡した[2]。15歳から44歳の女性では、2番目に頻度の高いがんであり、がんによる死亡原因の2番目でもある。

今日報告された結果に対して、ナバラ大学病院(スペイン、マドリッド)のがんセンター長であるAntonio González-Martín医学博士は次のように述べた。「持続性、再発性または転移性子宮頸がん患者は全生存期間が12カ月以下という悲惨な予後にこれまで苦しんできました。KEYNOTE-826試験は、この対象患者の全生存期間における非常に意味のある延長を示す画期的な試験であり、免疫療法を一次治療に組み込むことで疾患の経過を変えられることを初めて示したものです」。

本試験では女性617人を免疫療法ぺムブロリズマブ(キイトルーダ)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。両群には化学療法薬(パクリタキセルおよび、医師がシスプラチンまたはカルボプラチンどちらかを選択)も投与し、主治医の裁量でベバシズマブ(アバスチン)を投与することもできた。ぺムブロリズマブを追加することにより死亡リスクが33%低下し、疾患進行または死亡の可能性が35%低下した。もっとも一般的な副作用は貧血(ぺムブロリズマブ群30.3%に対して、プラセボ群26.9%)、および白血球濃度の低下(ぺムブロリズマブ群12.4%に対して、プラセボ群9.7%)であった。

論文著者であり、欧州がん研究所 (イタリア、ミラノ)婦人科プログラム長であるNicoletta Colombo教授は語った。「これまでの研究では化学療法に血管新生阻害薬であるベバシズマブを追加することで、化学療法のみの場合に比べて生存期間が3.7カ月延長しました。KEYNOTE-826は、ベバシズマブを併用する、または併用しない化学療法へのPD-1阻害薬追加を検討した初めての試験であり、免疫調整に関与するタンパク質であるPD-L1の発現にかかわらず生存期間および疾患進行に効果が認められました。この併用療法による副作用は管理可能であり、認められた有害事象は個々の薬剤のこれまでのデータに基づき予想されたものでした」。

この新たな併用治療の効果は、ベバシズマブを投与した患者およびベバシズマブを投与しなかった患者にみられたと、Colombo氏は指摘した。しかし、彼女は次のように追加した。「本試験はこれらサブグルーブ間の転帰を統計学的に比較するようにデザインされていません。ベバシズマブ治療は無作為化されず、医師の裁量に任されていたからです。再発性、持続性または転移性子宮頸がんの一般的な合併症の中には、本剤の使用を禁忌とするものがあります。本試験での患者63%にベバシズマブが投与されていました。安全である場合には、ベバシズマブをペムブロリズマブと併用すべきであると本試験は示しています。ベバシズマブを投与できない患者には化学療法単独にペムブロリズマブを追加しても、臨床的に意味のある効果が得られます」。

González-Martín氏は「これは臨床を変える研究です」と強調した。「全生存期間の延長という点で非常に確かなデータが得られたので、この併用療法は、持続性、再発性、または転移性子宮頸がんの女性に対する新しい標準治療と考えるべきでしょう。この免疫療法のバックボーンとなる全身療法(パクリタキセル+シスプラチンまたはカルボプラチン、ベバシズマブの併用または非併用)は、現実の世界における標準治療選択肢を反映しており、この結果は容易に適応可能です。起こりえる限界の一つとしては、資源の乏しい医療システムの現場でこの革新的な技術をどのように採用するかということでしょう」と同氏は述べている。

これらの知見によって多くの患者を助けることができる一方、González-Martín氏は次のように指摘した。「最大の課題の一つは、新しい治療法に適切な集団を選択すること、あるいは少なくとも最も効果を得られそうな患者を選択することです。PD-L1は潜在的なバイオマーカーかもしれませんが、他のバイオマーカーも必要です」。

研究者らの次のステップはより早期の子宮頸がんの患者に対する免疫療法の効果を評価することであるとの点で、Colombo 氏とGonzález-Martín氏は意見が一致している。局所進行子宮頸がん女性患者において標準化学放射線療法に免疫療法を追加する現在進行中の試験には、CALLA試験およびKEYNOTE-A18/ENGOT-cx11/GOG-3047試験がある。

【参考文献】

  1. LBA2_PR ‘Pembrolizumab plus chemotherapy versus placebo plus chemotherapy for persistent, recurrent, or metastatic cervical cancer: randomized, double-blind, phase 3 KEYNOTE-826 study‘ will be presented by Nicoletta Colombo during Presidential Symposium 1 on Saturday, 18 September, 15:05 to 16:35 (CEST) on Channel 1. Annals of Oncology, Volume 32, 2021 Supplement 5
  2. Globocan 2020.

翻訳担当者 有田香名美

監修 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)

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原文掲載日 

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