子宮体がんの術後放射線療法は省略可能か

子宮体がん患者の中には、5年以内に再発するリスクを増加させることなく、通常よりも強度の弱い治療で済む患者集団があることがランダム化臨床試験の結果で明らかになった。

米国国立がん研究所(NCI)の資金提供を受けた本研究では、術後に化学療法のみを受けた局所進行子宮体がん患者は、術後に化学療法と放射線療法を併用(化学放射線療法)した患者と比較して、5年以内にがんが再発する確率が同程度であることが示された。

この試験には、子宮がんの中で一般的なタイプである子宮体がん患者で、初回治療に子宮摘出術を受けた700人以上の患者が参加した。患者は、化学放射線療法群または化学療法単独群に無作為に割り付けられた。追跡期間の中央値は47カ月であった。

治療開始から5年後の無再発生存率は、化学放射線療法群で59%、化学療法単独群で58%であり、両群間でほぼ同等であった。本結果は、6月13日のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された。

「肝心なのは、無再発生存率の点で、化学療法単独は、放射線治療+化学療法併用と同程度に優れていたということだ」と、研究責任者のひとりであるワシントン大学医学部のDavid Mutch医師は述べた。

「この結果は、どちらの治療アプローチも合理的であることを幅広いレベルで教えてくれている」と、本研究には関与していない米国国立がん研究所(NCI)のがん治療・診断部門、婦人科がん治療領域の責任者であるElise Kohn医師は述べた。

しかし彼女は、本研究で、治療グループ間での再発パターンの微妙な違いも明らかになったことに注目した。これらの結果は、医師が子宮体がん患者に対して、より個別化された治療法を開発するのに役立つ可能性がある。

たとえば、骨盤内再発のリスクが高い患者は、化学療法+放射線治療の併用療法を受ける候補者になるだろうとKohn医師は述べた。

局所進行子宮体がんの治療

子宮体がんのほとんどの症例は早期に診断され、外科手術で治療可能である。局所的な進行(すなわち、ステージ3-4a)とは、がんが子宮外に広がっているが、肺や肝臓などの他の臓器には転移していない状態である。

「骨盤領域および全身の他の部位で再発するリスクがあるため、このような患者群に焦点を当てた」と、研究を主導したノースウェスタン大学医学部のDaniela Matei医師は述べた。

局所進行子宮体がんに対する術後の骨盤領域または腹部全体への放射線照射は、これらの領域での再発リスクを減らすことができる。しかし、放射線治療は化学療法ほど、全身の遠隔転移のリスク軽減には効果的ではない。

化学療法と放射線治療の併用は、骨盤領域と全身の他の部位、両方での再発を防ぐのに役立つという仮説が立てられており、実際に多くの患者が術後に化学放射線療法を受けている。しかし、局所進行子宮体がん患者を対象とした2つの治療アプローチを比較した大規模なランダム化第3相試験は、今まで実施されていなかった。

「本臨床試験は、化学放射線療法が化学療法単独よりも優れているかどうかの問いに答えるように設計された」と、Matei医師は述べた。彼女は、研究結果が化学放射線療法優位を予想していた。

研究結果

治療アプローチを比較するため、Matei医師らの研究チームは、米国およびその他の国で局所進行子宮体がんの患者736人を登録した。

化学放射線療法群では、骨盤領域の再発は、化学療法単独群よりも低く、骨盤領域以外の部位に再発しやすいという結果であった。

具体的に示すと、骨盤領域の5年再発率は、化学療法単独群よりも化学放射線療法群で低かった(膣再発:2%対7%、骨盤内および周囲リンパ節再発:11%対20%)。しかし、全身の他の部位での再発率は、化学放射線療法の方が高かった(27%対21%)。

全般に、どちらの治療群においても患者は同程度の忍容性を示した。また、患者が回答した調査によると、治療群間でQOLスコアに大きな違いはなかったとKohn医師は言及した。

急性の副作用は、化学療法単独群よりも化学放射線療法群で多く発生したが、ほとんどは軽度であり、治療を中止した場合に可逆的であった。

「慢性の副作用には下痢、リンパ浮腫、筋骨格系イベントがあり、化学放射線療法群でより多くみられた」と研究者らは発表している。

放射線治療の累積効果は、下部消化管の刺激を引き起こし、下痢を引き起こす可能性があるとKohn医師は説明した。患者が受ける放射線治療の種類によっては、瘢痕組織が発生するリスクもある。

Kohn医師は、一部の患者にとって、放射線治療を受けるために毎日治療施設に通うことは大きな負担になるかもしれず、実施可能な治療法について医師と患者が議論する際に考慮するべきポイントになるだろうと付け加えた。

患者に最適な治療法を見つける

Matei医師は、学術集会で発表された研究結果が、すでに腫瘍医の間で議論の対象となっていると述べた。

「試験結果を受けて、一部の施設では、化学療法単独に重点を置くようになり、局所進行子宮体がんの治療方針が根本的に変更された」とMatei医師は述べた。

「ある別の医師は併用療法に重きを置いており、試験でも明らかであった放射線による局所再発の予防は、追加費用と慢性毒性のリスク増加があっても、実施する価値があると考えている」と彼女は述べた。

「また別の医師は、患者の骨盤領域や全身の他の部位での再発リスクを推定し、個別のアプローチを行うことを支持している」と続けた。

局所進行子宮体がん患者に対する最適な治療法を確立するには、さらなる研究が必要であるとMutch医師は述べた。

「子宮体がん患者の腫瘍の分子の違いを理解し、可能であれば、これらの腫瘍に特有の異常を標的とした治療が必要である」と彼は付け加えた。

翻訳担当者 河合加奈

監修 河村光栄(放射線科/京都医療センター)

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