高悪性度子宮体がんサブタイプの発生率が上昇

米国立衛生研究所の一部である米国立がん研究所(NCI)の研究による新しい知見から、米国内での子宮体がん高悪性度サブタイプの発生率が、2000年~2015年に30~79歳女性の間で急速に上昇していることがわかった。この知見では、サブタイプやがんのステージに関わらず、非ヒスパニック系黒人女性の間では他の人種や民族の女性より高悪性度サブタイプの発生率が高く生存率が低いなど、人種間の相違も明らかにしている。  

2019年5月22日付のClinical Oncology誌に掲載された本研究は、NCIのデータベース(SEER)の人口データを用い、全女性を対象に、人種や民族、地理的地域、組織学的サブタイプ(顕微鏡下での腫瘍組織の見え方により区分したサブタイプ)による子宮がん発生率の傾向を調査した。子宮がん発生率の評価において、子宮摘出した女性は、もはや子宮がんの発生リスクはないため、著者らは医療行為とリスクファクターとのサーベイランスシステムのデータを用いて、子宮摘出の有病率を修正した。これまでの多くの子宮がん発生率に関する研究は、このような修正は行っていない。

「子宮がんの発生率は上昇し続けています。また、非ヒスパニック系黒人女性に認められる相違と共に、発生率や生存率には人種による違いがあることがこれまでも報告されています」と本研究の筆頭著者でありNCIがん疫学遺伝学部門博士研究員のMegan Clarke博士は述べた。「子宮摘出を修正している最近の研究はほとんどありませんが、子宮摘出の既往は人種や民族的背景または地域により変わる可能性があります。このような修正を行うことで、人種や民族的背景による比率と同様に、全発生率におけるより正確な傾向を描出することができます」。 

本研究で、子宮摘出修正子宮がん発生率は、2003年~2015年の間に全体で1年に1%上昇していることがわかった。発生率は、白人女性よりも他の人種/民族女性の間でより速く上昇した。2007年には、黒人女性の子宮がん発生率は白人女性を上回り、2011年~2015年の間も変わらず高かった。

研究者らはさらに、子宮がんの類内膜がんおよび非類内膜がんのサブタイプのデータを分けて調べた。非類内膜がんのサブタイプと比較して類内膜がんのサブタイプが多くみられ、一般的に予後や生存率が良く、ホルモン分泌に関するリスクファクターや肥満と強い関連がある。欠けている組織学的情報を考慮した新しい手法を用いて、サブタイプ特有の発生率の推定値を改善しようとした。

類内膜がんサブタイプの発生率は全研究期間にわたり非ヒスパニック系白人女性では変化はなく、他の人種/民族では上昇していた。それに比べて進行が早い非類内膜がんサブタイプの発生率は、全ての人種/民族において時間と共に劇的 に上昇している(2000年から2015年に全体で年間2.9%の上昇)。研究者らはまた、白人女性(全研究期間にわたり10万人当たり11.4人)、ヒスパニック系女性(同10.1人)、アジア/ポリネシア系女性(同7.5人)と比べ、黒人女性(同25.9人)で進行が早い非類内膜がんのサブタイプがかなり高率であることも確認した。

さらに、5年生存率は類内膜がんサブタイプよりも非類内膜がんサブタイプである女性のほうが低いこと、そして黒人女性は診断時および組織学的サブタイプの各進行期に応じて生存率が最も低いこともわかった。

「黒人女性の子宮がん発生率は白人女性を上回っており、黒人女性に非類内膜がんサブタイプの発生率は高く、すべての子宮がん女性の中で黒人の生存率が低いといったこれらすべての傾向は非常に心配なことです」とClarke博士は述べた。「私たちはこのような人種による差異をさらに理解し、リスクを予測して予防に向けたより良い取り組みの手助けとなるように研究を続ける必要があります」。

本研究の重要なメッセージの1つは、これらの進行の早い非類内膜がんは全ての女性で増加していることだと述べた。同博士は、このがんは類内膜がんサブタイプよりもまれであり、あまり知られていないためであると説明した。重要な次のステップは、すべての子宮がんのリスクの予測や早期検出を向上させるために、これらのサブタイプの根本的な原因の研究を実施することである。

非類内膜がんサブタイプ発生の増加は、肥満者数の増加やホルモン補充療法使用数の変化では説明できないようである。これらの要因は類内膜がんサブタイプとより強く関係しているが、全研究期間にわたり肥満やホルモン補充療法の割合は大きく変化しなかったと説明した。

「もし非類内膜がんサブタイプの発生率の上昇が主に肥満と関連していたら、類内膜がんサブタイプに関する白人女性の安定した傾向は認められなかったでしょう。肥満は類内膜がんサブタイプに関連する強力なリスクファクターです。しかし、私たちの研究は、子宮がん発生増加を誘導する別のファクターが存在することを示唆しており、さらに研究が必要です」と話した。

翻訳担当者 白鳥 理枝

監修 喜多川 亮(産婦人科/東北医科薬科大学病院)

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