健康な女性では10年ごとの子宮頸がん検診(HPV検査)は安全

「子宮頸がん検診の間隔を『10年に延長可能』」とガーディアン紙が報じている。

子宮頸がんの主な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)検査が陰性の女性は、10年に1回の検診で問題がないことが、オランダで行われた試験で示された。

現在、英国を含む複数の国が、子宮頸がん検診の一環としてHPV検査を実施する取り組みを進めている。

研究では、HPVが陰性の女性において、子宮頸がんおよび異常細胞の長期発生率が低いことが明らかになった。

研究者らは約14年間で40,000人以上の女性を追跡調査し、HPVに基づく子宮頸がん検診プログラムが子宮頸がん検診の間隔を延長しうるだけの優れたものであるかどうかを評価した。

研究チームは、これらの知見が、HPV陰性と判定された40歳以上の女性で子宮頸がん検診の間隔を5年以上に延長可能であることを意味すると確信している。

現在英国では、25~64歳の女性に対して子宮頸がん検診が行われている。25~49歳の女性は3年ごと、50~64歳の女性は5年ごとである。

HPV検査はすでにNHSの子宮頸がん検診プログラムに組み込まれている。英国検診委員会は、女性に対してどのくらいの頻度でHPV検査を行うべきか、現在検討を行っているところである。

子宮頸がん検診では異常細胞を特定できるため、がんの発生前に治療を行うことができる。

先月われわれが検討した通り、英国のすべての女性が検診を受けた場合、毎年数百件の死亡を防ぐことができると考えられる。

研究の出典

本試験は、アムステルダム自由大学医療センターロッテルダムエラスムス大学医療センターの研究者らによって行われた。

本試験は、オランダ医療研究開発機構と欧州委員会の支援を受けた。

本試験は、ピアレビューのBritish Medical Journal(BMJ)誌に発表された。

マスコミは試験の主な結果を正確に伝えた。

多くの発信元が、「英国検診委員会は現在、女性がどのくらいの頻度でHPV検査を受けるべきかを決定するため、再調査を行っているところです。再調査の結果に関する協議は来年開始する予定です」という英国公衆衛生庁のAnne Mackie氏の言葉を引用した。

デイリー・メール紙はその序文で、「女性は近い将来、頻回のパップテスト(子宮頸部細胞診)の苦痛から解放されるだろう」と述べた。これらの重要な検査に対してデイリーメール紙がとった態度については批判もあるであろう。

パップテストは一部の女性にとって多少不快なものであるが、非常に重要な検査でもある。

研究の種類

本試験は、POBASCAM試験の長期経過観察の結果を示した。POBASCAM試験は、子宮頸がん検診のHPV検査に関する集団ベースのランダム化比較試験(RCT)である。

本試験の目的は、HPV検査と細胞診を組み合わせた子宮頸がん検診プログラムの検診間隔を5年以上に延長することのリスクを評価することであった。

この試験は、こういったリスクを評価する方法として最良である。その理由は、母集団をランダム化し、偶然の結果が生じる可能性が低いと考えられるからである。

研究内容

1999年1月から2002年9月に、29~61歳のオランダ人女性に子宮頸がん検診プログラムへの参加を呼びかけた。

参加者の半数を無作為に介入群に割り付け、HPV検査と通常の頸部細胞診を行った。

対照群として設定された残りの半数を、細胞診とHPV検査に割り付けた。HPV検査の結果は研究者のみ入手可能で、参加者および主治医は入手できなかった。

介入群

・HPV検査と細胞診の結果が陰性の女性に、5年ごとの定期検診を勧めた。

・HPV陽性で細胞診が陰性または悪性と良性の境界病変のある女性に、6カ月後と18カ月後の再検査を勧めた。その後も細胞診の結果がHPV陽性、または中等度以上の異形成のある女性には、コルポスコピーを勧めた。コルポスコピーにより、医師は子宮頸管をより詳しく検査することができる。

・細胞診により中等度以上の異形成が認められた女性に、コルポスコピーを勧めた。

対照群

・細胞診が陰性であった女性に、5年ごとの定期検診を勧めた。

・細胞診により悪性と良性の境界病変、または軽度の異形成が認められた女性には、6カ月後と18カ月後の再検査を勧めた。その後も悪性と良性の境界病変またはそれ以上の病変が認められた女性に、コルポスコピーを勧めた。

・細胞診により中等度以上の異形成が認められた女性に、コルポスコピーを勧めた。

5年後の2回目の検診で、両群の女性がHPV検査と細胞診を受けた。

初回介入群プロトコルに従い、参加者を両検査の結果に基づいて管理した。

10年後の3回目の検診では、すべての女性を細胞診の結果だけに基づいて管理した。

参加者を14年間追跡調査した。

結果

合計43,339人の女性を試験に登録し、平均年齢は42.8歳であった。

HPV検査によりがんの発生率が低下した。

3回目の検診後にHPV陰性であった介入群の女性の子宮頸がん発生率は、2回目の検診後に細胞診が正常であった対照群の女性の発生率と同等で、0.09%であったことが明らかになった。

3回目の検診後、対照群のこれらの女性における発生率は0.19%まで上昇した。

細胞診が正常でHPV検査が陽性であった女性は、介入群でがんのリスクが71%低下したが、信頼区間が広く、本結果の信頼性は低い(率比 0.29、 95%信頼区間 0.10〜0.87)。

異常細胞が子宮頸部を覆う膜の全層に影響を及ぼすCIN3+の発生率も介入群で低かった。

HPV陰性の介入群の女性は、3回目の検診後の発生率が0.56%であったのに対し、細胞診が正常の対照群の女性は1.2%であった。

また、HPV検査のみの検診に比べ、HPV検査に細胞診を追加した場合の価値は限定的であると考える。

結果の解釈

研究チームは、HPVに基づく検診が、細胞診に基づく検診よりも予防に有意に優れると確信している。

彼らは、「本試験コホートにおいて、子宮頸がんおよびCIN3+の長期発生率はHPV陰性の女性で低く、40歳以上の女性で子宮頸がん検診の間隔を5年以上に延長可能であることを裏づけている」と結論した。

結論

POBASCAMランダム化比較試験に参加した女性を長期間追跡した本試験は、HPVに基づく子宮頸がん検診プログラムの検診間隔を5年以上に延長する際のリスクを評価することが目的であった。

試験では、HPV陰性の女性で子宮頸がんおよび異常細胞の長期発生率が低いことが明らかになった。

研究チームは、これらの知見が、40歳以上の女性で子宮頸がん検診の間隔を5年以上に延長可能であることを意味すると確信している。

本試験は適切にデザインされ、また多くの女性を登録し、脱落率も試験群間で同等であった。

しかし試験には多くの限界があり、研究チームは以下のことを認識している。

・子宮頸がんと異常細胞の発生率の推定は、全国規模の病理組織学的データベースを用いて行われた。

女性がコルポスコピーの勧めを拒否したことによってどのくらいの症例が見落とされたかについては、評価できなかった。

・現場の病理医による診断に一定の誤分類リスクが存在する。

・3回目の検診でHPV検査が陰性だった後の介入群のリスクを、2回目の検診で細胞診が陰性だった後の対照群のリスクと比較するため、登録後それぞれ14年間および9年間、発見されたすべてのがんを解析した。

これらの追跡調査の回数は、10年目と5年目の目標を定めた検診の回数よりも多かった。

現在のところ、英国では25~64歳の女性に対して子宮頸がん検診が行われている。

女性には、主治医を通して文書で参加を呼びかけている。検診は25~49歳の女性で3年ごと、50~64歳の女性で5年ごとである。

HPV検査はすでに、NHSの子宮頸がん検診プログラムに組み込まれている。

仮に今後、英国の一部の低リスク女性の検診間隔を延長するのであれば、英国内で新たなパイロットスタディが必要となるであろう。

当面、女性らは検診については現行の推奨に従うべきである。

翻訳担当者 工藤章子

監修 斎藤博(検診研究部/国立がん研究センタ−)

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