CDCがHPVワクチン接種の推奨を更新
15歳未満の思春期においては、6カ月以上の間隔をおくヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)ワクチン接種は3回でなく2回で十分であることを、米国疾病予防管理センター(the U.S. Centers for Disease Control and Prevention:CDC)と米国予防接種諮問委員会(the Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)は新たな推奨で示した。
HPVワクチン連続接種を受け始める15~26歳の10代および若年成人ならびに免疫機構が低下した人は、HPV感染関連がんを予防するために現時点でも3回接種を受けるべきである、とCDCおよびACIPは述べた。
10月19日、CDCは新たな推奨を公表した。
この新たな推奨は、最近の臨床試験から得られたデータを精査したことに基づく。なお、この臨床試験では、若年思春期に対するHPVワクチン2回接種が、成人女性で有効性が示された3回接種による免疫反応と同等以上の免疫反応をもたらしたことが明らかにされている。
「この新たな推奨は米国におけるHPVワクチン接種率向上への大きな一歩です」とAimée Kreimer博士(NCIがん疫学・ゲノミクス部門)は述べた。
「HPVワクチンを3回接種するためには、ある程度の費用負担および不便さが付きまとうため、予防効果を犠牲にすることなく、こうした障壁を下げることができる方法は何でも改良点になります。思春期の若者がより少ない介入(2回接種)によって必要な予防効果を得るのであれば、これは公衆衛生の勝利になります」。
向上の余地
特定の型のHPVは、実質的に全ての子宮頸がんの原因となり、かつ、肛門がん、中咽頭がん、膣がん、外陰がん、および陰茎がんを含む多くの他のがんの原因になる可能性があります。
米国では、HPVワクチンの定期接種が11~12歳の小児、HPVワクチン接種歴がない26歳までの女性および21歳までの男性、ならびに男性と性交している26歳までの男性に対して、推奨されている。
しかし、最近のCDCによる分析から、米国で2015年にHPVワクチン連続接種を受け始めたのは、13~17歳の女児の約63%および男児の50%だけであることが明らかとなった。その分析によると、HPVワクチン接種率(HPVワクチン接種歴が1回以上あることと定義される)は、2014年から2015年にかけて男児では著しく向上した(8.1%)が、女児ではわずかにしか向上しなかった(2.8%)。
接種率が向上したとは言え、HPVワクチン接種率は、11~12歳の男児および女児に定期接種される他のワクチン(Tdapという破傷風、ジフテリア、および百日咳の混合ワクチンなど)の接種率と比較して著しく低いままである。
研究に基づく推奨
ACIPは医療や公衆衛生の専門家から成り、米国におけるエビデンスに基づくワクチンに関する推奨を作成している。ACIPによる推奨はCDC所長の承認を受けたのち、CDCによる公式ガイドラインとして公表される。
「この数年間で、3回未満のHPVワクチン接種による抗体価は、成人女性で有効性が示された3回接種によるものと比較して有意差が認められなかったことがランダム化臨床試験から示されています」とKreimer氏(NCIにおけるACIPとの連絡担当者)は述べた。抗体価は免疫反応の指標として使用される。
思春期では特にHPVワクチンの2回接種だけでも強力な免疫反応が得られるとKreimer氏は言い添えた。HPVワクチンの2回接種を受けた思春期の抗体価は、3回接種を受けた10代後半および若年女性のものと同等以上であった。
CDCおよびACIPは、若年者に対してのみHPVワクチンの2回接種を推奨している。その理由は、現在まで報告されたランダム化臨床試験から、より高年齢の者に対してはHPVワクチン2回接種の効果が認められなかったためである。
HPVワクチンの2回接種を6カ月以上の間隔をおいて、理想的には12カ月以内に受けるようCDCおよびACIPは推奨している。CDCは、医療従事者、保護者、および保険業者向けのより詳細なHPVワクチン接種ガイドラインを公表する予定である。
この新たな推奨は、10月7日における米国食品医薬品局(the Food and Drug Administration:FDA)による9~14歳の男児および女児に対するHPVワクチン ガーダシル9 の2回接種が承認されたことに付随した。ガーダシル9は7種類の発がん性HPVおよび2種類の性器いぼを引き起こすHPVの計9種類のHPVによる感染を予防する。
このFDAによる承認は、ガーダシル9の製造企業であるメルク社(北米以外ではMSD社)による資金提供を受けた臨床試験の結果に基づいた。この臨床試験から、9~14歳の男児および女児に対するガーダシル9の2回接種は16~26歳の女性に対する3回接種による免疫反応と同等以上の反応をもたらすことが示された。
CDCによる声明は特定のHPVワクチンを明記していないとはいえ、10月31日以降は、メルク社(MSD社)は旧型の4価ワクチンであるガーダシル(4種類のHPV型による感染を予防する)を米国で販売していない。また、グラクソ・スミスクライン社(2種類の高リスク型HPVを予防するHPVワクチンであるサーバリックスの製造企業)は10月に米国でサーバリックスの販売中止を発表した。
「HPVワクチン接種は、他の予防法が有効ではない男性および女性において多様ながんを予防します」とKreimer氏は述べた。「HPVワクチンは非常に安全なワクチンで、これによる公衆衛生の利益は明快です」。
参考文献
HPVワクチン接種率低迷の「危機」― Noel Brewer博士との対談(日本語訳)
【図の解説】
HPVワクチン接種率向上が命を救うことに役立つ。
HPVワクチンを1回以上接種されている思春期女児の割合*
国内では10人中6人。女児は連続接種を受け始めている。
国内接種率:63%
州ごとの接種率:
59%以下:薄い紫
60~64%:やや薄い紫
65~69%:やや濃い紫
70%以上:濃い紫
HPVワクチンを1回以上接種されている思春期男児の割合*
国内では10人中5人。男児は連続接種を受け始めている。
国内接種率:50%
州ごとの接種率:
39%以下:薄い青
40~49%:やや薄い青
50~59%:やや濃い青
60%以上:濃い青
* 13~17歳の思春期における1回以上のヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)ワクチン推定接種率[出典:National Immunization Survey-Teen, United States(全米予防接種調査―10代)、2015]
HPVワクチン接種は数種類のがんを予防する最善の方法である。しかし、思春期の若者の多くは未だにワクチン連続接種を受け始めていない。
出典:cdc.gov/hpv
出典:週刊疾病率死亡率報告2016年08月26日号
cancer.gov
原文掲載日
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