検診は子宮頸がんで死亡する女性を救う

   

「対象者全員が検診に行っていれば、何百人もの子宮頸がん患者の命が助かっていた可能性があると」BBCニュースが報じた。

解析の結果、子宮頸がん検診の対象の女性全員が検診を受診した場合、子宮頸がんによる死亡を回避できる人が年間347人増加すると推定された。

子宮頸がんによる死亡を防ぐため、NHS子宮頸部検診プログラム(NHS Cervical Screening Programme)が始まり、25~64歳までの女性に(年齢により3~4年毎に)定期検診を受けるよう働きかけている。

この解析では、子宮頸がんと診断されたイングランドの女性11,000人の検診歴の調査が行われ、がん患者でない群との照合が行われた。研究の目的は、検診が診断と子宮頸がんによる死亡に及ぼす潜在的な影響を調査することであった。

検診の導入によりイングランドでは子宮頸がんの数が約3分の2減少していると推定されている。

しかし、検診対象女性の全員が定期的に受診していれば、検診により命が救われた人は347人増加するという、大きな検診効果が得られる可能性があった。子宮頸がんの診断が初期ステージであれば、全治の見込みは良好である。

2009年にリアリティ番組出身のタレント、ジェイド・グッディが亡くなった後、子宮頸がんへの関心が一気に高まったが、今や子宮頸がんの問題は多くの女性たちから注目されなくなっているかもしれない。

この結果から、現時点、検診対象女性全員の理解を促すためになすべきことが多くあることが示唆される。

研究の出典

この研究はWolfson Institute of Preventive Medicine(ウルフソン予防医学研究所) のがん予防センターの研究者により実施され、キャンサー・リサーチUKによる資金提供が行われた。執筆者たちは利益相反がないことを宣言している。

この研究は、ピアレビューの医学雑誌British Journal of Cancerに掲載され、オープンアクセス論文のため、インターネットで無料閲覧が可能である。

この研究は英国メディアが正確に報道しており、ガーディアン紙は、キャンサー・リサーチUKの上級医療情報部長(senior health information officer)のニコラ・スミスのコメントを記載し、子宮頸がん検診は単に若い女性の問題ではないことを指摘している。「年配女性はこの種の検診が自分たちも関係があると思わないかもしれない。が、子宮頸がんは大抵のがんと比べて年齢の若い女性のほうが罹患するという点で通常のがんと異なるものの、年配女性も罹患するのである。」

研究の種類

この研究は集団ベースの症例対照研究であり、検診の受診を、子宮頸がんの診断を受けた女性と、がんでなかった女性との間で比較したものである。

この種の研究は、子宮頸がんに罹患した女性とそうでない女性の過去の行動と活動を比較するものとして最適である。

この研究では、女性たちの、思い出しバイアスの可能性を除去した子宮頸がんか否かの診断の前に記録したデータを用いた。しかし、その他生活習慣の交絡因子が、女性の検診を受ける割合とがんリスクの双方に影響を与える可能性があるため、この種の研究で検診によりがんまたは死亡が回避できると証明することはできない。しかし個人に対する影響よりも集団全体に対する検診の潜在的な可能性を検討するには有用である。

研究内容

研究者らは、子宮頸がんの約90%が参加していると考えられるイングランドの集団ベースの症例対照研究であるAudit of Invasive Cervical Cancers(2006年のNHS子宮頸がん検診プログラム)のデータを使用した。

対象者は、2007年から2013年の間に子宮頸がんと診断された25~79歳までのイングランドの女性である。年齢をマッチさせ比較する群を、子宮頸がんでない女性と子宮摘出をしていない女性の2群を選択した。

検診データはルーチン記録から採取され、1988年以降英国で採取されたNHSの塗抹標本すべてが含まれている。

定期的または非定期的に検診を受けている女性のがん罹患の確率を、過去15年間検診を受けていない女性と比較した。

子宮頸がん診断後5年以内のがんによる死亡が解析された。

結果

合計11,619女性が子宮頸がんと診断された。3分の1以上の女性が35~49歳の間にその診断を受けており、3分の1以上の女性が頸部内にとどまる小さいがん(ステージ1A)と診断を受けていた。

定期的に検診を受けた場合、初期ステージのがんと診断される女性(35~64歳)の確率が67%減少し、骨盤に転移するステージ3の進行がんと診断されるリスクが95%減少した。

検診を受けない場合、25~79歳の女性のがんと診断される数は2倍以上と推定されている(相対リスク[RR]2.53、95%信頼区間[CI]2.39~2.68)。検診対象女性の全員が検診を定期的に受診した場合、がんは約3分の1減少すると思われる(RR 0.66、95%CI 0.64~0.67)。

検診の実施方法を変えると、50~64歳の女性への影響が最も高いと考えられる。検診を受診していない場合のがんの罹患率は約4倍高く(RR 4.15、95%CI 3.63~4.74)、全員が定期的に検診を受診した場合、この年齢群のがんの罹患率は現在の罹患率の半分以下となる(RR 0.48、95%CI 0.46~0.51)。

検診を受けない場合、子宮頸がんによる死亡は以下のとおり。

  • 35~49歳の女性は4倍高い(RR 4.13、95%CI 3.59~75)
  • 50~64歳の女性は5倍高い(RR 5.30、95%CI 4.36~44)

女性が全員定期的に受診した場合の死亡率は以下のとおり。

  • 診断時に35~49歳だった女性は、現在の半分以下(RR 0.42、95%CI 0.38~47)
  • 50~64歳の女性は、3分の2減少(RR 0.35、95%CI 0.33~0.37)

結果の解釈

研究者らは、「検診は(がん診断率と比較して)子宮頸がんによる死亡率に及ぼす影響が大きいことを示し、全員が定期的に検診を受診した場合、現在の検診が70%であるのに対し、子宮頸がんによる死亡の83%が予防できた可能性がある」と結論を出した。

また、「この結果は期待が持てるものであり、女性たちに向けて定期検診を受けるよう、また政策立案者に向けて検診プログラムを実施していない地域へプログラムを組織的に実施するよう推進するために利用すべきである」と述べている。

「25~64歳の間に全員が定期的に検診を受けた場合、死亡を回避できる人数が年間347人増加する」と結論を出した。

結論

子宮頸部検診、子宮頸がん罹患率ならびにがんによる死亡の関連性を調査したこの研究で11,000点以上の記録が解析された。この研究の強みは膨大な数の女性が含まれており、使用されたデータが15年前までさかのぼっていることである。

研究結果は、現在、検診により毎年何千もの子宮頸がんが予防できることを示唆している。また一方では、理解がさらに進み、検診対象女性の全員が定期的に検診を受診した場合、さらにがんが回避でき、人命も救われると考えられる。

この研究は、子宮頸がん検診により対象者と対照群との間にがんの診断または死亡率に差が生じると完全に関連しているとはまだ証明できないと、注意書きをしている。子宮頸がんのリスクと検診を受診する可能性の双方に関係する重要な生活要因があるといえる。

喫煙者の女性は子宮頸がんのリスクが上昇し、また複数のパートナーと避妊をせずに性交渉を行う女性(がんの原因となるHPVウイルスに感染するリスクの上昇)にも同様のことがいえる。このような危険因子を持つ女性のなかには、検診を定期的に受診するなど健康的な生活習慣を送る傾向が低い女性が含まれる可能性がある。

にもかかわらず、子宮頸がん検診プログラムへの理解は改善できたであろうと研究では示唆している。プログラムへの理解を改善するために、医療関係者および政策立案者が25~64歳の女性による理解をさらに推進することができたであろうと考えられる。

子宮頸がん検診の受診をすべきか迷っている、またはいつ受診すべきか分からない場合は、かかりつけの医師に相談すること。

画像キャプション:

女性は、25~64歳の間は定期的に検診を受けるべきである。

翻訳担当者 松長愛美

監修 小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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原文掲載日 

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