子宮内膜がんに対する免疫療法薬(イミフィンジ、キイトルーダ、Jemperli)の選択肢が増える

食品医薬品局(FDA)は、進行子宮内膜がん患者に対する3つの免疫療法薬を新たに承認した。承認されたのは免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤である。

6月14日に発表された1つ目の承認は、デュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)に対するもので、化学療法と併用し、ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)と呼ばれる特定の遺伝子変化を有する進行子宮内膜がん患者の治療を目的とする。dMMRの腫瘍は特に免疫療法薬が奏効しやすい。

6月17日に発表された2つ目の承認は、化学療法との併用によるペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)で、腫瘍がdMMRであるかどうかは問わない。そして8月1日にFDAは、dMMRの有無にかかわらず進行子宮内膜がん患者を対象として、ドスタリマブ(ジェンペルリ)と化学療法の併用を承認した。ドスタリマブは、dMMRである進行子宮内膜がんに対して2023年に承認されている。

今回の承認により、これらの併用療法を初回治療として、または特定の治療後に再発したがんの治療として使用することができる。

大規模臨床試験において、化学療法にこれらの免疫療法薬を追加することで、無増悪生存期間(がんが大きくならずに生きられる期間)が改善した。

ドスタリマブの承認につながった臨床試験RUBYの最新のデータから、dMMR腫瘍患者の全生存期間を改善することが示され、dMMRではない腫瘍患者でも改善の可能性が示唆された。

「免疫チェックポイント阻害薬を標準化学療法に追加することで、ミスマッチ修復能欠損子宮内膜がん患者の転帰が著しく改善することが3つの臨床試験で強く確認されたことは、大きな前進です」と、NCIがん治療・診断部門のElise Kohn医師は述べた。同医師は同じ適用でのペムブロリズマブ承認につながった試験に携わっていた。

「ミスマッチ修復能欠損の子宮内膜がん患者にとって、免疫チェックポイント阻害薬を標準化学療法に追加することは、どの薬剤を使用するかにかかわらず有益であることを明確に示すデータです」とKohn医師は述べた。

しかし、ほとんどの子宮内膜がん患者の腫瘍はdMMR腫瘍ではないと、デュルバルマブ試験を主導したShannon Westin医師(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)は言う。

また、ペムブロリズマブとドスタリマブはいずれも、ミスマッチ修復機能が正常に保たれている(pMMR)腫瘍の患者において無増悪生存期間を改善することが判明しているが、その改善はdMMR腫瘍の患者ほど「深くはない」とWestin医師は続けた。

このことは、進行したpMMR子宮内膜がんの患者にいずれかの薬剤を使用する決断が、それほど単純にはいかないことを意味するとWestin医師は説明し、これらの薬剤の一つの使用に最も適しているpMMR腫瘍患者を選定する方法を求めて研究が行われていると述べた。

長い治療期間、長い抗腫瘍効果

子宮内膜がんが早期に発見された場合、手術のみ、あるいは手術後に放射線療法や化学療法を行うことで治癒することが多い。しかし、初回治療後に転移または再発した子宮内膜がん患者の予後は不良である。

FDAは、初回化学療法後に悪化した進行dMMR子宮内膜がん患者に対するペムブロリズマブとドスタリマブの単剤投与をすでに承認している。この承認は、両薬剤が無増悪生存期間を改善した臨床試験に基づいている。

これらの良好な結果から、進行子宮内膜がん患者の初期治療の一環としてこれらの薬剤が試験されるようになった。

デュルバルマブ試験はDUO-Eと呼ばれ、この薬剤の製造元であるAstraZeneca社が資金を提供し、700人以上の進行子宮内膜がん患者が登録された。ペムブロリズマブ試験はNRG-GY018と呼ばれ、NCIとこの薬剤を製造するMerck社が資金を提供し、800人以上が登録された。

これら2つの試験では、参加者は免疫療法薬と化学療法を6カ月間併用する群と化学療法のみを行う群に無作為に割り付けられた。3つの各試験で免疫療法薬に割り付けられた患者に対して、NRG-GY018では最長2年間、RUBYでは最長3年間、DUO-Eでは免疫療法薬ががんを抑制する限り、免疫療法薬単剤投与を継続した。これら3つの臨床試験にはすべて、dMMR腫瘍患者とpMMR腫瘍患者が含まれていた。

上記試験において、免疫療法薬と化学療法薬を併用したdMMR患者は、化学療法のみの患者よりも無増悪生存期間が大幅に延長した。しかし、これまでのところ、研究者らがどの程度良くなったかを正確に判断できるほど、免疫療法薬群でがんが悪化し始めた人は多くない。

試験で免疫療法薬を受けた参加者の半数以上が1つ以上の重篤な副作用を経験した。最も多かった重篤な副作用は、血球数の減少、疲労、胃腸障害、神経障害であった。

免疫療法薬群では参加者の13%から20%が副作用のために治療を中止した。

免疫療法薬をより多くの子宮内膜がん患者に有効な薬に

進行dMMR子宮内膜がんに対して現在承認されている3つの免疫療法薬を臨床試験で互いに比較することはないだろうとWestin医師は述べた。

「しかし、dMMR(腫瘍)患者にとって、標準化学療法とこれら3つの免疫療法薬のいずれかを併用することが現時点での最良の治療法であると考えています」とKohn医師は述べた。

副作用の違い、保険適用、点滴のための通院頻度などの要因が、個々の患者にどの薬剤を投与するかを選択する上で重要な役割を果たすであろう、とWestin医師は説明した。

子宮内膜がん患者に免疫療法薬をどのように使用するのが最善かについては、重要な疑問が依然としていくつかあるとWestin医師は述べた。1つは、維持療法をどのくらいの期間続けるべきかである。

「ある程度の維持療法が必要であることは明らかです」。しかし、副作用のために長期間の投与が困難な人もいる。また、治療のためには数週間ごとに定期的に通院して点滴を受ける必要があるため、「大きな時間の投資となります」と彼女は続けた。

現在のところ、2年(あるいはそれ以前)で中止することが、がんを永久に抑えるのに十分なのか、あるいは再発リスクを高めることになるのかは不明であるとのことである。

「研究者が直面しているもう一つの喫緊の課題は、pMMR腫瘍の患者において免疫療法薬をより有効に作用させる方法があるかどうかということです」とKohn医師は述べた。

pMMR腫瘍の基礎となる生物学的性質は患者によって異なる可能性がある。pMMR子宮内膜がんにはさまざまなサブグループが存在し、それぞれの治療法は異なると思われる。現在進行中のNRG-GY018参加者の解析では、どのpMMR腫瘍が免疫療法薬に最も感受性があるか、どのような患者を免疫療法薬の適用外とすべきかを示す分子的手がかりを探している、とKohn医師は述べた。

研究者らはまた、免疫チェックポイント阻害薬を、分子標的療法薬など他の治療薬と併用することで、pMMR腫瘍が免疫療法薬に対してより脆弱になるかどうかも調べている、とWestin医師は述べた。

「pMMR群における有効性を改善するために、多くのことが進行中です」。

  • 監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/08/06

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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