オラパリブ+デュルバルマブ追加で化学療法単独よりも子宮体がんの進行リスクが低下 -ESMO2023

MDアンダーソンがんセンター

アブストラクト: LBA41

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによると、抗PD-L1モノクローナル抗体デュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)による免疫療法は、新たに進行または再発の子宮体がん(子宮内膜がん)と診断された患者において、化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善し、維持療法でのPARP阻害薬オラパリブ(販売名:リムパーザ)の追加によりさらなる効果が得られた。本結果は10月21日にJournal of Clinical Oncology誌で発表され、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2023)でも発表された。

第3相DUO-E試験の結果では、デュルバルマブ+化学療法後にデュルバルマブ+オラパリブを追加することで、化学療法単独と比較して病態進行または死亡のリスクが45%減少することが明らかになった。一方で、併用化学療法後にデュルバルマブ単剤を追加した場合、化学療法単独と比較して29%減少することが示された。ミスマッチ修復(MMR)の状態による探索的サブグループ解析では、MMR機能欠損(dMMR)およびMMR機能欠損のない(pMMR)両疾患でPFSの延長が示された。

「進行・再発子宮体がんの場合、一般的にホルモン療法に反応せず化学療法を必要とするため、治療の選択肢は限られています」と包括的な試験責任医師である婦人科腫瘍学・生殖医療学教授のShannon Westin医師は述べている。「これらの知見は、免疫療法とPARP阻害薬を併用することで患者さんに大きな臨床的改善をもたらす可能性を初めて示すものです」。

アメリカがん学会によれば、子宮体がんは女性の生殖器官に発生する頻度の高いがんであり、他の多くのがん種とは異なり発生率は増加傾向にある。進行子宮体がんの5年生存率は20%であり、現在の治療法を使い尽くした後の代替治療の必要性を強調している。

DUO-E試験(GOG-3041/ENGOT-EN10)は、米国、欧州、南米、アジアを含む22カ国の253カ所で実施された。

この試験では、新たにステージIII-IVまたは再発の子宮体がんと診断された患者718人が3つの治療群に無作為に割り付けられた。対照群では、患者は化学療法単独とその後プラセボの維持療法を受けた。第2群ではデュルバルマブと化学療法との併用療法後、維持療法としてデュルバルマブとプラセボの投与を受けた。第3群ではデュルバルマブと化学療法との併用療法後、デュルバルマブとオラパリブの投与を受けた。主要エンドポイントは無増悪生存期間とした。

子宮体がんにおけるミスマッチ修復(MMR)の状態は、正常なDNAミスマッチ修復システムが正しく機能しているかどうかを示す。MMR機能欠損は子宮体がんの20~40%にみられ、治療法の決定や予後に影響を与える可能性がある。免疫療法と化学療法の併用は一部の子宮体がん患者の治療に有効であり、MMR機能欠損のない症例と比較してMMR機能欠損症例ではより顕著な利点が観察されている。

事前に特定したMMR状態別の探索的サブグループ解析では、MMR機能欠損(dMMR)患者で、無増悪生存期間(PFS)を対照群と比較すると、デュルバルマブ群では58%、デュルバルマブ+オラパリブ群では59%改善されることが示された。MMR機能欠損のない(pMMR)サブグループでは、PFSは対照群と比較して、デュルバルマブ群で23%、デュルバルマブ+オラパリブ群で43%改善した。pMMRサブグループでは、デュルバルマブ+化学療法後に維持療法としてオラパリブをデュルバルマブに追加した場合、さらなる臨床的有用性が観察された。

試験を実施した群の安全性プロファイルは、各薬剤の既知の安全性プロファイルと一致していた。試験解析は現在進行中である。全生存期間データはまだ得られていないが、良好な傾向が観察された。

「これらの知見は、子宮体がん患者さんの予後を改善する新たな手段を腫瘍医に提供するかもしれません」とWestin医師は述べた。「私たちはこれらの結果に勇気づけられ、この試験や他の試験から得られた長期データを検討することを楽しみにしています」。

本試験はアストラゼネカ社の支援を受けた。Westin医師はアストラゼネカ社からの研究支援とコンサルティング料を受け取っていることを報告している。共同研究著者および開示情報の一覧は、こちらの抄録を参照のこと。

  • 監訳 東海林洋子(薬学博士)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2023/10/21

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