アフリカ系アメリカ人女性では現在使用されている子宮頸癌予防HPVワクチンの効果が小さい

10月27日~30日の日程で開催中の第12回AACR癌予防研究の最前線国際年次総会(The 12th Annual AACR International Conference on Frontiers in Cancer Prevention Research)で発表された結果によると、パパニコロー(Pap)検査で異常がみとめられたアフリカ系アメリカ人女性では、感染している子宮頸癌ヒトパピローマウイルス(HPV)の型が非ヒスパニッック系白人女性とは異なっており、現在使用されているHPVワクチンは、アフリカ系アメリカ人女性に最も多く検出されるHPV型の感染に対して予防効果がないという。

「私たちが得た知見は、より大規模な女性コホートで再現する必要があるものの、現在子宮頸癌および子宮頸部前癌病変の予防に使用されているHPV 16型および18型を標的としたHPVワクチンが、非ヒスパニック系白人女性と比べ、アフリカ系アメリカ人女性において効果が少ないことを示唆しています」と、ノースカロライナ州ダーラムにあるデューク大学医学部産婦人科部門の准教授、Cathrine Hoyo医学博士兼公衆衛生学修士は述べた。

子宮頸癌は、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)と呼ばれる前癌病変から始まる。すべてとはいえないまでも、ほとんどの場合、子宮頸癌は特定のHPV型の持続感染によって引き起こされ、そのうち最も多いのがHPV 16型および18型である。

「アフリカ系アメリカ人女性では、非ヒスパニック系白人女性と比べて、子宮頸癌の発症率が約20%高く、子宮頸癌による死亡率もほぼ2倍となっています」とHoyo医師は述べた。「アフリカ系アメリカ人女性の進行CIN(CIN 2および3)では、HPV 16型および18型の感染率がはるかに低いことが判明しました。むしろ、HPV 31、35、45、56、58、66および68型の感染が多くみられ、これらのHPV型はすべて子宮頸癌と関連しています」。

現在、九つのHPV型(6、11、16、18、31、33、45、52および58型)を標的としたワクチンの第3相臨床試験が実施されている。Hoyo医師によると、このワクチンは、Hoyo医師のチームがCIN 2および3のアフリカ系アメリカ人女性において感染を特定した子宮頸癌に関連するHPV型のうち、31、45および58型の三つを標的とするよう設計されているため、FDAがすでに承認している2種類のHPVワクチンよりも、アフリカ系アメリカ人女性に多くの利益をもたらす可能性があるという。

「しかし、このワクチンはHPV 35、66および68型を標的に含みません」とHoyo医師は付け加えた。「より多くのアフリカ系アメリカ人女性をこうした臨床試験に組み入れ、この新しいワクチンが彼女たちにどのような利益をもたらすかを確認する必要があります」。

Hoyo医師らは、早期CIN(CIN 1)と進行CIN(CIN 2および3)を区別するマーカーを特定することを目的として、Pap検査で異常がみとめられ、コルポスコピーの実施を予定している女性を子宮頸部上皮内悪性腫瘍コホート試験(CINCS)に登録している。Hoyo医師らは、この試験の一環として、アフリカ系アメリカ人女性280人および非ヒスパニック系白人女性292人からなるCINCS参加者572人のCINに存在するHPV型を評価した。

その結果、CIN 1の非ヒスパニック系白人女性127人に最も多く検出されたHPV型は16、18、31、56、39、66型であり、一方、CIN 1のアフリカ系アメリカ人女性112人では、33、35、58、68型が最も多かった。CIN 2またはCIN 3の女性88人に限定した解析では、非ヒスパニック系白人女性47人に最も多いHPV型が16、18、33、39、59型であったのに対し、アフリカ系アメリカ人女性41人では、31、35、45、56、58、66、68型が最も多かった。

本研究は米国国立衛生研究所および国立癌研究所の資金援助を受けた。Hoyo医師が開示した利益相反はない。

翻訳担当者 原恵美子

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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