子宮体がんにセリネクソール維持療法は無増悪生存期間を延長
米国臨床腫瘍学会(ASCO)
ASCO専門家の見解
「TP53野生型の子宮体がん腫瘍を評価した第3相SIENDO試験のサブセット解析から、パクリタキセルとカルボプラチンの併用療法の後にセリネクソールを使用することは、再発リスクの高い患者の維持療法として有益である可能性が示唆されています。これらの知見が信頼性の高い第3相試験で確認されれば、TP53野生型の腫瘍を有する患者に再発予防の新たな手法が提供されるでしょう」
- Kathleen N. Moore医師、理学修士、ASCO婦人科がん専門家
野生型TP53の進行または再発子宮体がん(子宮内膜がん)患者において、全身療法後にSelinexor[セリネクソール](販売名:XPOVIO)による維持療法を追加すると、無増悪生存期間(PFS)が延長する可能性があることが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの2023年7月のセッションで発表された研究により明らかになった。
著者らによると、進行または再発子宮体がん患者の約半数はTP53野生型*の腫瘍を有し、進行または再発子宮体がん患者のほぼ全員が短期間のうちに再発する。現在、これらの患者に対して承認された維持療法はないため、がんの再発を遅らせる効果的な維持療法が切実に必要とされており、それは二次治療の開始を遅らせることにもなる。
第3相SIENDO試験のサブグループ解析では、TP53野生型の進行または再発子宮体がん患者113人を、過去の全身療法が奏効した後の維持療法としてセリネクソール(77人)またはプラセボ(36人)を投与する群にランダムに割り付けた。追跡期間中央値25.3カ月の時点で、事前に規定したTP53野生型の進行/再発子宮体がん患者の探索的サブグループの無増悪生存期間中央値は、セリネクソール群で27.4カ月、プラセボ群で5.2カ月であった。また、このデータはTP53野生型がセリネクソールの有効性を示す強力な予後バイオマーカーであることの予備的な証拠を示していると著者らは述べている。
患者がSセリネクソールの服用を中止する原因となった主な有害事象は、悪心、疲労、無力症(心身の活力低下)および嘔吐などであった。有害事象の大部分は重症度が低く、適切な支持療法により回復可能であった。
「この結果は、今後さらに研究が進められる可能性のある治療法として、大変期待の持てる前進です」と、フロリダ州マイアミビーチにあるマウントサイナイメディカルセンターの婦人腫瘍科長であり、本試験の筆頭著者であるBrian M. Slomovitz医師は述べた。「セリネクソールを週1回経口投与することで、現在の標準治療よりもはるかに長い期間無増悪状態を維持し、二次治療の開始を大幅に遅らせる可能性があります」
抄録と発表は、2023年7月25日午後3時(米国東部時間)より、こちらから閲覧可能。非公開抄録の全文は以下に記載している。
*訳注:TP53変異型より悪性度は低い
ASCO専門家Moore医師の開示情報:https://coi.asco.org/share/C7V-DL7S/Moore%2c%20Kathleen
著者の開示情報: https://coi.asco.org/Report/ViewAbstractCOI?id=427956
あらゆる報道・取材において、ASCOプレナリーシリーズへの帰属を明示のこと。
非公開抄録
野生型TP53の進行または再発子宮体がん患者を対象としたセリネクソール維持療法の長期追跡調査: 第3相ENGOT-EN5/GOG-3055/SIENDO試験の事前に規定したサブグループ解析
著者:Brian M. Slomovitz他(省略)
背景: 子宮体がん患者の治療方針を決定するためには、分子学的特徴を明らかにすることが重要である。野生型TP53(TP53wt)は、新たに診断された子宮体がんの約75%および進行/再発がんの50%に認められるが、野生型TP53の子宮体がん患者が利用できる特定の標的療法はない。セリネクソールは治験中の経口XPO1阻害薬であり、p53などの野生型腫瘍抑制タンパクの核内保持と機能活性化を促進する。
方法: SIENDO試験(NCT03555422)は、全身療法が奏効した進行/再発子宮体がん患者を対象に、維持療法としてセリネクソールとプラセボを比較評価する第3相二重盲検試験であった。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、2022年3月のESMOプレナリーで発表済みである。事前に規定した野生型TP53の子宮体がん患者の探索的サブグループの予備的解析では、主要PFS解析の時点で、維持療法としてセリネクソールを投与した群のPFS中央値は13.7カ月であるのに対し、プラセボを投与した群では3.7カ月であり、増悪または死亡のリスクが低下することが示された。今回、維持療法としてのセリネクソールの安全性と有効性を、事前に規定した野生型TP53の子宮体がん患者のサブグループを対象として長期追跡調査によりさらに評価した。
結果: 野生型TP53の子宮体がん患者113人を、維持療法としてセリネクソールを投与する群とプラセボを投与する群にランダムに割り付けた(セリネクソール:77人、プラセボ:36人)。2022年11月30日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は20.3カ月であり、セリネクソール群の26.3%およびプラセボ群の22.9%が投与を継続していた。野生型TP53サブグループのPFS中央値は、セリネクソール群20.8カ月、プラセボ群5.2カ月であった[ハザード比(化学療法への反応が完全奏効か部分奏効かで層別)0.46、95%信頼区間(0.27, 0.79)、名目上の片側p=0.002]。有効性はマイクロサテライト安定性(MSS)/マイクロサテライト不安定性(MSI)の状態に関わらず認められた。グレードを問わない主な有害事象(セリネクソール群/プラセボ群)は、悪心(90%/34%)、嘔吐(61%/11%)および下痢(38%/34%)であり、グレード3以上の主な有害事象は、好中球減少症(18%/0%)、悪心(12%/0%)および血小板減少症(9%/0%)であった。投与中止に至った治験薬投与後に発現した有害事象は、それぞれ15%/0%の患者で報告された。
結論: 長期追跡調査の事前に規定したサブグループ解析により、野生型TP53の子宮体がんにおいてセリネクソール維持療法によるPFSに対する持続的な有益性が示され、全身療法後の奏効を持続させる可能性がある。これらのデータは、TP53の状態が子宮体がんの強固な予後バイオマーカーであり、セリネクソールが野生型TP53の腫瘍を有する患者に意味のある利益をもたらす可能性を示唆している。進行または再発の野生型TP53の子宮体がん患者を対象に、維持療法としてのセリネクソールの安全性と有効性をさらに検討する第3相試験が進行中である(NCT05611931)。最新のPFSおよび野生型TP53サブグループの追加の分子サブタイプ(MSS/MSI)における結果は、発表時に含める予定である。
研究資金提供元: Karyopharm社
- 監訳 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター 乳腺腫瘍内科)
- 翻訳担当者 坂下美保子
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- 原文掲載日 2023/07/24
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