子宮頸部前がん病変をAIの活用で正確に検出―日本の研究発表

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解

子宮頸がん検診においてコルポスコピー((腟拡大鏡診)は重要な役割を果たしています。本研究は、がん検診に人工知能の力を活用することで、子宮頸がん治療において、より効果的な診断能の向上が期待できることを示しました」。
ーRoselle B. De Guzman医師(ASCO)

日本の研究者らが今回開発した人工知能(AI)ベースのコルポスコピー検査用診断ツールは、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN:子宮頸部表面で発見される異常細胞で、がんになれば近くの正常組織に浸潤する可能性がある)を正確に識別し、適切な生検部位を提案できる。本研究は、8月3日から5日まで横浜で開催される2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)ブレークスルー会議で発表された。

研究について

「現在、日本ではコルポスコピーを実施するための認定制度がなく、コルポスコピー検査の質や解釈にばらつきがあります。本研究の目的は、専門医のコルポスコピー検査技術を再現する人工知能(AI)ベースのツールを開発し、CIN病変の正確な同定と組織採取位置への誘導をする診断補助として使用できるようにすることでした」と、京都大学産婦人科の植田彰彦医師は述べた。

この技術の精度を検証するため、研究者らは2013年から2019年の間に、子宮頸部細胞診異常の二次スクリーニングまたはCINの経過観察のためにコルポスコピー検査を受けた患者8,341人を対象に後ろ向き解析を行った。対象患者の年齢中央値は41歳で、7人が早期子宮頸がん、203人がCIN3、276人がCIN2、456人がCIN1と診断された。

主な知見

研究者らは、生検で診断が確定した子宮頸がんおよびCIN3症例において、酢酸処理後のコルポスコピー異常所見に注釈を付けることによって、病変を検出するAIベースのツールを構築した。得られた検出モデルをCIN1およびCIN2症例に適用し、これらの病変の診断精度を感度、特異度、曲線下面積(AUC:0から1の間の値をとる評価指標で、0に近いほど精度が低く、1に近いほど精度が高い)、および同定された病変数で評価した。

・モデルによるCIN3症例における高度な病変の同定は、感度85%、特異度73%、病変部位のAUC 0.89、同定された病変数の精度95%であった。

・モデルによるCIN1症例におけるコルポスコピー異常所見の予測は、感度87%、特異度70%、病変部位のAUC 0.81、同定された病変数の精度97%であった。

・モデルによるCIN2症例におけるコルポスコピー異常所見の予測は、感度86%、特異度67%、病変部位のAUC 0.81、同定された病変数の精度93%であった。

次のステップ

研究著者らによれば、このアプリケーションが病理組織学的診断を正確に予測する能力には改善の余地があり、コルポスコピー異常所見と病理組織学的診断との時系列的変化の関係性を調査する必要がある。

本研究はいかなる資金提供も受けていない。

アブストラクト(要旨)全文はこちら

  • 監訳 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2023/07/31

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