2007/03/06号◆特集記事「アメリカ人女性のHPV総有病率を調査で推定」
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2007年03月06日号(Volume 4 / Number 10)
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◇◆◇特集記事 ◇◆◇
アメリカ人女性のHPV総有病率を調査で推定
National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES:国民健康栄養調査)のデータがJournal of the American Medical Association (JAMA)誌の2月28日号に公表され、14~59歳のアメリカ人女性について、全米初のヒトパピローマウイルス(HPV)感染症推定有病率が示された。研究者らによって、検査を受けた女性全体のうち計26.8%が1種類以上のHPVに対して陽性であることが発見された。
総有病率にはHPVの低リスク型も高リスク型も算入された。HPVの低リスク型では性器いぼをはじめとする非悪性の病態をきたす。高リスク型のHPVでは子宮頸癌に至るおそれがあり、世界的に子宮頸癌の70%までが、わずか2種類の高リスク型HPV16型および18型によるものである。
試験の筆頭著者であるCenters for Disease Control and Prevention(疾病管理予防センター)のEileen Dunne医師は、「いかに(HPVが)ありふれたものであるかを女性に知ってもらうことが重要だと思います」と語る。
アメリカ人母集団を代表する標本集団から健康と栄養に関する測定値を収集するようデザインされた、2003~2004年のNHANESに参加することを選択した14~59歳の女性全員が、HPV調査の参加適格者であった。適格女性のほぼ全員に、自己採取した子宮頸膣部擦過物の検体を提出してもらい、そのうち1,921検体をDNA抽出およびHPVの検出、タイピングに使用することができた。
全体では、被験者女性の26.8%が1種類以上のHPVに対して陽性であった。HPV有病率は20~24歳の女性が最も高かった。参加女性全員では、高リスク型のHPV有病率は15.2%であった。HPV6型、11型、16型および18型-HPVワクチンのガルダシル[Gardasil]が標的とするウイルス型-の有病率は全体で3.4%であり、被験者の年齢層では推定310万人の女性がHPVに曝露していることになる。
NCIのDivision of Cancer Epidemiology and Genetics(癌疫学遺伝学部門)の研究者、Philip Castle医師は、今回の調査には重大な制約があったと説明する。「この有病率調査は、国内のHPV事情を概観しただけのものであり、HPVへの総生涯曝露量や前癌リスクおよび癌リスクについては何もわかっていません。リスクというのは1時点の検査で陽性の結果が出ることではありません-発癌性HPV型が持続して感染していることなのです」。
HPV感染の持続―ウイルスが女性の体内でどのくらいの期間にわたって活性を保ち続けるか―というのは、高リスク型HPVが子宮頸癌を引き起こすかどうかを決める鍵となる。Dunne医師は、「ある期間(約6ヵ月以内)のうちに、特定の発癌性HPV型による感染が消失しなければ、感染女性が子宮頸部に前癌病変を来たすリスクが高くなります」と説明する。
さらにDunne医師は、「HPVの複雑な自然史については多くの誤解があります」と続ける。「感染したからといって必ずしも発症するわけではありません。これはありふれた感染症で、多くは(自然に)消失します。重要なことは、女性に定期的に細胞診による子宮頸癌スクリーニングを受けてもらい、しかるべき集団には、現在使えるようになっている予防ワクチンの接種を受けてもらうことです」。
今回の調査によってもたらされたベースラインデータは、HPVワクチン接種が公衆衛生に及ぼす影響を研究者らが明らかにするうえで役立つものと考えられる、と著者らは説明する。ただ、Dunne医師は、「これは大きなパズルの1ピースです」と言う。「ワクチンの影響を見守るには、性器いぼ、子宮頸癌の前癌病変、子宮頸癌などの疾患に注意を向けることも必要です。」
Castle医師は、「われわれに必要なことは・・・HPVワクチン接種と連携した監視プログラムを長期間にわたって実施することであり、その結果HPVワクチンについて、その影響や副作用の有無を見ることができます」と同意する。「HPVワクチン接種の利益とリスクとを監視することによって、女性が最大の恩恵を受けることができるようHPVワクチンの用い方を最適化することができます。」
— Sharon Reynolds
『Headline Readers Beware』省略:原文参照のこと
翻訳担当者 Nobara、、
監修 榎本 裕 (泌尿器科)
原文掲載日
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